腐敗した企業支配にむしばまれたスペースコロニー「アーリンの瞳」を舞台に、絶えず滅びゆく肉体と電子化された魂を持つ人権なき人造人間「スリーパー」としてサバイバルするアドベンチャーRPG「シチズン・スリーパー」が、2024年2月に待望の日本語化を果たしました。SF小説のような重厚なストーリーに、サイコロを振って行動を決めていくTRPG要素とアドベンチャー要素が絶妙に融合したゲーム性という魅力を持ち、続編の制作も決定している本作を実際にプレイしてみました。

Steam:シチズン・スリーパー

https://store.steampowered.com/app/1578650/



・目次

◆1:キャラメイクとアクションダイスの使用

◆2:キャラの強化

◆3:ハッキングアクション

◆4:ストーリーパート

◆5:まとめ

◆1:キャラメイクとアクションダイスの使用

シチズン・スリーパーを起動すると以下の画面になるので、「最初から」を選択します。



空のセーブスロットを選択するとゲームが始まります。



以下の動画を再生すると、シチズン・スリーパーの雰囲気をつかむために最初の数分間プレイしてみた様子を見ることができます。

SFアドベンチャー「シチズン・スリーパー」の冒頭はこんな感じ - YouTube

主人公である「スリーパー」の素性として選べる職業は3種類。例えば、以下はハッキングのような電脳を用いた作業に強く、忍耐力は低い「操縦士」です。



もうひとつは、技術が高い一方で人との交流は苦手な「機械工」。



最後が、忍耐を要する作業に強く直感を働かせるのは不得手な「採掘人」です。どれも一長一短ですが、どの職業でも最終的にほぼすべてのステータスをMAXかMAXの手前まで強化できるので、気に入ったものを選んでも問題ありません。



今回は、「操縦士」を選択してゲームを始めることにしました。このゲームのストーリーは、人間から抽出した精神を疑似生命の肉体に収容したサイボーグ労働者「スリーパー」である主人公が、企業支配から逃れるべく宇宙船に密航してスペースコロニーに漂着したところから始まります。そんな主人公を拾ってくれたのがこのドラゴスという老人です。



会話が終わり、コロニーでのサバイバル生活が始まりました。



画面の上にあるのは、主人公のステータスです。一番上のオレンジのバーは、一般的なゲームでいうところのHPに相当する「状態」のゲージで、一番下の白いバーは主人公の空腹度を表す「活力」のゲージです。そして、真ん中のサイコロは主人公がこのターンに起こせるアクションの回数とその行動力を表す「アクションダイス」で、出目はターン開始時にランダムで決まります。



アクションダイスはこのゲームの核となる重要な要素です。以下のムービーを再生すると、実際にアクションダイスを使って行動していく様子を見ることができます。

SFアドベンチャー「シチズン・スリーパー」で超ブラック労働に従事 - YouTube

働かざる者食うべからずということで、ひとまずドラゴスが生計を立てている廃物解体場で働くことになりました。



そして、これがダイスを使って行動をしていく「アクション」の画面です。1つの場所で取れるアクションは基本的にひとつかふたつあり、どちらかをある程度こなしていくことでイベントが進むようになっています。また、各アクションには判定に影響を与えるステータスが設定されており、今回選んだ「操縦士」は忍耐を要する作業が苦手なので、右のアクションが「−1」になっています。これは、例えば出目が6のダイスを使っても5のダイスと同じになってしまうという意味です。



そこで、苦手ではない方にダイスをドラッグしてアクションを実行してみることにします。すると、いい結果が出る確率は25%、普通は50%、悪い結果は「25%」だということが表示されました。ダイスの出目が大きいほどいい結果が出る確率は上がります。



残念ながら判定結果は失敗で、この世界の通貨である「クリオ」を入手した代わりに「活力」を浪費してしまい、イベントも進みませんでした。



さらにダイスを投入したところ今度は成功し、イベントが2クロック進むとともにクリオも多めにもらえました。



ダイスを使い果たすとこのターンで取れる行動は基本的になくなります。そこで、家代わりのコンテナに戻ります。



拠点に戻って今回のサイクル、つまりこのコロニーでの1日が終了しました。



新しいサイクルが始まると、またアクションダイスが振られるので、これを使ってドラゴスに依頼された仕事をこなしていきます。



イベントが進み、マップ画面に戻されました。このゲームは、一連のイベントの流れであり、一般的なゲームでのクエストに相当する「ドライヴ」に沿って進んでいきます。ドライヴは左上をクリックすることで確認できます。



今まで進めていたのは、ドラゴスの元で働いて恩を返すドライヴ「ドラゴスに恩を返せ」でした。ドライヴが次の段階に進む際に表示されるひし形のアイコンをクリックしてみます。



会話イベントが発生し、次の仕事を任されることになりました。



◆2:キャラの強化

ドライヴが完了すると、スキル強化のためのポイントが得られます。スキルは右上から確認することができます。



スキル画面はこんな感じ。今回はダイスの使用を有利にする「直感」を強化することにします。



その結果、判定の結果がどうなるのかを事前に予測できるようになりました。このスキルがあるからといって判定に成功する確率が上がるわけではありませんが、「失敗した際のリスクが大きいときは出目の小さいダイスを投入するのはやめてこう」というような判断が可能となっています。



