山本(C)ロイター/USA TODAY Sports

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 ドジャースは日本時間17日、12年465億円で契約を結んでいる山本由伸(25)を右上腕の張りのため、15日間の負傷者リスト(IL)に入れたと発表した。 
 
 米メディアからは球団の管理体制を疑問視する声も上がっているが、ロバーツ監督は山本のコンディションを考慮して本来、14日のレンジャーズ戦だった登板予定を16日に後ろ倒し。中5日だった登板間隔を中7日に空けたうえ、「(登板は)問題ない」という本人の言質まで得ていた。(【前編】からつづく)

【前編を読む】山本由伸が負傷離脱 原因はドジャースの管理体制にあらず…登板前日に見せていた“前兆”

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 過去に海を渡った日本人投手の多くは、1年目の前半戦までに肘の靱帯を痛めている。エンゼルス時代の大谷翔平(29=ドジャース)、ヤンキース時代の田中将大(35=楽天)、オリオールズ時代の和田毅(43=ソフトバンク)もしかり。「メジャー公認球は日本のプロ野球のものと比べて大きく、表面がサラサラして滑りやすい。なのでボールが高めに抜けるようになる。ブルペンで問題なくなっても、実戦に入ると違う。低めに投げようと無意識のうちに指先に力が入り、やがて前腕の筋肉が炎症を起こし、肘を痛めた」とは日米両方のボールを扱った投手だ。

 開幕から3カ月近くが経過。メジャー公認球を扱うダメージがボディーブローのように効いてくるところにもってきて、強打のヤンキースを相手にアクセルを踏み込んだことが今回の「張り」につながったようなのだ。ア・リーグのスカウトがこう言った。

「これまでメジャーで活躍した日本人選手はみな体が大きい。野茂英雄、佐々木主浩、田中将大、ダルビッシュ有、大谷翔平がそう。車で言えばエンジンの部分、排気量がデカいのです。ボールやマウンドの差異はもちろん、過酷な日程や移動を克服するには体の強さが必要ですが、それでも田中もダルも大谷も肘の靱帯を損傷した。山本は178センチ、80キロと、野球選手としては決して恵まれた体格ではないうえ、オリックス時代には右肘や脇腹に故障歴がある。さまざまな障害を乗り越えるだけの体の強さがあるかと聞かれれば、疑問と言わざるを得ません」

 山本がドジャースと交わした12年契約(2024〜35年)には、右肘の状態によってオプトアウト(契約破棄)できるタイミングが変わる条項が含まれている。

 山本がオプトアウトできる時期は本来、29年シーズン終了時と31年シーズン終了時。だが、29年までに右肘のトミー・ジョン手術を受けた場合、もしくは134日以上連続でIL入りした場合は、31、33年シーズン終了時にずれ込む。つまり29年までにトミー・ジョン手術を受けた場合には、オプトアウトしたくてもできない時期が長くなるということ。ドジャースは入団以前から山本の右肘を危惧していたことになる。

 ダルビッシュ有(37=パドレス)はレンジャーズ時代の15年、スプリングトレーニング中の試合で今回の山本と同じ右上腕三頭筋の張りを訴えて降板。MRI検査の結果、右肘内側側副靱帯の損傷が判明し、トミー・ジョン手術を受けた。

 山本は今後、数週間ノースローで調整し、肩、肘の回復を図るとはいえ、下手をすれば最悪の事態を招きかねない。