ReoNaと神崎エルザの蜜月な関係、そして10代を振り返っての備忘録 SPICE独占インタビュー
絶望系アニソンシンガーReoNaが主題歌を担当するアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン(以下GGO)』の二期が2024年10月より放送開始される。それに合わせるようにReoNaが歌唱を担当する劇中キャラクター神崎エルザとのツーマンライブ『神崎エルザ starring ReoNa × #ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』が10月19日(土)に東京ガーデンシアターで開催される。翌10月20日(日)には自身のワンマンライブ『ReoNa ONE-MAN Concert "Birth 2024"』も控える中、ReoNaはどうこのライブに挑むのだろうか? 独占で話を聞いた。
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――今日は10月19日に控えた『神崎エルザ starring ReoNa × #ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』のお話をお聞きしたいのですが、このインタビュー前に2018年に実施された『神崎エルザ starring ReoNa × ReoNa Special Live "AVATAR"』の最初に流れた「こえにっき」Special MovieをReoNaさんと一緒に聞いてみました。
はい、ちょっと懐かしかったですね。
――凄く印象的なフレーズがあって、「真面目な話をするときっとくたびれてしまうから、少し楽しくお話をしよう、辛く悲しいことでも笑い話のように話そう、そうやって頑張ってるやさしい誰かの我慢を、私が全て引き取ってあげたい」というのがありました。あの時、会場で聞いていて、この言葉に衝撃を受けたんです。今回、“AVATAR 2024”がどういうライブになるのかをメインに聞くんですけど、改めて当時を振り返ることもしてみたいと思っています。
はい、よろしくお願いします。
――今振り返ると、2018年のあの時ってReoNaさんはどういう状況だったんでしょう?
当時は19歳で、今振り返ると精一杯に強がってたなって思います。自分の中に弱い部分がいっぱいあるからこそ、どう強く見せようか考えていたし、きっと凄い背伸びしてる部分もあったと思います。あと根本的な考え方として、「自分が誰かにそうしてほしいから、誰かに自分もそうしてあげたい」っていう根っこの部分はずっと変わっていないです。
――もう一つ印象的だったのが、「当たり前になりたいの」という言葉でした。今、ファンにとってReoNaは「当たり前になれた」って感覚ってあるんでしょうか。
どうなんでしょう……まだそこは至ってないかもしれない、そう思ってくれてたらいいなって思いますけど。この6年間走り続けてきて、デビュー当初に出会ってからずっと一緒に歩んできてくれてる人もいるだろうし、そういう意味では誰かの日常の一部にもなってる部分もあるのかもしれないけど、でも当時思い描いてた“当たり前”っていう存在に今なってるかっていったら、まだな気がします。
――でも、成長と激動の6年間だったですよね。今、2018年の"AVATAR"、2019年の"Re:AVATAR"を振り返ると、思ったより曲数も少ない。"AVATAR"が10曲、"Re:AVATAR"が11曲。思えば凄く曲も増えましたね。
そうですね。前までは自分の楽曲を全部歌ってもそれぐらいの曲数だったのが、今はチームReoNaで厳選してセットリストを組まないとならないし、いろんな歌を紡いできたなっていうのは、ライブの度に感じます。
――今回三度目の"AVATAR"はどういう感じになるかすごい楽しみです。今回"AVATAR"を開催する話になったのは、やはり10月に『GGO』2期が放送されるのは大きい要因なんでしょうか。
はい、私の中でも『GGO』2期のお話って、「本当にできるんだ」って思ったのが正直な感想なんです。前触れも全然なかったですし、もう一度神崎エルザに会えるのかもしれないって思ったし。もともと『GGO』が好きな人もきっと同じ気持ちだったんじゃないかな。私もその一人ですし。その「神崎エルザにまた会える」というのが今回の"AVATAR"に対する最初の思いです。
――神崎エルザって『GGO』の登場人物ですが、ただのキャラクターとは違うと思うんです。ReoNaさんが歌を、日笠陽子さんが声を担当していますが、それだけじゃなく、存在を感じるというか。
そういう部分はありますね。
――なのでちょっとメタ的(俯瞰的)なお話でもあるんですが、ReoNaさんの中で神崎エルザとの付き合い方って変わってきたのでしょうか? ご自身のライブでもエルザの楽曲を歌うことはありますが、感覚的にはカバーしているのか、それとも一緒に歌っているみたいな感じなのか? とか。
カバーしている感覚は全くないですね。神崎エルザっていう人格というか、存在はもちろん私とは全く違うものですけど、エルザっていう存在が私の体と喉と声を使って歌っているみたいな感じというか。
――なるほど。
2018年の時はそれすら考える余裕がなくて、まず目の前にあるこの楽曲を、ひとりでも多くの人に届くように歌わなきゃいけないというので精一杯で。そこからReoNaとしてのお歌もスタートして、並行してエルザの楽曲もあって……そうですね、今は一緒に歌ってるというか、神崎エルザをどう解釈して、どう私に宿そう、みたいな感覚です。
■今回の対バン、主宰は「神崎エルザ」
――今回のこの“AVATAR 2024”は、神崎エルザとの対バンってことでよろしいのでしょうか?
