療育がすべてじゃないし、合う合わないもありますから。それこそ「療育に行ったのに治らなかったじゃないか!」となるのは違うし、波長の合う支援者を見つけるまでが大変なんじゃないかな。大人の私でも誰とでも仲良くはなれないので、子どもだったらもっと難しいと思う。

大事なのは、子どもの1番身近にいる人が困っていることに気づいて心を支えてあげることですよね。親が気づけないときは周りにいる人が気づいてあげたり。私は子どもは宝だし、社会のみんなの子どもだと思ってるから、支援者以外の人達にもっと知識を広めて、皆が協力して見守っていけばいいんじゃないかと思っています。

ただ、ときには「療育を受けたほうがいいんじゃないかな」と言うこともあります。

◆「絶対に療育には行かせたくない」はエゴ

――どんなときに、療育を勧めることがあるのでしょうか?

鳥居:知人のお子さんに吃音が出ていたんですけど、私は「そのうち治るんじゃないかな」と思っていました。でも親御さんが子どもが話すのを待たずに「こういうことが言いたいの?」と言ってしまう人だったんです。

「頑張って」とか「焦らないで」という声かけは子どもを本当に焦らせてしまうし、吃音は焦っているから言葉が出ないわけじゃないので。誤った関わり方をするくらいだったら療育に行ったほうがいいんじゃないかなと思いました。

――子どもを療育に行かせることに抵抗を感じる親御さんもいますよね。

鳥居:子どもが行きたくないと思っているならそれでいいと思うんですけど、「絶対に療育には行かせたくない」というのは親のエゴ。お子さんの表情を見て、困った顔をしているなら療育を検討したほうがいいんじゃないかと思います。

◆発達障害の診断が「いらない」理由

――発達障害については、これからも勉強を続けるのですか?

鳥居:もっと知りたいと思ってます。私にとってこの資格は「知識がほしい」という気持ちの延長なので、別に資格が家に送られてこなくてもよかったんです。

最近は、発達障害やいろいろなチックの症状のある方が発信しているものを「全部受け取ろう」と思って、毎日YouTubeなどを見ています。実際にその人達に会って、普通に「一緒に遊ぼう」ってしたいです。

――ご自身で、発達障害などについて診断を受けてみようとは思ったことはありますか?

鳥居:私が病院に行ったら何かしら診断がされることは分かってるんですけど、もし「こういう発達障害でした」と発表したら「鳥居って変だな」って言われなくなっちゃう。「発達障害だからイジるなよ!」となると思うから、私は診断はいらないです。自分の中で折り合いをつけて病院に行きたくないなら行かない、行きたいなら行くという風に考えられたらいいなと思います。

◆子どもがつらくないことが第一

――子どもの発達に悩む親御さんたちにメッセージをお願いします。

鳥居:発達障害は、軽い、重いはあると思うけど、誰しも当てはまりますよ。それを「うちの子はおかしい」と思わないでほしい。「おかしい」っていう人がいたらそれこそ偏見だと思うし、そんなこと言ったら皆おかしいから、あまり考え込まないでほしいです。

お子さんの表情を見てあげて、「今つらいんだな」と察してあげてほしい、つらそうだなと思ったら療育に行ってみるのもいいし、相談できる人に話すのがいいのかな。子どもがつらくないことを第一に考えて、自分のプライドは一回捨てましょうという感じですね。

自分1人で悩んでいると「重い病気かも」と思ったり、どんどん落ち込んでしまう。そうするとお子さんに正しい接し方ができなくなってしまうので、吐き出す場所として相談に行ったり、ときにはカラオケに行ったりしてみるのもいいと思います。

<取材・文/都田ミツコ 撮影/山田耕司>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。