【山村 佳子】「不幸だった妻を幸せにしたい」40歳経営者の夫の妻が「オーバードーズ」で搬送された驚愕の原因

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オーバードーズが原因で、浮気がわかることがあります。オーバードーズも浮気も、“辛い現実を忘れたい”という気持ちが背景にあることも多いです」とは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんだ。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。

市販薬を過剰に摂取する「オーバードーズ」が深刻な問題になっている。コロナ禍以降にその数が急増しているといい、2023年の1年間、厚生労働省は医薬品の販売制度に関する検討会を計11回開催している。

2024年5月25日に千葉県習志野市に住む15歳の女子高生が亡くなった事件も、死因は薬の過剰摂取(オーバードーズ)の可能性があると報じられている。

2023年12月18日に発表された、『医薬品の過剰摂取が原因と疑われる救急搬送人員の調査結果』という資料は、52本部(政令市消防本部・東京消防庁及び各都道府県の代表消防本部)のオーバードーズの事例をまとめた調査データだ。2020年搬送人数が9595人だったが、2022年には1万682人と2年間で1000人増えている。またオーバードーズは、圧倒的に女性が多い。2022年を見ると、男性2072人であるのに、女性は7982人と約4倍だ。

今回山村さんのところに相談にきたのは、40歳の会社経営者・芳樹さん。結婚20年になる妻がオーバードーズで救急車に運ばれ、「絶対浮気している」と語る。

高校生のとき一目惚れして結婚した妻が…

前編「結婚20年、40歳会社経営者の39歳美人妻が「オーバードーズで救急搬送」されるまで」では、20歳の息子、18歳の娘のいるこの家庭で妻がオーバードーズで運ばれるまでをお伝えした。

芳樹さんは、高校3年の時に妻に出会い、一目惚れ。妻は不安定な家庭で育っており、乳児院や児童養護施設に入っていたこともあった。さらに、母親の再婚相手から性虐待を受けていた可能性もある。

高校卒業直前に妻の妊娠が判明し、2人は結婚。芳樹さんの実家に住み、両親と共に子育てをしていた。芳樹さんは大学在学中にマリンスポーツ関連の会社を起業。妻を幸せにしたい一心で会社を軌道に乗せ、10年目には実家の近くに家を建てた。

しかし、妻に異変が起こったのはその頃からで、深夜の外出をときどき行うようになり、娘が小学校を卒業した6年前からは、朝帰りすることも増えていったという。

そんな矢先、「オーバードーズ事件」が起きた。

まず、3日前にある商業施設に行ったときに、妻が見知らぬ男性と薬売り場にいたのを目撃した。その夜に、50キロ離れた神奈川県の病院から妻がオーバードーズで搬送されたと連絡が入ったのだ。それ以来、妻は芳樹さんと顔を合わせようとしない。浮気をしている確信もあるが、妻の行動も知りたいとのことで、芳樹さんは山村さんに調査を依頼する。

仕事をしていないので行動パターンがわからない

妻は仕事をしていないので、行動のパターンが読めません。調査はベタつきで行うことにしました。

朝、8時から芳樹さんの自宅前を張っていると、大学生の息子と、高校生の娘が出てきました。2人は仲がいい様子で駅まで歩いて行きます。

それにつけても、家が立派です。マリンスポーツが好きな芳樹さんの趣味が散りばめられている。エーゲ海風とでも言うのか、おしゃれなデザインの邸宅は、周囲の庶民的な家の中でも目立っていました。

9時に芳樹さんは出てきて、ガレージを開け、海外ブランドのSUVで出勤。ガレージには3台の車があり、それぞれ海外の高級車ばかりです。芳樹さんが「妻にプレゼントした」と言っていた、英国の車だけがホコリを被って白くなっていました。

19時に娘が、21時に息子と芳樹さんが帰宅し、翌朝になっても動きはなく1日目は空振り。

妻の腕と顔に「あざ」が…

2日目も子供と芳樹さんが家を出てから、2時間後、妻が出てきました。青白くて細く、腕と顔にあざがありました。これは芳樹さんにやられたのではないかと直感。妻は完全予約制の婦人科の病院に入って行きました。30分で出てくると、処方箋薬局に行き、薬を受け取ります。支払いはカードでしていました。