はい、対バンです。
――実は今回、神崎エルザさんにインタビューの依頼をさせていただいたんですが、どうしてもスケジュールの都合で無理だと言うことで。エルザさんはご自身が社長もやられてるので仕方ないんですが。
そうですよね。毎日社長をやりながら、ゲームやりながら、お歌も歌ってらっしゃるし。
――御本人からは「全部ReoNaちゃんに任すから」ということです。ということで、どんな対バンになりそうですか? 翌日にはご自分のワンマンライブも控えられてますが。
神崎エルザ
2019年以来の“AVATAR”で、今までも全力を尽くして作ってきましたが、なんか本当にやりたい形に近いものが今回できるんじゃないかなっていう予感がしています。“AVATAR”っていう言葉の通り、神崎エルザっていう存在をいろんな人の力を借りてこの世に顕現させるライブになると思っています。
――顕現、ですか。
もちろん私の声で神崎エルザの楽曲をみんなに届けるのに加えて、いろんな人の力を借りて神崎エルザの“AVATAR”を作り上げて、それに生身のReoNaが対抗していくっていうものになりそうです。最初の“AVATAR”に来てくれた人たちはもちろん、今回初めての人も、楽しんでもらえるものになる予感がすでにしています。
――対バンということなんですが、普通対バンやフェスって、主催がいるじゃないですか。
はい。
――今回は神崎エルザ、ReoNa、どっちが主催側なんでしょう?
今回はエルザがホストだと思っています。
――なるほど、だからエルザさん忙しいんですかね……(笑)。
そうかもしれないですね(笑)。
――じゃあ、ReoNaさんはゲストなんですね。
今まではReoNaが神崎エルザをお招きしてましたが、今回は初めてエルザにお呼びいただきました。
――呼ばれる身としては、緊張はされてますか?
緊張というか心構えの種類というか、思い描くものの種類がちょっと普段と違うとは思います。
――今までも様々なイベントに出られてると思うんですが、そういう時は、ワンマンとは感覚が違う?
全然違います。そもそも私の存在すら知らない人がいる場所だと思うんですけど、そういう所でこそReoNaを知ってもらわないと何も始まらないんです。
――そうですね、新しい音楽との出会いの場所だと思います。
なんか私達は、知らないものまみれの世界に生きてると思うんです。
――知らないものまみれの世界ですか?
CMも街中で流れてる広告も、いろんなところに情報って落ちてて。でもそれを拾うか拾わないかって、それを知っているかだと思うんです。私、小さい頃に初めて知った言葉があると、そこからしばらくやたらとその言葉が日常に出てくることがあって。
――例えば「ヒューマン」って言葉を知ると、街中や生活にある「ヒューマン」って言葉を意識するようになるから目につくようになる、みたいな感じですかね。
そうです。今までは通り過ぎてたものが、その言葉や存在を知ることによって初めて目に留まるようになる。
――理解しました。それは確かにありますね。
その感覚が私の中にあるから、知ってもらわないと目に留めてもらえないと思うんです。例えばフェスで初めてReoNaを見た人がいるとして、その時は心に引っかかるものはなくても、そこでReoNaという存在を覚えてくれたら、どこかでまた出会った時に引っかかるポイントが出来るんじゃないかって思うんです。私は誰かの人生の登場人物になりたいんです。だからその布石をどれだけ打てるかなっていう思いは、イベントに出る時、頭の中にずっとあります。
――確かに自分のワンマンより広がりっていう意味では緊張はあるかもしれませんね。
そうですね。でもワンマンライブの方が重圧みたいなのもは大きいかもしれない。
■"Birth"と"AVATAR"は全然別の2日間になる
――神崎エルザって、『GGO』の世界ではトップアーティストなわけです。2018年のReoNaさんは新人シンガーでしたが、今は武道館ワンマンを経験したアーティストになりました。ReoNaさん自身が大きくなってきてる今、神崎エルザと勝負できそうな感じはしていますか?