◆3:ハッキングアクション

ゲームを進めると、主人公の頭脳が電脳だというSF設定を生かしたハッキングのアクションができるようになります。

SFアドベンチャー「シチズン・スリーパー」で電子の海をさまよう - YouTube

ハッキングは、画面上部の目のようなアイコンをクリックすることで入れる「クラウド」で行うことができます。



ハッキングは特殊なアクションで、成否の判定はない代わりに特定のダイスしか投入できません。例えば、ここでは出目が2のダイスしか入れられません。ただし、電脳のステータスが高いおかげで3のダイスも使えるようになっています。



暗号キーというアイテムを入手しました。この暗号キーはいくつかのドライヴで必要になります。基本的に、ハッキングには1や2といった出目の数字が小さいダイスが必要になることが多いので、出目が大きいダイスは通常のアクションに、小さいダイスはハッキングに使うようにすると効率的にゲームを進められます。



ダイスの重要なポイントは、出目だけではありません。主人公の肉体は、安定剤を投与しなければ徐々に崩壊していくように作られており、アクションに失敗した時だけでなく、ただサイクルが経過するだけでも状態がどんどん悪化していきます。そして、状態が悪化するとサイクルの始まりに与えられるダイスも減ってしまいます。



そのため、イベントで入手したり特定の登場人物から買ったりする安定剤が主人公の生命線となります。



活力ゲージは直接アクションに影響しませんが、活力ゲージがゼロの状態でさらに活力が減少すると活力ゲージの代わりに状態ゲージが減少してしまいます。また、このゲージは主に食料を食べることで回復します。



このように、仕事や依頼をこなしてドライヴを進め、安定剤と食料を確保しながら生き延びる方法を模索していくのがこのゲームの基本的な流れとなります。

◆4:ストーリーパート

シチズン・スリーパーの魅力はアドベンチャーパートだけではなく、崩壊しかけたスペースコロニーで必死に生活している人々が繰り広げる群像劇にもあります。以下のムービーでは、序盤に登場する人々の中で印象的なキャラクターとの会話の一部を切り取ってまとめてみました。

SFアドベンチャー「シチズン・スリーパー」の魅力的なキャラクターたち - YouTube

◆5:まとめ

ほぼすべてのドライヴをクリアするまでシチズン・スリーパーをプレイした感想として、最も強く感じたのは、TRPG要素であるダイスがアドベンチャーゲームにうまく組み込まれているという点です。主人公のコンディションによってダイスの数が増減し、ダイスの数が行動回数に直結するので、状況が悪化していくにつれてできることが少なくなっていくプレッシャーを感じさせる作りになっており、これがダークな世界観とよくマッチしています。



とはいえ、純粋なアドベンチャーゲームとして見ると難易度がかなり低く、よほど無理をしない限り手詰まりになるようなことはありません。この難易度の低さにはメリットとデメリットのふたつの側面があり、まずアドベンチャーゲームとしてのスリルが損なわれるため、反復的なアクションが単純作業になりがちです。

その一方、理不尽にゲームオーバーになったりしないおかげで、途中まで進めたのにやり直すような事態も起きなかったので、難易度が低いというよりは「ノイズに邪魔されることなくストーリーを楽しむのにちょうどいいゲームバランス」との評価の方が適切かもしれません。



実は、レビューした編集部員はアクションゲームに比べて動きがないゲームが苦手ですが、それにもかかわらずテキスト量が膨大なこのゲームのプレイを続けられたのは、ストーリーに引き込まれたからです。

ネタバレになるので詳しくは説明しませんが、エンディングは主人公が新天地を目指して旅立つものから、電脳というSF要素を十分に生かしたものまで複数用意されています。また、エンドクレジットを見た後は自動的にそのエンディングを選ぶ直前に戻るので、そのまま別のエンディングを見ることもできます。ただし、選択肢によっては見られないエンディングもあるほか、任意のタイミングでセーブする機能はなく、思い通りの結果にするためにセーブとロードを繰り返したりもできないので、選択の重要性は確保されています。

難解なSF用語は使われておらず、翻訳の質も高くて海外ゲームの日本語版にありがちなキャラクターの口調のブレなどもなかったので、すらすら読むことが可能で、プレイ後は一編の小説を読んだ後のような読後感に浸れる雰囲気重視のゲームでした。こうした点を総合すると、SF作品が好きな人ならプレイして損はないゲームだと感じました。

シチズン・スリーパーはPC(Steam)版が税込2300円、Nintendo Switch版が税込2570円、PlayStation 4およびPlayStation 5版が税込2640円、Xbox OneおよびXbox Series X|S版が税込2530円、DRMフリー版がGOG.comで19.99ドル(約2,960円)でリリースされています。

また、続編である「Citizen Sleeper 2: Starward Vector」の制作も決定しています。

Steam:シチズン・スリーパー

https://store.steampowered.com/app/1578650/