その後、近くにある心療内科の病院へ行き、処方箋薬局へ。いずれも徒歩移動なのですが、妻の歩き方には覇気がない。美しくスタイルがいいのに、背中を丸めて俯くように歩いているのです。おそらく、近くに住む芳樹さんの両親に顔を見られたくないのかもしれません。

家の近くのコンビニで、水を購入。この時にピンときて、ペアの探偵に車でコンビニまできてもらいました。妻はバッグから帽子を出すとそれを被って、駐車場にあった国産車に乗り込みます。運転席には男性がいました。

車は1時間半程度走り、神奈川県湘南方面の一戸建てに入って行きます。地味な家で、住所を調べると、健康食品の輸入を行う会社が登記されていました。会社名を検索すると、60代の優しそうな男性が微笑んでいます。肩書きには医学博士とありました。

妻はこの家に14時から19時まで滞在し、男性の車で駅まで送られて帰宅。妻はマスクをしていましたが、マスクの端から、青から黄色になったあざが見えて、痛々しい感じでした。

妻は電車の中でもぐったりしており、居眠りしては起きるということを繰り返していました。下車する駅を乗り過ごし、終点まで行って、また戻っていました。

「どこ行ってたんだ!このバカが!」

1時間程度のところを2時間かけて23時ごろに帰宅。

妻がドアを開けると、芳樹さんの声で「どこ行っていたんだ!このバカが!」という声が聞こえて、いたたまれなくなってしまいました。

以上のような調査結果を報告すると、芳樹さんは「この男のところに行って、話し合いたい」と息巻いていました。しかし私たちは怒鳴っているところも見てしまいましたし、あのあざの原因も芳樹さんだと思われます。そこで私は芳樹さんに「今後、どうしたいかを考えてからの方がいいですよ」と提案しました。

夫婦や家族の問題は、暴力を「なかったこと」にはできません。関係の回復を狙って歩み寄るか、距離を置いて冷却期間を持つか、別れるなどをして、未来に向かって進むのです。

「俺は、妻のために、妻を幸せにするために、歯を食いしばって頑張ってきたんだ。こんな男に取られてたまるか」と泣いています。私は、「妻さんが求めている幸せと、芳樹さんの幸せは食い違っていませんか」と言うと、「そんなわけはないだろう、適当なことを言うな!」と怒られてしまいました。

おそらく、芳樹さんはとても頑張り屋ではあるのですが、自分の正義を相手に押し付けるタイプのようです。芳樹さんと考え方が合う人ならいいのでしょうけれど、そうでないときつい。妻はその苦しさに耐えていたのではないでしょうか。

いえ、考え方が合うとしても、意見が異なることがあってあたりまえ。それでも怒鳴られたり殴られたりするのでは、誰もが一緒にいることが苦しくなってしまいます。芳樹さんだって、怒鳴りたくて怒鳴り、殴りたくて殴っているのではないはず。それを伝えて、今後をしっかり考えたほうがいいと再度提案すると、芳樹さんは「ちょっと冷静になります」と言って出て行きました。

そしてその夜に、「あいつから離婚するって言われました。あいつは出ていったんですよ。どうかしてください」と連絡が入ったのです。

家で繰り返されていた暴力に暴言

妻と男性はSNSで出会ったようです。妻は相談相手を探しており、こうして出会った男性は年上の医師。巡り合わせのようなものがあって、半年前に交際をスタート。妻にとっては初めての浮気だったそうです。

男性は妻が置かれた状態を「異常だ」と判断。知識も財力もあるので、弁護士を間に立てて、離婚準備を進めます。

芳樹さんは妻に対して、暴力に暴言、子供の前でバカにする、さらに性行為でも嫌がっていても無理に行う夫婦間性暴力など、様々な暴力的な言動をしていたことが明らかになっていきました。しかし、妻は幼い頃からそういう状態に慣れており、義父からもやはり性暴力を受けてきたので、それが「当たり前」だと思っていたそうです。

浮気相手の男性は、妻の意識を変えるべく「暴言を吐かれたり、殴られたり、バカにされたりする必要は一切なく、それは決して当たり前のことではない。DVなんだ」と伝えたのでしょう。妻は「39歳まで、劣悪な状況で生きてきたんだ」と思い、薬に手が伸びていたのです。救急搬送されたのは、男性の家から帰る時に、衝動的に大量の薬を飲んだ時のことだったそうです。