それで言ったら、対抗してやろう、みたいな気持ちは過去一番あると思います。
――それは面白いですね。
セットリストを考えるときに結構いろんなパターンを考えるんですが、今回はもうこれしかないんじゃないっていうセットリストを組めていると思ってます。対神崎エルザで行くにはこれだ! という感じですね。これだったらこの日来てくれた人も楽しんでくれるんじゃないか。今日こんな凄いことがあったんだぜ! って周りに言いたくなるものにしたいですね、特別な想いで帰ってくれたら嬉しいです。
――翌日のワンマンライブ"Birth 2024"との差をつけるのも大変だと思うんです。
私の中の意識では全く違うものですね。同じ会場なので2DAYSっていう見え方もするでしょうけど、やる側としてはそういう認識は全くなくて、もともと5年ぶりに"Birth"っていうライブを開催する所に、ひねくれ者のエルザが前日に対バンやろうよ、ってお誘いをくれたみたいな感覚です。
――「ReoNa(10月)20日決まってんでしょ? 私、(10月)19日も取ったからそこ出てよ!」みたいな(笑)。
「ちょっとやろうよ」みたいな。
――神崎エルザならやりかねないと言うか(笑)。今回"Birth"はどういうコンセプトなんでしょうか?
先日まで『ReoNa 5th Anniversary Concert Tour “ハロー、アンハッピー”』で5周年を締めくくるツアーを全国、アジアと回らせてもらって、もう6年目が始まっているんです。"Birth"という言葉通り、これからまた生まれていくっていう日にできたらいいと思います。
――非常にカロリーの高い2日間になりそうそうですね。2022年には『ReoNa ONE-MAN Live Tour 2022“De:TOUR”-歪-/-響-』という違うコンセプトのツアーを回っていましたが、あれともまた違う感じですか?
違いますね。『De:TOUR』は座って聴いてほしいお歌たち、スタンディングで楽しめるお歌たちっていう2つのコンセプトが明確にありましたけど、今回は全然違う2日間になります。
――確かにサイズ感も違いますしね。
でも『De:TOUR』ぐらいから、ReoNaのライブはカロリー度外視に拍車がかかってる感じがあって。それくらいその日のベストって、一体何なんだろう? っていうのを模索できるようになったのは、私自身の成長なんだろうなって思います。
――いつも大変なスケジュールでライブをしているとは思っていますが、それも成長なんでしょうね。やりこなせる体力というか、気合というか。
ReoNaに対する信頼や安心みたいなのものは感じてもらえるようになったのかもしれません。とにかく今回の“AVATAR 2024”と"Birth 2024"は全く別物なんだよっていうのは、力強くお伝えしたいです。
――『GGO』が好きで、主題歌だとか挿入歌だっていうぐらいしかReoNaを知らない人でも楽しめそうですね。
そうですね。きっと楽しいと思います。
■デビュー時に自分に起きた「革命」
――ちょっとここからReoNaさんのお話もできればと思います。最初に僕がインタビューさせてもらった時に印象的な言葉があって、「10代は散々な時代だったんです」って言ってたんです。それが今も耳に残っていて。それで今、20代も半分過ぎたじゃないですか。
過ぎましたね。
――10代は散々だったって形容してて、半分過ぎた20代は、今どうですか? というのを聞いてみたくて。
そうですね、トランプの大富豪に革命ってあるじゃないですか。
――はい、同じ数字を4枚出すとカードの強さがひっくり返るやつ。
そうです。私デビューした時にその感覚があったんです。
――ほう……?
それまでの忘れ去りたいぐらい嫌なことだったり、苦しくて辛かった時期とか、そういうものたちって避けれなかったので。もちろん今生きてる20代の中にだって、辛いこと、苦しいことあったけど、その経験が音楽になることで、私の中には革命が起きたというか、ひっくり返って大事な物になったと思っていて。それを噛み締めながら歩いてきた感覚です。
――なるほど
環境が色々と変わってきて、色んな時間を過ごしてきて。“ここ変わらないな”“ここは変わったな”とか、そんな繰り返しの日々なんだなって「こえにっき」の動画を見て、改めて思います。
――どの辺が変わらない部分なんでしょうか。
表現の仕方が変わったりとか、思ってる言葉が増えたりとかということはありますが、結局、私は誰かにすごく知ってほしいし、誰かの人生に食い込んでいたい。そういう最初の思いは変わらないと思います。
――フォロワーは当時より増えてると思います。お歌が好き、ReoNaという存在が好き。例えば、ファッションとかメイクとかも含めて、好きって部分もあると思うんですけど、自分の中ではどこがファンに引っかかってるんだろうって思われます?
