この記事をまとめると

■新車販売の3割以上を占める軽自動車は事故の際の安全性を疑問視されることがある

■1995年から実施されている自動車アセスメントでは軽自動車も高評価を受けている

■今後は自動運転技術が軽自動車に普及させることが課題だ

車体は小さいが安全性は登録車と遜色ない水準まで達している

 軽自動車の新車販売が3割以上を占める今日なお、軽自動車は、より大柄な登録車より危険だと思われているかもしれない。

 逆に言えば、3ナンバー車であることを税制などを含め厭わなくなり、大きなSUV(スポーツ多目的車)人気が高まるなども含めて登録車が肥大傾向にあることによって、軽自動車規格のなかで新車開発される軽が、より頼りなさそうに見えることが助長されているともいえる。

 日本では、1995年から自動車アセスメントが実施されるようになり、新車の安全性能が公的機関によって評価されている。そして、当初の衝突安全性の評価に加え、歩行者保護や予防安全に関わる衝突軽減ブレーキの装備、ペダル踏み間違いでの加速抑制装置など、広範囲な安全性能が評価されるに至っている。

 最高の評価が5つ星で示され、安全なクルマというお墨付きが与えられる。そして5つ星のなかに、軽自動車も含まれている。衝突の衝撃を緩和する空間のゆとりが軽自動車は限られるとはいえ、剛性の高い鋼板を適切に車体構造に採り入れることにより、性能を改善している。

 そのうえで、衝突安全性能を確認するため、自動車メーカーは軽自動車と登録車を衝突させる試験も行っており、乗員保護性能の確認が行われている。

 したがって、安全性という性能評価においては、軽自動車といえども登録車と遜色ない水準に達してきている。

運転支援技術の進化で今後のクルマ社会が大きく変化する

 とはいえ、大きなクルマ軽自動車が衝突すれば、その衝撃は軽自動車のほうが大きくなるのは物理的現実として当然のことだ。ニュートンの運動方程式は、F=maであり、力(F)は、質量(m)に比例して大きくなるからだ。軽自動車と登録車の衝突実験を見学すると、軽自動車のほうが大きく跳ね飛ばされる実態がある。

 しかし、運転支援装置の進化により、衝突の危険性は減っている。衝突しなければ、軽自動車であろうと登録車であろうと、危険性への懸念は大きく減る。

 クルマの安全性向上の歴史は、衝突安全からはじまった。しかし、本筋からすれば、ぶつからないようにすることが第一ではないだろうか。その時代に入ってきている。自動運転も、単にラクに移動できるというだけでなく、自動運転を通じてぶつからないクルマが普及すれば、クルマの大小を問わず安心して乗ることができる。その視点で、自動運転への期待は高い。

 同時にまた、環境負荷を含め、大きなクルマがもてはやされる販売状況も見直しの検討が必要ではないか。電気自動車(EV)は、小さな高級車という価値を手に入れられる。静粛性や乗り心地、加速のよさなど、これまで上級車種でしか得られなかった価値を手に入れることができる。脱二酸化炭素だけでなく、クルマの本質的価値を高められるのがEVなのだ。加えてEVは、自動運転との親和性も高い。

 事故の心配がない安心できる移動手段で、なおかつ快適に気もちよく、また楽しく操れるクルマの価値の追求が、21世紀の新たなクルマ社会を創るのだと思う。