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優雅なボディに先進的な機能を凝縮

5代目SLの構想は、1996年に練られ始めた。目指されたのは、従来以上の軽さと速さ、実用性。当時のポルシェ911、996型より車重は約400kg重く仕上がったものの、2001年に魅力的なグランドツアラーが誕生した。

【画像】卓越の性能を堪能 メルセデス・ベンツSL(R230) 初代と最新版 同時期のSLK GTも 全112枚

スタイリングを描き出したのは、ピーター・ファイファー氏が率いたデザインチーム。4代目より曲面的になり、優雅になったフォルムは空気抵抗も小さく、Cd値は0.29に抑えられていた。


メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

メルセデス・ベンツのフラッグシップとして、ボディの内側には先進的な機能を凝縮。その筆頭といえたのが、物理的にペダルと繋がっていない、バイワイヤ方式のブレーキだろう。センソトロニック・ブレーキシステム (SBS) と名付けられていた。

電気的に制御することで、重量を軽減。サスペンションと連動させ、タイヤ毎に独立して制動力を生み出すことを可能としていた。複雑が故に、英国ではリコールの対象にもなったが。

ABCと略された、アクティブ・ボディコントロールも新技術。スプリングとタンパー、油圧サーボを組み合わせ、数ミリ秒で減衰力を変化させることで、ボディロールを相殺させた。乗り心地の硬軟も、任意に選ぶことができた。

フォールディング・ハードトップのヴァリオルーフも、5代目に登場している。11本の油圧シリンダーを駆使し、16秒という短時間で滑らかに開閉。パノラミック・ガラスルーフを組むこともできた。

V6からV12まで モンスターのブラックも

低く滑らかなボンネット内には、多様なエンジンが収まった。大排気量に対する税制が厳しい市場を想定し、当初の320に加えて、遅れながらも2007年にSL 280が登場。追ってSL 300も登場しているが、生産数は少ない。

売れ筋となったのは、SL 350と500。特に前者は、充実した装備の割に手頃な価格で、より多い支持を集めた。


メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

圧倒的なパワーを求める富裕層向けには、V型12気筒ツインターボを搭載したSL 600を用意。AMG謹製のV8エンジンやV12エンジンも選択可能で、SL 65 ブラックエディションという、専用ボディキットとホイールで武装したモンスターもあった。

コクピットは、極めて心地いい空間。トリムグレードは4種類から選べ、レザーは2種類、カラーは5色を設定。ウォルナットやアッシュベニアなど、上品なウッドパネルも好ましい。エアバッグのほか、横転時に飛び出すロールオーバー・バーも備わる。

シートはヒーターだけでなく、クーラーとマッサージ機能を内蔵。後期型には、ヘッドレストから温風の出るエアスカーフも装備する。+2のリアシートはなく、収納空間になっている。

その頃のAUTOCARでは、巧妙にギアを選ぶATと、シャープで正確なステアリングを絶賛。「高度な技術が、カーブでのボディロールを許さない」。と特徴に触れている。

最先端の技術を融合させ、スポーティなコーナリングと、高級サルーンへ匹敵する乗り心地を実現したR230型。サーキットを走ることも、大陸を横断することも得意分野といえる、卓越したメルセデス・ベンツだ。

オーナーの意見を聞いてみる

「10代の頃に乗せてもらった、SL 500が忘れられませんでした」。と購入動機を振り返るのは、今回の車両を持ち込んでいただいたジャイルズ・クレイデン氏だ。

「オーナーが高速道路を飛ばしている様子を見て、すっかり惹き込まれたんです。いつかこのクルマを手に入れようと心に決め、貯金を始めました。長く所有していれば、価値が上がるだろうとも考えました」


メルセデス・ベンツSL(R230型/2001〜2011年/英国仕様)

「調べてみると、フェイスリフト直前のモデルが最も信頼性に優れることがわかりました。フェイスブックには、不調のことばかりポストされるので、最初はちょっとがっかりしましたね。でも実際は、信頼性は高いといえます」

「SL 500を購入してから1年半が経ちますが、不具合はありません。むしろ乗らないと問題が起きがちなので、1年中使うようにしています。出かける良い口実にもなります。すべて正常です。素晴らしいドライブを楽しめますよ」

英国で掘り出し物を発見

メルセデス・ベンツ SL 55 AMG(英国仕様)

登録:2004年式 走行:13万4500km  価格:1万4995ポンド(約300万円)

新車時から2オーナーというAMGのSL。サービスブックには、正規ディーラーによる8個のメンテナンス・スタンプが押され、大量の請求書も残っている。2020年9月が直近の大きな整備で、4000ポンドが費やされたそうだ。エアコンガスも補充済み。


メルセデス・ベンツ SL 55 AMG(2004年式/英国仕様)

それ以降は、3200kmしか走っていない。売り手は、完璧な状態だと主張している。ボディカラーも魅力的といえる。

メルセデス・ベンツ SL 600(英国仕様)

登録:2005年式 走行:11万2600km  価格:2万2950ポンド(約459万円)

2012年に現オーナーが購入したという、V12ツインターボのSL。スーパーカー級の500psを繰り出し、5スポークの18インチ・アルミホイールとカーボンファイバー製リアスポイラーが勇ましい。価格に見合った内容といえる。

DVDナビにプレミアム・サウンドシステム、ウインド・ディフレクターなどを装備する。故障しがちな点火コイルは、既に交換済みだという。

この続きは、メルセデス・ベンツSL(R230) UK版中古車ガイド(2)にて。