1979年から放送している、国民的アニメ『ドラえもん』。2005年からはジャイアンこと剛田武役を木村昴さん、骨川スネ夫役をESSEonlineで連載ももつ関智一さんが担当しています。所属事務所の先輩・後輩でもあり、ともにドラえもん声優として19年歩んできた2人に、今回は最新作の『映画ドラえもん』の見どころや、『ドラえもん』の声優になったときの裏話などについてお話を伺いました。

 木村昴さん×関智一さん『映画ドラえもん』の最新作を語る

――1980年にスタートした『映画ドラえもん』シリーズ。3月1日には43作目となる『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)』が公開。今作は「音楽」をテーマに、ドラえもんたちが大冒険をします。まずは、おふたりが最初に台本を読んだときの感想を教えていただけますでしょうか。

【写真】インタビュー中の木村昴さんと、関智一さん

関智一さん(以下、関):これまで『映画ドラえもん』では、さまざまな世界を冒険しています。長い歴史があるからこそ、現場でもよく「もう行く場所ないよね〜」みたいな話が出ますが、今回は…「音楽」。あぁ、こういう手があったか…と脱帽しました。

木村昴さん(以下、木村):ドラえもんたちが、「楽器を演奏する」というのがすごく新鮮ですね。これまで強大な悪に立ち向かうために、武器を使ったり、知恵を絞ったり…いろんな戦い方をしてきましたが、今回はアクションではなく「音楽の力」で立ち向かう。これまでありそうでなかった感じで、すごく楽しみでした。あとは、ジャイアンが“歌う”映画は今までもありましたけど、“楽器”なんだ…っていうね。

関:それね。歌にいかないんだって思ったよね。

――それぞれのキャラクターが奏でる楽器も注目ポイントのひとつですよね。そのほかにぜひ注目してほしい場面や見どころがあれば教えてください。

木村:今回は「音楽の力」っていうのがすごく大きなテーマになっていて、とくにラストシーンが感動的なんですよ。見ごたえがあって、アフレコのときもその「音楽の力」にグッときましたよね。

関:今までもすばらしいシーンがたくさんありましたが、中でも指折りの名シーンになってるんじゃないですかね? のび太くんがおならで演奏する場面があるんですけど、あれはやっぱりいくつになってもおもしろいですよね。そういうものも全部愛しい音として扱っているという、懐の広さみたいなものも感じました。

身近なテーマだからこそ、“入門”としても最適

――たしかに子どもから大人まで、幅広い世代の人が見ても、楽しめる映画ですよね。

木村:「ドラえもん」って、子ども向けアニメだと思われがちですよね。でも大人が見ても十分楽しめますし、今回の『映画ドラえもん』は、どこか“ミュージカル”っぽい要素もある。だから万人に楽しんでいただけるのではないかなという風に思っています。

木村:子どもと一緒に見に行くのももちろんおすすめですし、デートやお仕事帰りのリフレッシュにご覧いただくのもいいのかな。ドラえもんの映画は、必ず最後にあったかい気持ちになる。「明日もがんばろうっ!」という気持ちになるので、ぜひご覧いただければうれしいです。ジャイアンとスネ夫が活躍してますので、ぜひその姿にも注目いただければ。

関:普段「ドラえもん」をご覧にならない方もいるかもしれませんが、すごく普遍的なテーマを取り扱っています。だから、今まで見たことなくても、ふらっと行っても楽しめますし、「音楽」という身近なテーマで入りやすい。『映画ドラえもん』が初めてという方には、入門としても、とてもいいんじゃないかなという風に思っています。

散歩中にまさかの遭遇…!?

