人生100年時代、第二の人生をガラリと変える人もいます。結婚、子育て、離婚、病気を経て、昨年からスペインへの単身留学を送っている55歳のRitaさんは、日本とスペインの違いについて発信していることで人気です。そんななか、気になるのがスペインでの食生活。タコやオムレツが有名なスペインの食事ですが、Ritaさんのおすすめを6つ紹介してくれました。

スペインに住んで好きになった食事6選

スペインの食事は素材そのものを生かした料理が多く、オリーブオイルやニンニクが味つけの基本となります。パエリアやアヒージョなど聞き慣れた料理があるように、日本人にとっても食べやすいメニューが多いんです。

【画像】朝食でも人気のトマトパン

海に面した地域では魚介の料理、北部では煮込みの料理と地域ごとの特色もありますが、どこへ行っても必ず見かける定番料理も数多く、私自身も徐々に「これを注文すれば間違いない」というメニューが増えてきました。今回はスペインに来てから好きになった料理、悩んだらコレ! と決めているお気に入り料理をご紹介します。

パン・コン・トマテ(トマトつきパン)

スペイン人の朝食は、デニッシュ・マドレーヌ・パウンドケーキなど、甘めのものを食べる人が多いのですが、このほかにバゲットへジャムを塗ったり、生ハムをのせたり、トマトをのせるメニューもあります。

「パン・コン・トマテ」は古くからある朝食の定番で、トーストしたバゲットにすりおろしたトマトをのせ、オリーブオイルと塩を振ったもの。地中海沿いのトマトは非常に瑞々しく相性がピッタリなんです。

この夏、スペイン北部を旅しましたが、私の朝食のお決まりはパン・コン・トマテでした。カフェの席に座った瞬間、メニューも置かれずに「なにを注文する?」と聞かれる毎日。即答できる便利さもあって毎朝食べていたのですが、店舗ごとにトマトのすりかたや味つけが少しずつ変わることも楽しめました。メニューにない店舗はひとつもなく、スペイン人にとっても人気であることがうかがえます。

基本的にはコーヒーやオレンジジュースがセットで5ユーロ前後。なおモーニングと言っても、13時頃までモーニング扱いの店舗が多く、私にとってはランチとしても活用できるお気に入りメニューです。

サルディン(イワシ料理)

サルディンとはイワシのことです。こちらはイワシ丸ごとのグリルです。目の前の鉄板で煙をあげながら焼いてくれる店舗が多く、焼きたての香ばしさとサクサク感は絶品、もちろん骨まで柔らかく食べられます。

スペインは魚介類のメニューが豊富でフリッターのように揚げたものも魅力的ですが、おやつのように簡単につまんで、小腹を満たすにはグリルがぴったりです。なお、スペイン南部のマラガ地方では、イワシより少し小ぶりな魚“ボケローネ”を串差しにしたものが、どのレストランでも定番メニューでした。またイワシ類は前菜として酢漬けになったものも人気です。メニューをながめて困ったら「サルディン」を選べば、まず間違いないおいしさが味わえると思っています。

タコ料理

スペインはタコのメニューが豊富で、日本にいたときよりも頻繁に口にするようになりました。ゆでダコ、煮込みダコ、タコのガリシア風、パエリアに入っていたり、マリネやサラダでも見かけ、タコの専門店もよく見かけます。

スペインのタコはとにかく歯ごたえがフワフワ、溶けるような柔らかさが特徴です。また、タコ料理に必須なのはバゲット。オリーブオイルが使われているタコ料理が多いため、タコエキスがしみ渡ったオイルにバゲットをひたすと最高のおつまみになります。タレまで余すことなく楽しめるのもタコ料理の魅力です!

ピミエント・パドロン(ミニピーマン炒め)

姿や形はシシトウに似ていますが、辛くはなく柔らかめでピーマンの一種と言われています。これをオリーブオイルで炒めて塩を振ったものが「ピミエント・パドロン」。どのレストランでも必ず目にする定番中の定番。

お店でもメイン料理を選んだ後にまだ悩んでいると「ピミエント・パドロンはどう?」とよく聞かれます。基本的にフォークも使わず手づかみで食べるもの。ヘタの部分を持ってパクパクと食べ続けると、ひと皿あっという間です。しょっぱさと油っぽさが肉料理にも魚料理にも不思議に合う絶品です。

トルティーヤ・デ・パタタス(スペイン風オムレツ)

スペインの名物料理のひとつで、知らない人はいないほどのお決まりメニューです。ジャガイモが入った厚めのオムレツなのですが、店舗により硬めだったり柔らかめだったり特徴が異なります。そして注文時に必ず質問されるのが「タマネギ入れる? 入れない?」。スペイン人に「トルティーヤが好き!」と伝えたときも、「タマネギはあるほう? ないほう?」とよく聞かれます。

タマネギありなしの好みが同じだと仲間同士で喜び合い、違うと否定し合う…なにか不思議な派閥があるものです。私の好みはトロトロ柔らかめで、タマネギあり派。スペインには「あのお店がおいしいよ!」と言われる店舗が数多くあり、まだまだイチオシ探しを楽しめそうです。

ボカディージョ・デ・カラマレス(イカリングのサンドイッチ)

ボカディージョとはバゲット型のパンに具材を挟んだサンドイッチで、スペインの国民食とも言われています。まるで日本のおにぎりのように朝昼晩…あらゆるタイミングで食べられ、レストランやカフェ、バーのメニューでも見かけ、自家製をお弁当のように持ち歩く人もいます。

具材はいたってシンプルで、生ハム・サラミ・チョリソー・チーズなど1〜2種類をはさめば完成。地域ごとにも特色があり、首都マドリードはイカリングフライだけをはさんだダイナミックなボカディージョが有名です。揚げたてのイカはサクサクと香ばしく、味つけは塩のみ。マヨネーズもソースもバターもないのに素材のうま味だけで驚きのおいしさなんです。

スペイン料理は2010年ユネスコ無形文化遺産に地中海料理として登録されています(イタリア料理・ギリシア料理・モロッコ料理とも)。シンプルな調理法が多くどこでもつくれそうなのに、スペインで食べるとおいしさが格別なのは、新鮮な農産物に質のよいオリーブオイルが生かされているように思います。レストランで新しいメニューを試すたびに好きなものが増えてしまい、私のお気に入りリストはまだまだ増え続けるばかりです。