70代でデビューした90歳・現役料理研究家。義娘の手伝いで人生が一変、シングル子育て経験も糧に

2024年3月3日 20時0分

70歳のときに、義娘で料理研究家の小林まさみさんのアシスタントになった小林まさるさん。その後、自身も料理研究家としてレシピ本の出版やYouTubeチャンネルとスタートするなど、90歳を迎えた今もさまざまなことに挑戦しています。そのパワーの源とは？　詳しくお聞きしました。

前代未聞、料理研究家の嫁とアシスタントの舅

テレビや雑誌などで料理研究家として活躍しながら、88歳で始めたYouTube「小林まさる88チャンネル」が人気を集めている小林まさるさん。

【写真】シングルファザーとして、料理は長年の経験がある小林まさるさん

きっかけは70歳のときでした。同居していた息子の妻の小林まさみさんが料理研究家として独立することになり、本を出すにあたり、撮影のアシスタントが必要になったのです。まさるさんは「そんなの俺がいくらでもやってやるよ」と買って出ました。

撮影は早朝から下準備が始まり、夜遅くまでひたすら料理をつくり続ける日が何日も続くなど過酷でしたが、まさるさんの働きぶりは、まさみさんも驚くほど。そのまま、アシスタントを続けることになりました。

料理研究家のアシスタントが、70代の義父とは、前代未聞。まさるさんの明るくて気さくな人柄もあって、どこへ行っても話題になり、ついに78歳のときに自身のレシピ本『まさるのつまみ』を出版することになります。

そんなまさるさんのトレードマークは、頭に巻いたバンダナ。自宅には150枚以上のコレクションがあり、その日の気分に合わせて選びます。

「初めてのテレビの撮影のときに、俺が下を向いたときに頭のてっぺんが寂しい…ってことになったのが始まり（笑）。普段は青系のバンダナをすることが多いけど、気合を入れるときは赤を選んだり」

お気に入りのデニムのエプロンは、現在使っているものが3代目。

「ほかにもエプロンは持ってるんだけど、やっぱりこれが使いやすくって、こればかり使ってるよ。背中でクロスになっていて首や肩が凝りにくいし、前に大きなポケットがついてるのも便利なんだ」

シングルファザーとして、料理は長年の経験が

そもそもまさるさんにとって、毎日の家事や食事づくりはシングルファザー時代から長年やってきたこと。

「恥ずかしながら、子どもたちがまだ小さい頃、子どもを連れて離婚したんだ」

数年後に同じ人と再婚したものの、“かあちゃん”（妻）は体が弱く、まさるさんが57歳のときに亡くなり、再びシングルファザーに。

定年後、息子が結婚して思いがけず同居することになってからも、まさるさんは積極的に家事を担ってきました。義娘のまさみさんが調理師学校に通うと言い出したときも、「思いっきりやったらいい。家事は時間がある俺がやればいいんだから」と応援したのだそう。

樺太時代の“うまいもの”へのこだわり

そうした家事の経験に加え、まさるさんの「うまいもの」へのこだわりは、幼少期の苦労が原点にあります。

「戦時中に樺太で生まれて、戦後もすぐには戻ってくられなかったから、子どもの頃は貧しくてね。うまいもんをたらふく食べたいという気持ちはすごくあった。友達と山や川へ行くときは、親父がつくってくれた鉄製の刀みたいなのを持って行って、魚を釣って、自分たちでさばいて焼いて食べたりしたもんだ。思えばそのときの経験が、のちに包丁を使えることに繋がったのかもしれないね」

70歳で思いがけず料理研究家の道に足を踏み入れ、気がつけば20年。

「撮影のときは朝から晩まで料理ばかりしているし、撮影がないときも試作、試作、試作。朝起きると、ああ、今日も仕事かぁなんて思うこともあるけど、それでやらなかったらみんなに迷惑をかけちゃう。だからすぐに気持ちを切り替えるようにしてるよ」

YouTubeでもなんでも、やってみなくちゃわからない！

さらに、2年前から始めたYouTubeチャンネルも、今ではフォロワー数1万2000人以上と、大人気に。

「最初はYouTubeなんてやるのイヤだって言ったんだよ。そんなのやりたくないって言ったんだけど、もうやるって決まってるからってまさみちゃんや息子に説得されてさ。でも、今はすごくやる気になってる。今後はさらにYouTubeに力を入れたいって思ってるんだ。なんだってやってみなくちゃわからないものだね。年寄りには先がないんだから、迷わずどんどんやってみなくちゃ（笑）。合わなかったらやめてすぐ次に行けばいい」