――映画では音楽がエネルギーでしたが、おふたりにとっての「エネルギーの源」があれば教えてください。

関:やっぱり「食事」ですよね。今日は「あれを食べよう」と思うと、ワクワクする気持ちになる。好きなものを食べることで、がんばれるし、力になる。実際にエネルギーにもなりますしね。毎回、『映画ドラえもん』のアフレコのときには“とんかつ”のお弁当が出るんですよ。コレを食べるっていうのが、1つの“行事”で、ドラえもんの映画をやるために必要なエネルギーです。

木村:僕は少しベタではありますけど、「音楽」なのかなって思いますね。しょっちゅう歩くんですよ。移動をなるべく歩くようにしていて、お仕事終わりは家まで歩いて帰ることが非常に多いんですが、そういうときにイヤホンで音楽を聴きながら帰るっていうのが、気分転換にもなる。

関:最近、プライベートで歩いてるときにすれ違ったりするんですよ! 

――予期せぬところで会うと気まずくなったりしませんか?

関:逆にびっくりしちゃうから、「おぉ! なにしてんの?」みたいな感じですかね。

木村:何度か会いましたね。あとは、コーラを飲むのが好きなんで「コーラ」ですかね。

『ドラえもん』声優になって、早19年。

――今年でドラえもんの声優として19年が経ち、いよいよ来年20周年ですね。これまでほかのインタビューでも答えているかと思いますが、お互いの最初の印象って覚えてらっしゃいますか?

関:なんか最初が特異な空間だったんですよね。というのも、最終オーディションだと聞かされていたんですけど、本当はその日が合格の発表会だった。だから、僕らはちょっと騙されていて(笑)。

合格しているとは知らずに、これからまだ試されるんだって思っていたから、微妙にお互いが緊張感のある雰囲気。当時14歳の木村君が放った、かの有名な「これからよろしく頼むよ」みたいなのもそこで生まれたもの。まぁ、多分変な緊張感からとった不思議な行動だったんでしょうね。

木村:ふはははは。そう! お互いがんばりましょう。みたいな、ね。

――当時、関さんは32歳でしたよね? 14歳の木村さんから「よろしく」と聞いたとき、正直どんな気持ちだったのか気になります。

関:「うん、そうだね」って(笑)。いや、木村君に関しては、素性があまりにも分からなくて、あとから、「14歳の中学生だよ」って聞いたので、あいさつしたそのときは何歳か分からなかった。

関:しかも見た目が、眼鏡とかしてて、今よりももっと老けた感じで。僕もよく分からず「あぁ…、よ、よろしくね」みたいな(笑)。これから試験だっていう風に聞かされていたので、余裕もなかったし。

木村:たしかに緊張感がありましたよね。一応、「みんなでかけ合いをやろう!」みたいなオーディションがあったと思うんですけど…。

関:いや、違う違う! バランスが見たいと言われて集められたんですけど、「1人ずつオーディションします」って言われて。いや、そもそも1人ずつやったら、もうバランスではないじゃないですか(笑)。

関:そうやって、1人ずつ会場に行くんですけど、行ったっきりで帰ってこないんですよ。で、いざ入ってみたら、そういう発表会の雰囲気になってて。「あなたが選ばれました。うしろにお立ちください」みたいな感じでしたね。

――そんな裏話があったんですね。そこから年月が経ち…。

関:そんな発表から早19年(笑)。すごいですよね。でも、木村君は出会ったときと印象は変わらないですよ。ずっと。ただ、いちばん変化が大きいタイミングでの約20年なので、随分大人になったなとは思いますね。

――お父さんみたいな気持ちで見守られていたということですか?

関:そんな感じでもなかった(笑)。子どものときから意外としっかりしてたんでね。でも、素人っぽい頃から見てたから、今じゃ立派な1人前の声優さんであり、俳優さんになった。すごいがんばってるなと思って、エネルギーをいただいてます。

木村:僕ももちろん、関さんのことをずっと尊敬する先輩として、ついていってる感じですね。先代の先輩方がドラえもんたちを26年間演じられてきた。気づけば、ちょっとずつその年数に近づいてきてますよね。

関:ホントだね! 年月だけで言えば、背中が見えてきたね。