日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「そんなしたいなら、お前もセフレつくれば」と夫から突き放されてしまった主婦の紀子さん(仮名・40歳)。レス歴が10年を超えても、お互いに嘘をつき取り繕いながら円満に暮らしているという奇妙な夫婦生活について伺いました。

夫に裏ぎられたのは自業自得。でも寂しい

不倫・略奪婚したものの、夫の女性問題に悩むことになった紀子さん。見て見ぬふりを続けて我慢をしてきましたが、待望の第一子を授かって1年が経過したある日、夫からセフレがいるという話をサラっとされました。開き直った態度に、もはや責める気力すら残っていなかったといいます。

「もともと周囲からの大反対を押しきって結婚したのは私。親からも友人からも、夫の元嫁からも…『いつか同じ目に遭う』と言われ続けてきました。強がっていたけれど、みんなの言うことが正しかったというだけの話です。信じていた人に裏ぎられたらショックが大きいけれど、私の場合、ずっと黒よりのグレーに自分で白い絵の具を混ぜながら夫婦生活を続けていただけなので、なんか心に免疫がついちゃっていたのか、『あぁやっぱりね』という程度にしか感じられませんでした」

泣くことも騒ぐこともなかったという紀子さん。その後も、夫と子どもとの暮らしはなにも変化なく続いていきました。しかし、ふと寂しさを感じる瞬間はあったといいます。

自分でも忘れていた誕生日を祝ってくれた人

「母親ってみんなそうなのかもしれないけれど、子どもが生まれてからは自分のことすべてが二の次。自分の誕生日すら忘れていたくらいです。もちろんあの夫が気を利かせて祝ってくれるわけもありません。そんなときに、中学時代の同級生・A氏から急にSNSを通じてメッセージがきました。『おめでとう』って」

当時、流行し始めていたSNS。“友達”になっている相手にはおそらく「今日は紀子さんの誕生日です」というような自動のポップアップのメッセージが出てきて、軽い気持ちでお祝いを送ってくれただけなのかもしれません。

しかし、その相手は、紀子さんが中学時代に好きだった人でした。もう向こうにも結婚して奥さんとお子さんがいる様子。戸惑いながらも、ついうれしさと懐かしさからメッセージにお返事をしてしまったのです。「お元気ですか? 久しぶりに会いたいですね」と。

もしも向こうに家庭がなければ…

後日、紀子さんは同級生のA氏と再会。すっかり大人の男になっていたA氏に紀子さんがのめり込むまでに時間はかかりませんでした。

「向こうはうちと違って、家庭がすごく円満なんです。奥さんと娘さんがいちばん。初めて会ったときからその話は何度もされていました。だから、たまに会えるだけでいいなって。最初はそう思っていたけれど、会うとまたすぐに会いたくなってしまって。私から積極的にアプローチしました」と紀子さん。

A氏の住まいは神奈川県。静岡に住む紀子さんとは新幹線で行き来しやすい場所だったこともあり、ふたりの逢瀬の頻度はどんどん増えていきました。

「浮気する夫に対して罪悪感はないのです。でも自分の子どもや相手の家族のことを考えると複雑です。むしろ向こうに家族がいてよかったとさえ思いました。向こうの家庭を壊したり、A氏を困らせたくないという気持ちがあるから冷静でいられる。ひとりぼっちの孤独から抜け出すには、これしか道がなかったんです」

「俺はお前がなにをしているか知っている」

中学時代のあこがれのA氏にのめり込んでいった紀子さん。夫には勘づかれなかったのか聞いてみると、「すぐバレましたよ」とあっさり。

なんの前触れもなく突然夫から「俺はバレンタインの日、お前がなにをしていたか、全部知ってるからな」とだけ言われたといいます。しかし浮気をしているのはお互い様。それ以降はなにも言ってこないそう。

「確認してないからわからないですけれど、たぶんスマホを見られたのかなと思います。それまでA氏とのやり取りが愛おしくて消せなくて。けれど、この日を境にマズいな思って、証拠は全部消しています。夫との関係はどうでもいいのですが、A氏側に迷惑をかけたくないという気持ちの方が強いですね」と紀子さん。

お互いに浮気を公認している夫婦

そして、そこからずっと夫とはレスのまま。セカンドパートナーであるA氏との関係も継続中。よくそんなに器用に秘密の交際を続けられますね! と尋ねると、「うちはある意味、公だから。A氏との交際も夫の協力があってこそなんです」と語る紀子さん。夫は女性をコロコロ変えているのかもしれないけれど、紀子さんはずっとA氏と交際を続けているといいます。

「私がA氏に会いたいときは『出張がある』といって家を出るんです。すると夫が仕事を調整して子どもを見ていてくれます。逆に、夫に『夜勤がある』と言われたら、私がその期間は仕事を調整してなるべく早く家に帰るようにもします」そうやってお互いセカンドパートナーがいることは公認状態なのだとか。

「そして子どもの前では、仲のいいパパとママを演じています。しらじらしいなと思うけれど、それで家が円滑にまわって、みんながストレスなく暮らせているんです」

ぶっ飛んでいるけれど、今がいちばん安定しています

もともと世の中には、一途な人と浮気をする人の2種類の人間がいて、自分は一途なほうだと思っていた紀子さんでしたが、気がつけば、自分自身も浮気をする側の人になってしまっていました。

「セカンドパートナーのA氏がいるから、私の心は救われました。そして夫に対しても、『一緒にいて楽しいな、ラクだな』という出会った頃の気持ちがいい意味で蘇っています。みんなから『すぐに別れる』と言われ続けていた私たちの結婚生活ですが、今年で15年目。本音を言えば、悔しくて意地になっていたのかも。まだ老後のことは考えられないし、傍から見たらすごく奇妙な夫婦関係なのかもしれないけれど、一度きりしかない人生。もう自分に嘘はつきたくない。ぶっ飛んだ状態であることは自覚してますが、今がいちばん安定していますね。この関係を私から壊すことはしないと思います」