「膠原病」の症状はご存じですか? 病気の種類や“腎臓”への影響も医師が解説!
「膠原病」という病気をご存じでしょうか? 膠原病は正式な病名ではなく、いくつもの病気の総称です。一体、どのような病気があり、どのような症状や注意点があるのでしょうか。膠原病と腎機能の関係性についても、「板橋腎・リウマチ隼聖クリニック」の上野先生に解説していただきました。
≫「膠原病」と「リウマチ」って同じ病気なの?監修医師:
上野 智敏(板橋腎・リウマチ隼聖クリニック)
鹿児島大学医学部医学科卒業。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。その後、飯塚病院、虎の門病院、複数の医療機関で経験を積む。2023年、東京都板橋区に「板橋腎・リウマチ隼聖クリニック」を開院。医学博士。日本内科学会認定総合内科専門医、日本腎臓学会専門医、日本リウマチ学会専門医、日本透析医学会専門医、日本高血圧学会専門医。
膠原病とは?
編集部
まず、膠原病について教えてください。
上野先生
膠原病は、免疫の異常で生じる病気の総称です。免疫には、細菌やウイルスから自分の体を守る役割があります。しかし、免疫が間違えて自分の体を攻撃してしまうことがあり、これが要因で起こる病気を自己免疫性疾患や膠原病と呼んでいます。攻撃の対象になるのは全身の関節や皮膚、肺や腎臓・腸などの内臓など多岐にわたります。膠原病にはたくさんの種類があり、類縁疾患も含めると20種類以上あります。膠原病膠原病類縁疾患
自己炎症症候群
関節リウマチ
全身性エリテマトーデス
全身性強皮症
皮膚筋炎/多発性筋炎
シェーグレン症候群
混合性結合組織病
抗リン脂質抗体症候群
血管炎症候群
高安動脈炎
巨細胞性動脈炎
川崎病
結節性多発動脈炎
ANCA関連血管炎など
リウマチ性多発筋痛症
脊椎関節炎
ベーチェット病
成人発症スチル病(成人発症スティル病)
IgG4関連疾患
サルコイドーシス
痛風
偽痛風
若年性特発性関節炎
クローン病など
編集部
膠原病に特徴的な症状はあるのでしょうか?
上野先生
膠原病の種類によってかなり異なりますが、共通して多くみられる症状としては関節痛や筋肉痛、発熱、皮疹、手足のしびれなどです。また、免疫が自分の体を攻撃すると炎症が起こり、体力が奪われるので倦怠感や体重減少もしばしば起こります。それぞれの膠原病に特徴的な内臓障害があり、腎臓や肺、腸、筋肉、神経や皮膚などの障害によって、息切れ、手足のむくみ、発熱や頭痛、歩行障害、皮膚が硬くなる、全身の筋力低下など、非常に多くの症状がみられます。そして、ときにそれらの症状が命に関わることもあるのです。
編集部
膠原病の原因はなんですか?
上野先生
免疫システムの異常が直接の原因ではあるものの、なぜ免疫システムに異常をきたすのかは、現時点で完全に解明されていません。環境要因としてはストレスや感染、妊娠・出産などがきっかけで発症することもあります。
膠原病の注意が必要な症状は?
編集部
具体的に、どのような病気が膠原病に当てはまるのでしょうか?
上野先生
関節の痛みや腫れ、動かしにくさが表れる「関節リウマチ」や、関節に加え皮膚や臓器にも炎症が表れる「全身性エリテマトーデス(SLE)」、皮膚が硬くなる「強皮症」、筋肉が炎症を起こして筋力が低下する「皮膚筋炎・多発性筋炎」などが該当します。
編集部
腎臓にも影響があるとのことですが、いかがですか?
上野先生
そうですね。全ての膠原病で腎臓の障害が起こるわけではないのですが、例えば全身性エリテマトーデスでは「ループス腎炎」、強皮症では「腎クリーゼ」、シェーグレン症候群では「尿細管間質性腎炎」など、膠原病の種類によって特徴的な腎臓障害が起こります。さらに、これらを診断していくうえでの検査所見も非常に多彩です。例えば、尿検査異常の中でも血尿が主体になるものやタンパク尿が主体になるもの、さらに尿検査で異常がないにもかかわらず腎機能が急速に悪化するものなど、診断がとても難しいものもあるので、腎臓内科に入院して精密検査することもしばしばあります。
膠原病と診断されたら腎機能にも要注意
編集部
腎機能障害について、もう少し詳しく教えてください。
上野先生
腎臓は、血液を濾過して尿を作って体内の老廃物を捨てたり、水分や電解質の調節をしたり、骨をつくるのに必要なビタミンDを活性化させたり、血液を作る造血ホルモンを分泌したりと、非常に多くの働きがあります。腎臓に障害が起きると、これらがうまく機能しなくなり、尿の中に捨てられるべき毒素が蓄積したり、体がむくんだり、貧血になったりします。ただし、これらの症状は腎臓の機能が高度に障害されないと表れません。あくまでイメージですが、正常な腎機能を10とすると、2~3を切るまで低下しないと自覚症状が出てこないのです。そして、困ったことにいちど悪くなった腎機能は基本的に二度と元には戻りません。そのため、早期発見と早期介入が非常に重要なのです。
編集部
膠原病と診断されたらどうしたらいいのでしょうか?
上野先生
膠原病は診断名ではないので、膠原病の中でもどの病気なのかをしっかりと診断してもらい、どの内臓障害が出やすいかに注意しながら、その病気に応じた治療戦略を立てていくことが大切です。そのためには、できるだけ早く専門医に相談して、臓器障害の有無を確認することが重要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
上野先生
膠原病は、その病気の種類の多さからもわかるとおり、症状が多岐にわたります。「なんだか全体的に体調が優れない」「疲れやすいと感じる」「皮膚症状や関節症状があるが、日常生活に差し支えるほどではない」といった、なんとなく続く症状が主体になることも多く、疑わなければ見つけることが難しい病気でもあります。しかしその一方で、膠原病の中には急速に臓器障害が進み命に関わるケースもあるため、いずれにしてもできるだけ早く見つけて治療につなげていくことが必要です。気になる症状があれば、お気軽に医師へご相談ください。
編集部まとめ
膠原病は病名ではなく総称であり、病気の種類が多いことに加え、症状も多岐にわたるとのことでした。「なんとなくの不調」と見逃されやすい膠原病の症状は、まず病名を診断してもらうことで早期に発見でき、早めに対応することができます。不調が長く続いている人や、膠原病への不安をお持ちの人は、一度専門医に相談してみることをおすすめします。
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