パリでのリレーメンバー入りに意欲は示したものが…(C)共同通信社

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 敗者とは思えない、すがすがしい表情だった。

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「全力で走った。で、負けた。そんな感じです」

 元日本記録保持者の桐生祥秀(28)が30日の日本選手権男子100メートルで5位と完敗。雨中の悪コンディションだったとはいえ、タイムも10秒26と平凡で、個人種目でのパリ五輪出場は絶望的になった。にもかかわらず、時折、笑顔を見せながら淡々とレースを振り返ったのは今の自分の実力を理解しているからだ。

 右足の故障で2021年の東京五輪の個人種目から代表漏れして以降、心身の不調で苦しんだ。長いトンネルに入り込んだが、それでも陸連内には待望論があった。

「パリ五輪で2大会ぶりの表彰台を狙う400メートルリレーのメンバーが固まらないからです。特に第3走者が懸案で、コーナーワークなど経験とセンスを求められるポジションになんとか桐生が入ってくれれば……という期待があったのです。とはいえそれも、今回の日本選手権で復活を印象付けるタイムと結果を出してこそでした」(担当記者)

 日本の400メートルリレーは16年のリオ五輪で銀メダルを獲得し、17年と19年の世界選手権でも3位で表彰台に立った。だが、金メダルを誓った21年の東京五輪決勝ではバトンミスでまさかの失格。22年の世界陸上も失格、昨年の同大会は5位に終わった。

 桐生はこの日のレース後、「選ばれれば、もちろんしっかり仕事します」とパリでのリレーメンバー入りに意欲は示したものの、それも絶望的。五輪の表彰台は遠い。