自分自身が欲しいものって、きっと誰かも欲しいものだと思っていて。それは言葉しかり、プレゼントとかもそうですけど、自分が必要としてるものをきっと他にも必要としてる人がいるはず、そこの答え合わせをしているなって思います。
――自分の欲しいものは、きっと人が欲しいもの。
ずっと一緒に歩んできてるクリエイターさん、毛蟹(LIVE LAB.)さんとかハヤシケイ(LIVE LAB.)さんとか傘村トータ(LIVE LAB.)さんとかと作り上げてきた楽曲を聴いた時に、なんで私、この曲に10代の時、出会えなかったんだろうって、心の底から思う瞬間がいっぱいあって。あの時の私ってこういう言葉が欲しかったんだな、あの時の私の気持ちって、言語化したらこれなんだなって思えるからこそ、今そういう10代の時の私と近い境遇の人たちが共感してくれるのかもしれないです。同じようなモヤモヤを抱えてるのかもしれない人に届いてほしいな。刺さってほしいな。必要としてくれてたらいいなっていう思いです。
――変な話ですが、思春期の頃のReoNaさんに、今のReoNaの楽曲だったらどれが刺さってますかね?
少なからず「絶望年表」を聴いたら顎外れちゃうかもしれません。これは私じゃん……って。
――あれはご自身の年表ですしね。
「Someday」とかも私が14歳の時の経験だったりを母や弟と話してそこから生まれてきた音だし、これはなかなか選べないですね……でも思春期って縛るなら、「Someday」かなぁ……。
■世界で唯一の絶望じゃないから、エルザと通じあえる
――少女、ReoNaが抱えてきた絶望とか不安とか、ネガティブなものってスペシャルなものではなくて、みんなが抱えているものっていうことなんでしょうね、だから共感がある。
私は確かにちょっと辛いことを経験する確率が、もしかしたら他の人より高かったのかもしれないとか、なんかちょっと運がなかったなっていう思いはあるんです。でも人生で一度も「私が世界で一番不幸だ」って思ったことはなくて、逆にそれが苦しかったこともあって。ともすれば私のことを見て幸せだっていう人も、きっといるだろうなっていうのもありましたし。
――尺度は人それぞれですからね。
私の物差しの中では、凄く辛い思いをしているけど、周りを見渡したらもっと苦しい人も、もっと救いが必要な人も当たり前のように沢山いるわけで、そこを比べる必要はなかったんだろうけど、私はそういう人達と比べてしまっていて、中途半端な自分もすごく嫌だったなって思います。
――当たり前の絶望少女だったからこその、今のReoNaさんが掲げる「一対一」なのかなと勝手に思っています。みんな生きるのって少しずつ辛いですよね。
そうだと思います。
――それを踏まえて“AVATAR 2024”に目線を戻すと、神崎エルザもちょっと特殊な人ですからね。あの人の感覚というか、考え方というか。彼女の持っている絶望って、決して世界に一つしかない不幸とか絶望ではなくて、その捉え方と表現の発露がちょっと変わっているだけでっていうのは、改めてReoNaという存在との告示点というか、繋がっている部分を感じたんです。
私は『GGO』原作を読んで、エルザと私は似ているなとか、彼女の持っている思いとか苦しさってなんか知っている感じがしたんです。世界で唯一の絶望じゃないからこそ、エルザの発する言葉や、ひねくれた立ち振る舞いが好きだなって思えるんです。
――余計対バンが楽しみですね、これ。
楽しみですね。翌日の自分のライブにも絶対影響あると思いますし。まず“AVATAR”っていう形で神崎エルザを楽しみにしてくれている人たちに会うのも5年ぶりなので、その日にしかないもの、リハーサルじゃ得られない本番の熱みたいなものが楽しみです。
――では最後に、今日こちらに来れなかった神崎エルザさんに対バン前に、メッセージがあれば!
そうですね……『神崎エルザ starring ReoNa × #ReoNa Special Live “AVATAR 2024”』。セットリストも含めて、ガチでエルザと戦うつもりで準備しているので、5年ぶりのエルザを楽しませてね、とお伝え下さい。
――では、今度はファンの皆さんに向けて是非コメントをいただければ。
今回、実に5年ぶりに神崎エルザからお招きいただく形で、“AVATAR 2024”が実現できることになりました。つい最近、『GGO』一期の再放送を見ていたんですが、ファンレターの回で(小比類巻)香蓮がエルザに手紙を書いたじゃないですか。「もっと大きい箱でやってほしいです」っていう。
――『GGO』一期の第3話ですかね。
くしくも今回、東京ガーデンシアターでやるこの“AVATAR”が過去最大規模になるし、日本屈指の大きいライブハウスで実現する対バン。ぜひアニメ『GGO』2期を見て、神崎エルザに出会って、そして“AVATAR”を楽しんでいただけたら嬉しいです。
――客席に香蓮も(篠原)美優も来ているかもしれませんからね。
私、いつも香蓮が会場にいるつもりで、エルザの曲を歌ってます。今回もきっとそうだと思います、だからこその“AVATAR”なので。
取材・文:加東岳史