岸田文雄首相とドナルド・トランプ前大統領(写真・AP/アフロ)

「わかりやすい最初の一歩は、私が身を引くこと」

 記者会見でこう述べ、自民党の“改革”のために総裁選に出馬しない方針を表明した岸田文雄首相。

 8月14日に開かれた会見の前夜、現地時間の8月12日に、米国では日本にとって“屈辱的な発言”が飛び出ていた。

「2024年11月におこなわれる米大統領選挙の最有力候補とみられている、ドナルド・トランプ前大統領と実業家のイーロン・マスク氏の対談が、マスク氏が買収したSNS『X』でおこなわれました。

 そのなかでエネルギー政策の話題となり、トランプ前大統領が、東日本大震災での東京電力福島第1原発の事故があった福島県を念頭に置いて『3000年は土地に戻れない』と軽口をたたいたことが伝えられたんです」(政治担当記者)

 マスク氏は、震災直後に福島県相馬市を訪れていたことから、トランプ前大統領の発言を否定。すると、トランプ前大統領はマスク氏が体調不良に見えると言い、最後に「冗談だよ」と言い放ったという。

「しかし、その発言の後、つまり日本時間の翌朝、岸田首相が9月での退陣方針を示したために、トランプ前大統領の“トンデモ発言”は、自民党総裁選ムード一色のなかでかき消されてしまったのです」(同前)

 岸田首相の不出馬が大きな話題になっていた8月14日、Xでは、このトランプ前大統領の発言に対して、日本政府に毅然とした態度を求める声があがっていた。

《日本政府はトランプに抗議声明を出すべきではないのか?》

《いやいや国がちゃんと抗議しろよ 3000年の根拠は?》

《トランプ氏の原発3000年発言に日本政府はなんのリアクションも無しですか》

 同日中に、日本政府からトランプ前大統領に対するアクションは、とくに見られていない。

 思えば就任当初、メモを片手に「人の話を聞く力がある」と強調していた岸田首相だが、この件は人から聞かずとも行動してほしいもの。

 それとも、自らが引き起こした永田町の“お祭り騒ぎ”で、発言を聞くどころではなかったのか。