ここで疑問だったのは、夫が店で目撃した時、妻が大量の薬を購入するのを、医師であるこの男性が止めなかったのかということ。医師であればオーバードーズの危険性はわかるはずです。

男性が妻が薬を過剰摂取するのを黙認していたのは、「依存症は無理やりやめさせても隠れてやるだけ」だと思っていたからだそうです。だからこそ、すべてをダメと取り上げるのではなく、自分の目の届く範囲で自由にさせつつ、彼女の言動をむやみに否定をせずゆっくり説得し、なによりも薬の過剰摂取を必要としない、安心できる状況を作りたかったのだと……。つまり「根本の理由」から解決しなければ、オーバードーズは解決しないということなのです。

夫の両親と同居のときは幸せだった

ただ、芳樹さんが妻を愛していなかったのかといえばそうとは言い切れません。妻は診断書や、暴力の録音を集め、離婚に踏み切ろうとしますが、芳樹さんが当初自分を愛し、救おうとしてくれたこともわかっており、はっきり捨てることはできずにいました。子供達との別れも辛い。その狭間で揺れていたのです。しかし芳樹さんはいまだにこう発言しました。

「あいつはガキなんです。俺の両親と暮らしている時は幸せだったと。“あなたがお嫁に来てくれて私たちは幸せ”と毎日のように言われ、料理や洗濯の手際の良さをほめられて嬉しかったんだと。自分の居場所はここだと思うようになったところで引っ越ししなくてはならなかったのが辛いって、どんだけわがままなんだよ」

家を建て、義両親から離れた暮らしが始まってからの10年間は、何をやっても芳樹さんから文句を言われ、子供達からは「高卒の親は恥ずかしい」などと言われて、再び苦しむようになりました。娘を育てながら、「私はこんなに幼いうちから、母親の交際相手におもちゃにされていたんだ」と過去の記憶がフラッシュバックしたそうです。

「俺が生活費を出してやってる」「俺が養ってやってる」「俺ががなんでも買い与えてやってる」……「幸せ」と見えるような成功した家庭で、それまで従順だった妻が突然家を出たり、浮気をしている事例で、このように語る「成功した夫」に多く出会ってきました。多くの場合、夫が妻を「愛している」のは、「上下関係」のもとなのです。だから妻が言うことを聞かないと怒ってしまう。そこには、一人の人間に対する尊敬がありません。その愛はエゴなのです。芳樹さんの言動から少し感じていた「バカな妻を優秀な俺が救ってやっている」という感覚が、妻にも伝わっていたのではないでしょうか。そういう姿勢を見せられたら、「自分はどうせダメな人間なんだ」と感じてしまうのではないでしょうか。

オーバードーズの原因のひとつは夫」

妻はこうして苦しむうちに、子供用の咳止めシロップや鎮痛剤を飲むようになったとか。このまま一緒にいても、いい未来にならないことが考えられます。

妻の離婚に向けての意思は固く、医師の男性と同居して、離婚に向かって長期戦に入るとのことでした。

それから1週間、子供たちも妻に対する意識が変わったそうです。娘は「お母さんが家事を全部して、お父さんは何もしなかった。ひとりでがんばるお母さんを助けたいと思っていた」と言ったそうです。それに対して芳樹さんは激怒。娘も家を出そうだと連絡がありました。

芳樹さんは復縁を望んでいますが、この場合、別居で距離を取りつつ、意識が変わるのを待つしかありません。なにより、芳樹さんが「妻がオーバードーズした原因のひとつは自分にある」ことを認識し、態度を改めなければなりません。もともと、性暴力を受けていたであろう妻に何も言わず寄り添い、救いたいと思ったりと、優しい心があるはず。自分がやってしまったことを認めることから始まるのです。

現在妻は男性の元で、介護関連の資格を勉強し、「社会から必要とされる自分」を育てているとか。この男性と出会っていなかったら、妻はオーバードーズで命を失っていたかもしれません。今後、芳樹さん夫婦がどうなるかわかりませんが、ふたりが「子どもたちの親」であることは変わりません。互いを尊重し合うことで、関係は落ち着いていくはず。みなさんの幸せを心から祈ります。

調査料金は30万円(経費別)です。

結婚20年、40歳会社経営者の39歳美人妻が「オーバードーズで救急搬送」されるまで