空港にある書店と繁華街にある書店の違いを明確に答えることができますか?(写真:雪/PIXTA)

近年、「解像度」という言葉がビジネスパーソンの間で使われるようになりました。では、「解像度が高い人」とはどんな人でしょうか。その特徴の1つに「具体的に考えられる」ということが挙げられます。本稿は、『「解像度が高い人」がすべてを手に入れる』から一部抜粋・再構成のうえ、誰でもできる「具体化思考」の鍛え方をご紹介します。

「空港の書店」と「繁華街の書店」の違いを5つ挙げよ

あなたがある単体の対象を具体化したい際にも、敢えて「似たもの同士を比べて、違いを問う」ことで、単体では見えてきづらい具体化ができるのを体験していただきます。

今回の問題の場合、まずは空港の書店、繁華街の書店が、具体的にどういう場所にある書店なのかを頭にイメージしたほうがわかりやすいと思います。空港だったら、例えば羽田空港など。実際に行ったことのある場所を具体的に思い浮かべるのがコツです。

繁華街のほうも、例えば新宿の紀伊國屋書店であるとか、日本橋の丸善であるとか、具体的な場所を想定してみることがファーストステップになります。

次のステップでは、頭の中に描いたそれらの書店に来るお客さんはどんな人たちだろうと考えて具体化していきます。先ほど出てきた羽田空港や新宿という場所を踏まえて、そこを訪れる人びとにどんな違いがあるか、軸を立てて比較していくわけです。

羽田空港の書店を訪れるのはどんな人でしょうか。まず、「来店頻度」という軸で見ると、毎日のように飛行機で全国を出張して回っているような人は例外として、基本的には、そう頻繁に訪れる人はいないと思われます。せいぜい1年に1回程度で、来店頻度は低いでしょう。

それに対して、新宿の書店の場合、訪れるのは新宿で働いている人とか、週末に新宿で人と会う予定があってそのついでに立ち寄る人などで、来店頻度はそれだけ高くなります。つまり、来店頻度という軸から「空港=一見客」「繁華街=常連客」という違いが見えてきます。

来店目的や場所にあわせて変化する購買意識

「来店目的」という軸で見ると、羽田空港の場合、書店に行くためにわざわざ空港まで足を運ぶ人はそうそういないでしょう。空港を利用する人が「飛行機の時刻までの時間つぶし」「フライト中の時間つぶし」に読む本を探すためというのが目的になると思われます。

一方、新宿の場合、時間つぶしのためというパターンも考えられますが、それ以外にも実用目的の本とか話題の新刊など、欲しい本や雑誌を買うという「明確な目的」で来店するパターンも多いでしょう。ここから「空港=時間つぶし」「繁華街=目的志向」という違いが読み取れます。

「品揃え」という軸で見ると、羽田空港の書店はスペースも狭いですし、各カテゴリの本を揃えるよりは、売れ筋の本を中心に陳列するなどして売り場をつくっています。

新宿には書店もいろいろありますが、特に紀伊國屋書店は1階から8階まで総面積約1500坪という大型店舗で、専門書も含めて各カテゴリを網羅した品揃えです。ここから読み取れる違いが「空港=衝動買い」「繁華街=計画的」です。

また、この「衝動買い」という心理についてもう少し考えていくと、空港という場所には「衝動買い」を後押しする要因があります。つまり、空港へ行くのは何のためかと言えば、出張や帰省などもあるでしょうが、旅行目的のこともあります。

旅行に出ると、誰しもが開放的な気分になり、財布のひももゆるみがちです。普段なら絶対に買わないようなものでも、旅先では思わず買ってしまう。なぜかと言えば、いつもの日常から離れた環境にあるからです。

空港のテナントには、高級ファッションやブランド品のショップも入っていますが、それもこうしたお客の「衝動買い」の心理に着目した出店戦略です。この心理は、本も同じ。普段、繁華街の書店で見かけても手に取らないような本を、空港の書店でなら思わず購入してしまうこともあります。すなわち、「空港=非日常」「繁華街=日常」という図式です。

