たとえ敷地が狭かったり周辺環境が厳かったりしても、窓のプランニング次第で、明るく気持ちのいい家が建ちます。どんな窓を、どのような場所に取りつけるといいか、編集部がリノベーション会社のプランナーに聞きました。吹き抜けと高窓を組み合わせる、勾配天井に天窓をつけるなど、8つの工夫を紹介。

工夫1.住宅密集地でも吹き抜け&高窓で光たっぷり

隣家が迫る住宅密集地の場合、いちばん工夫したいのが日中を家族と過ごすリビングです。

「リビングは2階に配置して、天井は1階よりも高めに設定。もしくは、吹き抜けにして高窓を設ければ、より多くの日差しが取り込めます。さらに狭い家であれば、小屋裏空間も有効に使いたいので、高窓の周辺にロフトをつくってプラスアルファの空間に。床を格子状にすれば光や空気も通り、高窓から入った日差しがロフトの床越しにリビングを明るく照らします」(リノベーション会社「スタイル工房」のチーフプランナー・鈴木ゆり子さん、以下同)

 

工夫2.吹き抜けの勾配天井に天窓をつけて開放感を

窓を使って開放感を高めるなら、大きな窓が有効です。しかし、隣家が接近しているような密集地では、大きな掃き出し窓を配置しても目の前に隣家の壁が広がり、閉塞感が漂うだけ。

「その場合は、2階を吹き抜けの勾配天井にして、LDKを配置しましょう。南に面した天井の最大高は、せめて1階の1.5倍は欲しいところ。隣家の屋根より高い位置に高窓がつくれるので、視線が遠くまでのびます。あわせて天窓も取りつけて」

視界をさえぎらない高窓や天窓で開放感が味わえます。

工夫3.最上階の角にテラスをつくれば眺めのよい家に!

眺めのよさは、室内からなにを見たいのかがポイントになります。しかし、ビルに囲まれた状況では、眺めたいものが見当たらないことも。

「最上階の角にテラスを設けるのもひとつの方法です。観葉植物を置いて空中ガーデンをつくり、テラスを囲むようにLDKを配置。テラスに接する2面の壁には掃き出し窓、天井には天窓を取りつけましょう。これでLDKから2方向の景色が楽しめます」

テラスのグリーンに加えて青空や月夜と、1日を通して眺めを満喫できます。

 

工夫4.北側しか開けていない敷地には、南に吹き抜け+高窓

住まいの3方に隣家があり、唯一、隣家がないのが北側という敷地。

「北向きの家でも、南から採光が得られるように工夫しましょう。たとえば、最上階の南側の角に吹き抜けを設け、高窓を設置すれば、北だけでなく、南からも採光が得られます。さらに天窓を取りつければ、降り注ぐ日差しが部屋全体を照らします。また、敷地に少しゆとりがある場合は、中庭をつくる方法も。中庭を介して南からの日差しが入って明るくなります」

工夫5.西日が入る場所は部屋の形状と窓の位置に工夫を!

西側に配置された部屋は、日差しが水平に近い角度で入射するため、西日がまぶしく感じられて敬遠されがち。

「あえて西側に窓をつくらないのも選択肢のひとつです。その場合は、部屋の形状にひと工夫を。部屋を上から見たときに四角形にするのではなく、凸状にするのです。西側の床の一部を張り出すことで、南面に壁ができます。そこに窓を取りつければ、南からの心地よい日差しが取り込めます。ほかに、西側の窓に遮熱ガラスを採用するのも有効です」

 

工夫6.明るさと耐震性は筋交い&フィックス窓で確保

「たとえば木造軸組工法の家で、1階の角部屋に窓をたくさんつけるなら、コーナー窓にするといいでしょう。角の柱を中心にして、両側に窓を取りつけるのです。一方は大きな引き違い窓に、もう一方は天井まであるフィックス窓。これにより窓の面積は大きくなります。そしてフィックス窓には、構造金物の筋交いを組み合わせて耐震性を確保しましょう」

筋交いを入れると出入りできないので、フィックス窓にするのがポイント。

工夫7.交通量が多い場所はトリプルガラスの窓で音を緩和

交通量の多い道路が近くにある家は、クルマの走行音が気になるものです。

「外の音が気になる場合は、窓にトリプルガラスを取り入れると効果的です。3枚のガラスにはさまれた2つの中空層により、外の音が緩和されます。次に効果的なのが、外窓に内窓を加えるパターン。この場合は、外窓と内窓の距離は10cmほどあるほうが、複層ガラスよりも音は静かになります」

 

工夫8.海辺の景色を楽しみたければ大きなフィックス窓

海が広がる雄大な景色を家の中で楽しむには、海沿いの家ならではの工夫が必要です。

「せっかくの景色なので、サッシで視界をさえぎらないように、大きなフィックス窓を取りつけるといいでしょう。海から吹きつける風が強いため、引き違い窓を取りつけたとしても、あまり開閉することはないと思います。それよりも、フィックス窓のサイドに、細い縦すべり出し窓を組み合わせましょう。必要に応じて採風ができるので便利です」

※イラストはイメージです