日本の失明原因の1位である「緑内障」。緑内障専門医である真鍋眼科・真鍋婦人科院長の真鍋佑介先生に、緑内障が悪化する原因を聞きました。じつは目と関係の深い「腸」を整えるといいそう。その理由を紹介します。

緑内障は自律神経や血流で悪化する

視神経周囲の血液循環が悪くなることで緑内障が悪化する例があります。血液循環は自律神経によって支配されているからです。

【画像】目も脳の一部!

日々、強いストレスがかかって自律神経系のバランスが崩れると、視神経や網膜に血液を送る血管が異常に細くなり、血流量が減少した状態が続いて、視神経に影響すると考えられています。

また、痩せ型で低血圧、頭痛持ちで冷え性の「フラマー体質」と呼ばれる人も要注意です。自律神経の働きが不十分で血の巡りが悪くなりやすいです。眼圧が低いのに乳頭出血を起こし、緑内障が進行することもあります。

「健康」でいることが緑内障のリスクを軽減

睡眠時に数秒間呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群は緑内障を進行させるリスクが10倍になるとされています。夜間に血液中の酸素濃度が低下し、酸化ストレスによって網膜の視神経に障害が起きると考えられています。

血管への影響でいえば、糖尿病も危険です。「糖尿病網膜症」といって、網膜への血液の流れが悪くなって障害が起きてしまう症状があります。糖尿病網膜症が進行すると、網膜の中でも最も大事な黄斑に水ぶくれができてしまったり、網膜出血や網膜剥離を起こします。これも失明に至る病気です。糖尿病による眼圧の上昇、血液循環の悪化が緑内障も併発させる恐れがあります。

緑内障のリスクを軽減させるためには、眼科での検査のほかに、日々の健康な体づくりが寛容。注目したいのは「腸」です。じつは腸内環境を整えることが目の健康にも繋がります。

目は脳の一部。「脳腸相関」のために、腸を健康にしよう

目と腸は別々の臓器ですが、腸内環境が人体のいろいろな臓器に影響を及ぼすことがわかってきています。「脳腸相関」と言い、脳の状態が腸に影響を与えたり、逆に腸の状態が脳に影響を与えたりするというものです。さまざまな原因で腸の状態が悪いと神経や血液を介して脳に有害な影響を及ぼします。

脳と目の網膜の部分は発生学的に同一組織からできています。すなわち目は脳の一部なのです。

最近、腸内環境と脳との関連が話題になっています。脳に影響があるということは当然目にも影響があるのではないかと考えられ、さまざまな研究がなされています。腸は胃で消化された食べ物を分解、吸収する臓器だと思っている人が多いと思いますが、じつは腸内にいる約100兆個の細菌が免疫機能のバランスを取っているのです。

ところが食生活の乱れやストレスによって腸内環境が悪くなると、腸の粘膜がダメージを受けて、小さな穴が開く「リーキーガット」が起こってしまいます。腸の中で分解するはずの有害物質がその穴を通じて血管内に入ってしまい、血管を通じて体内で炎症を起こしまうのです。有害物質が広がって全身に回ると目にも影響があります。ぶどう膜炎やドライアイだけでなく、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性症、緑内障にも関係があるという報告もされています。

毎日の食事に食物繊維をプラスしよう

腸内環境を整えるためには、よい働きをする善玉菌を増やす必要があります。乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などがありますが、なかでも酪酸菌は腸内の主要なエネルギー源である酪酸を生成します。これが免疫系にも作用して制御性T細胞という免疫を調節する細胞を増やして、免疫の過剰反応、すなわちアレルギー反応が起こらないようにする働きがあります。

酪酸菌のような善玉菌は、食物繊維の多い食事をとったり、運動することによって体内で増えていきます。逆に高脂肪食や飲酒、ストレスで減ってしまうとされます。

毎日の食事に食物繊維をプラスするだけでも、腸内環境によい影響があります。食物繊維は人の消化酵素で分解されないのですが、腸内細菌の栄養となります。発酵分解されることで乳酸、酢酸、酪酸が生成され、腸内環境が良好に保たれるのです。

すると「リーキーガット」のような炎症を起こす状態も改善され、脳や目にも良い体内環境が保たれるのです。