(漫画:筆者作成)

職場で何かあるたびに「会社を辞める」と言い続けながら、実際はまったく辞めない社員はいませんか。そうした人が抱えるリスクについて、著書に『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』などがある漫画家・イラストレーター・グラフィックデザイナーのJamさんが、自身の経験を基に解説します。

辞めたい発言をする人は「自信がない人」


(漫画:筆者作成)

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会社を辞めると言いながらずっと辞めない、「辞める辞める詐欺」と呼ばれてしまう人たちは、なぜそんなことをするのでしょう?

会社を辞める発言を繰り返す人は、当然のことですが、会社内での業務や今の自分の役職に不満があります。社内で納得のいく評価をされていれば、会社を辞めたいとまでは思わないはずです。

つまり、「辞めたい」発言をする人は、仕事ができない人や、仕事に対して自信がない人、自己評価の低い人が多い傾向にあります。

中には「辞める」と言うことで、歪んだ形で承認欲求を満たす人もいます。周りが心配してくれたり、相談に乗ってくれたりすると「自分には価値がある」と感じ、満足感を得ることができるからです。

単にストレス発散のための愚痴として「辞める」という言葉を繰り返す人もいます。こちらは、ため込まずに辞めたい気持ちを適度に漏らすことで、気持ちが落ち着いてしまうので、結局は辞職せずに会社に残ってしまうようです。

本当に辞めたい気持ちはあるけれど、一歩踏み出せない人もいます。先ほども書きましたが、「辞める」と何度も言ってしまう人は、仕事ができない人や自信がない人、自己評価が低い人が多いです。そういう人は転職に対しても不安を感じます。

面倒くさがりな人も、なかなか転職に踏み切れません。転職サイトに登録したり履歴書を作ったり、転職先に面接に行ったり、独立を志す人ならさらにやるべきことがたくさんあります。それらを今の仕事と並行してやるのはとても大変なのです。そして「自分に転職先があるのか」という心配もあります。その結果、「辞める」と言いながらもずっと辞められない状況になってしまうのです。

「辞める」と頻繁に言う人への信頼は下がる

会社を辞めると言うのは簡単ですが、本当に辞める気がないなら、その言葉を発するリスクも考えたほうがいいと思います。頻繁に「辞める」と言い続ければ、社内での信頼も下がるし、印象は確実に悪くなります。

会社を辞めたいと言うのは、「私は今の職場に対して愛社精神がありません」とアピールするようなものです。会社もいつ辞めるかわからない人を昇進させたり、大事な仕事を任せたりすることはできません。社内での待遇はますます悪くなっていくでしょう。

また、「辞めたい」と言えば、上司や同僚は「自分も不満の対象や原因の一端ではないか」と感じます。そうなれば、人間関係もぎくしゃくしていきます。

だから、本当に会社を辞める決意が固まるまでは、「辞める」とは言わないほうがいいのです。できれば次の転職先にメドがつくまでは、今までどおりにしていたほうがいいでしょう。

会社を「辞める」と言えば一時的にはかまってもらえますが、それを切り札に使えるのは一度きりです。繰り返せば確実に社内での居場所がなくなっていきます。少しくらい愚痴を言っても、退社の意思をちらつかせたりしなければ、まだ後ろに戻ることができます。

本当に辞めるつもりはなく、会社への不満を伝えるために「辞める」と言ってしまう人は、自分のためにも不満の伝え方を改めたほうがいいでしょう。

有能な人が突然退職してしまう理由


(漫画:筆者作成)

会社を辞めない人が「会社を辞める」と言って残り続けるのに対し、本当に有能な人がある日突然「退職」してしまうのはなぜなのでしょう? それは多分、有能な人の大半が、どこに転職しても問題なくやっていけるからです。

何度も「辞める」と言って会社を辞めない人が、自信がなく自己評価が低いのに対して、有能な人は普段から正当な評価を受けているため、自信がある人や、自己評価が高い人が多いです。

そういう人が転職を決意するときは、ネガティブな事情からではなく、もっといい条件の会社への転職だったり、自分が本当にやりたいことをするためだったりします。どこに行っても通用する自信があるから、退職への迷いや不安も少ないのです。

また、会社を辞めない人が転職活動に不安を抱いたり面倒になったりするのに対し、有能な人は退職を引き留められることのほうが面倒に感じます。辞めるそぶりをちらつかせれば、上司に引き留められたりもするので、事前に相談もしません。秘密裏に着々と退職の準備を進めて辞めていきます。だから、有能な人の退職ほど「突然」に感じてしまうのです。

職場に問題があるのかもしれない

前項で、「会社を辞める」と発言することは、社内での印象を下げることになると書きましたが、有能な人ほどそういったリスクをよくわかっています。社内で愚痴を吐いても仕方ないし、わざわざ自分の立場を悪くする、あるいは信頼を欠く行動をしません。

会社に居続けるつもりはなくても、立つ鳥跡を濁さずで、最後まで問題を起こさないようにします。なぜなら、転職する人は今までのキャリアを生かすことが多いので、次に選ぶ仕事によっては、今の会社が今後の取引先の1つになることもあるからです。トラブルを起こして辞めるよりは、問題なく綺麗に辞めたほうが先々まで都合がいいのです。

有能な人は退職のリスクについても十分考えているので、今の会社に将来性を感じ、十分成果を発揮できる場所だと感じれば、無理に退職を考えることはありません。

もし、自分の会社は有能な人ほどすぐ辞めてしまう会社だな……と感じたら、その職場に問題があるのかもしれません。「今の時代はよくあること」で片づけず、社内環境や仕組みを見直す機会として、生かしたほうがいいと思います。

(Jam : 漫画家・イラストレーター・ゲームグラフィックデザイナー)