東京都を世界でいちばん住みやすい街にできる」

 2024年7月に投開票を予定している東京都知事選。小池百合子都知事の3選が確実視され、都政関係者の間では弛緩した空気が漂っている……。

 だが、冒頭のとおり、5月16日に突如として出馬を宣言し、“台風の目” に名乗りを上げたのは、広島県安芸高田市の石丸伸二市長だ。

「石丸氏は、京都大学経済学部を卒業後、現・三菱UFJ銀行に入行。アナリストとしてニューヨークに駐在するなど、米国の各都市で勤務後、2020年7月に同行を退職。同年8月の安芸高田市長選に出馬し、初当選しました。まさに、エリート街道をひた走ってきた人物です」(政治部記者)

 これだけなら、フレッシュな地方の新顔。ひと味違うのは、ネット上で熱狂的な支持を受けていることだ。

「就任直後、石丸市長はX(旧Twitter)に市議の一人が居眠りをしていたと指摘。その後、市議会との対立はヒートアップし、『恥を知れ! 恥を!』と高齢の市議らを “説教” しました。

 こうした議会の様子や市長の会見の映像が、市の公式YouTubeチャンネルに投稿されると、またたく間に人気になりました。今回の出馬も、ひろゆき氏が応援するなど、“ネット論壇” を中心に絶大な支持を得ています」

 一方、同じく名物市長だった元明石市長の泉房穂氏はXで「1期目の途中で市長を辞めて、東京で立候補するという発想が理解できない」と批判するなど、任期途中での出馬表明に、賛否は分かれている。さらに、地元広島の県政関係者の間では “売名” 疑惑まで取り沙汰されているのだ。

「都知事選で名前を売って、来年の広島県知事選に出るつもりではないかとみられています。現職の湯崎英彦知事は、2025年11月で任期満了ですが、5期めには出馬しないという話ですからね。都知事選はさすがに厳しいでしょうし、広島県知事選なら、まだ勝ち目がありますから」(県政関係者)

 はたして真相やいかに。公務で東京を訪れていた石丸市長が、オンラインで本誌の取材に応じた。

「泉さんの批判は、『あなたの感想ですよね』で終わりじゃないですか。人それぞれ感じ方はあるでしょうが、少なくとも私は、1期4年間で小中学校の給食費の無償化をしましたけど、泉さんは3期12年かけてできなかったわけですから。もちろん、もう1期やることは考えたうえで、都知事選出馬が最良の選択だと考えたのです」(石丸氏・以下同)

 では、“売名” 疑惑はどうなのか。落選した場合の予定を尋ねると、

「負けたらどうしようという想定やイメージが全然できませんね。私にとってすごく大きな勝負なので、受け身の取り方すら想像がつかないみたいな……。(広島県知事選や国政進出は?)予定はないですよ。そのときになったら考えるのか、それもわかりません」

 と否定した。しかし、超強力な現職 “女帝” との勝負。どんな目算があるのか。

「小池都政への評価は、非常に難しいですね。これまで掲げられてきた公約のなかで、達成できたものと、進んでいないものがあります。そのなかには、そもそも課題として解決の難しいものも設定されているんです。私は、その課題の元となる原因を取り除く“原因療法” をやったほうがいいと思っているんです」

 象徴的なのは、小池都知事が掲げた「満員電車ゼロ」だ。

「東京は人口がまだ増え続けて、どんどん過密になっているのに、満員電車だけを解消するのは無理だと、小学生でもわかると思いますよ。だったら、そもそも人が集中することを抑えないといけません。

 さらに怖いのは、過度な集中の先にある “バブル崩壊” です。2040年以降は、東京都ですら人口がピークアウトしていきます。そのとき、インフラや箱物はどうするのか。やがて来る危機に東京都も備えて、地方と東京の関係をリバランスするのが大事なんです。

 さらにいえば、都内でも西のほうでは人口減少が進み、23区との差が開いています。これも調整が必要です。東京都がよりよく成長し、それに合わせて地方も成長する必要があるんです」

 現在、裸一貫の無所属での立候補を表明している石丸市長。さすがに国政政党との “密約” は結んでいないのか……。

「どこかの政党から出馬するというのはまったくないんです。純粋に私の考え方に乗れるかどうか。もしよければ共鳴してもらえればなと考えているだけです。東京都だけでなく国を巻き込んだ話なので、国政政党の方の意見も聞いてみたいですね」

 都政の “暑い夏” の中心に、この男がいるのは間違いなさそうだ。