それから、これも空港の書店ならではのケースですが、「そこでしか手に入らない」という本を置いている場合があります。例えば、地方の空港であったり、海外の空港であったり……。現地を紹介するローカルなガイドブックや郷土史の本など、そういう本が好きな知り合いに頼まれたり、あるいは気を利かせてお土産に買っていくというケースが考えられます。

これが新宿の書店の場合、例えば、書店の少ない地方在住の友人に頼まれて……といったケースはもちろん考えられますが、お土産として買っていくことは少々考えにくい。なぜなら、それこそ大型書店であれば、今どきは在庫検索も注文もネット上で完結するからです。従って、「空港=土産用」「繁華街=自分用」という違いがあると考えられます。

「YouTubeの視聴者」と「TVの視聴者」の違い

「YouTubeの視聴者」と「TVの視聴者」。あなたが仮に単体の消費者やユーザーの人物像を具体化したいとしても、こちらの問題でも同じく敢えて「似た者同士を比べて、違いを問う」ことで、具体化思考を加速させます。

この問題では、比べる際に「5W1H」(正確には、5W1Hに「Whom」も加える)を軸として使ってみましょう。

まず、How、「どうやって見るのか」。YouTubeを見るときには、検索して自分が見たい番組を選ぶという特性があります。「プロ野球の名シーンが見たい」「HIKAKINの動画が見たい」「時事ニュースが見たい」等々、自分が今見たいコンテンツを選んで視聴できます。

一方、テレビの場合は、近年ではBS、CSなどの多チャンネル放送を契約していれば選択肢の幅がかなり広がってきているものの、基本的には地上波とBSくらいの限られたチャンネルの中から、今放送されている番組を見ることになります。何となくテレビをつけて、「今どんな番組をやっているんだろう」くらいのノリです。見たい番組やいつも見ている番組はあっても、今まさに見たい番組を放送している、というタイミングはそうそうありません。

「YouTube=能動的」「テレビ=受動的」と言えるでしょう。時間だけでなく、場所も限定されます。Where、「どこで見るのか」という軸です。

YouTubeであれば、電車やクルマで移動をしている途中にスマートフォンで見ることもできます。

一方、テレビの場合は、基本的にテレビ受像機のあるその場所、例えば自宅のリビングであるとか、そういう決まった場所でしか見られません。

「YouTube=どこでも視聴可」「テレビ=視聴場所が決まっている」と言えそうです。次はWhom、「誰を見るのか」という軸。本来は、「Why=なぜ見るのか」にしたいところですが、「見る理由」はあまりに幅が広いので、今回は「Whom=誰を見るか」で具体化します。

YouTuberは名もなき一般大衆の代表

これも、近年はかなり境界線が曖昧になってきているものの、YouTubeで見られている、いわゆるYouTuberと呼ばれる人びとは、中には芸能人以上に有名な人もいますが、基本的には多くが一般人です。だから、視聴者にとっては身近な存在、名もなき一般大衆の代表です。

一方で、テレビで見られている芸能人のほうは、どちらかと言えば視聴者からは遠くにいる憧れの存在。最近はYouTubeをやっている芸能人も少なくありませんが、基本的にはそういう位置づけになります。


「YouTube=身近なヒーロー・ヒロイン」「テレビ=芸能人」と言えそうです。続いて、What、「何を見るのか」。コンテンツの内容については、ニッチな内容とマス向けの内容のどちらかです。

基本的にテレビ番組にはならないような、非常に細かい、視聴者が限定されたコンテンツも、YouTubeではいくらでも出てきます。

テレビの場合、番組の制作費はスポンサーが負担していますから、マスの視聴率を取ることが基本戦略となり、「広く、浅く」という内容に収まりがちです。

最後はWho、「誰が見るのか」になります。YouTubeの場合はスマートフォンというデバイスの特性もありますが、基本的に一人で見るというパターンが多いと思います。大勢で見るには画面が小さいので。

逆に、家族や友人たちと集まって、皆でワイワイ盛り上がりながら見るのであれば、大画面のテレビを見るというパターンになります。「YouTube=一人で見る」「テレビ=家族や友人と見る」とも言えそうです。

(権藤 悠 : 株式会社キーメッセージ代表取締役社長)