年齢とともに感じる体力の低下や見た目の変化。女性は更年期に不快な症状に悩まされることも。暮らしにまつわる著書やエッセイを多数手がけている編集者・ライターの一田憲子さんは、そんなさまざまな不調とどのように向き合っているのでしょうか? 詳しくお聞きしました。

不調や衰えに備えて、食生活も見直しを

――更年期、困った症状を感じましたか?

一田さん(以下、一田):私の場合は50代半ばに差しかかったとき、困ったのがホットフラッシュです。取材先に着いたら汗がバーッと出て、周囲に「大丈夫ですか?」と心配されることもしょっちゅう。そのほかにものどの詰まりを感じたり、ときどき皮膚がかゆくなったり。そのときは、「わー、これが更年期かぁ」と思いましたが、時間とともに次第に症状は落ち着いていきました。

 

――食生活では、女性イソフラボンに似た働きをすると言われている大豆イソフラボンを含む豆乳ヨーグルトや煮豆を積極的に摂取するようになったとか。ほかにも続けている食習慣はありますか?

一田:腸活としてクエン酸たっぷりの黒麹甘酒を毎日スプーン1杯摂る習慣を続けています。そのおかげか、便秘気味だったお通じもスムーズになったような気がします。

あと、私は炭水化物を摂りすぎちゃうと眠くなるので、朝はフルーツがメイン。その代わり、昼は好きなものを食べています。お気に入りのお店から取り寄せたパンとスープ、そして豆乳ヨーグルトに自分でつくったフルーツのコンポートを添えて。今の季節はリンゴのコンポートがお気に入りです。昼は大好きなものばかりそろえるので、それこそ365日同じメニューでもいいくらい。

こんなふうに、いろいろ繰り返すなかで自分の生活と体にピタッと合うものを食べています。

仕事以外の楽しみのために始めたテニスで体力アップ

――一田さんが習慣として取り組んでいるのが、およそ4年前から始めたテニス。中学・高校・大学と続けてきたテニスを50代で再開した理由は?

一田:私は仕事が大好きな人間なのですが、あるとき話を聞いてもらった心理カウンセラーの方に「一田さん、24時間365日仕事のことばっかり考えていると、仕事がなくなったらポキッと折れてしまうかもよ」と指摘されて、仕事以外に夢中になれるものを探したんです。で、思いついたのが学生時代にやっていたテニス。最初は全然できない自分が悔しくて。筋肉痛は1か月も続くし。パーソナルのコーチまでつけて夢中に練習をしていたら、いつの間にか体力もついて。おかげで夜はぐっすり眠れています。

 

――健康的な生活ですね。ただ、一田さんのように運動習慣がない人にとって、なかなか体を動かすのは難しいようです。運動は体にいいと分かっているのですが…。

一田:取材で会ったガラス作家さんがヨガをやってたんです。「ヨガってメンタル的にもいいんだよ」って聞いて興味を持ったのですが、私ね、めちゃくちゃ体が硬いんです。「ヨガなんて無理〜」って思っていたのですが、ヨガをすすめてくれた方の「ずっとやってたら絶対やわらかくなるから」という言葉を信じ、週1でヨガ教室に通って、家でもストレッチをして。そしたらね、こうやって長座をして腕を伸ばして…手で足をつかめなかったんですけど、ほらね! 今はなんとかできるようになったでしょ?
(と、その場でお披露目してくれる一田さん)。

歳を取るとできないことが増えてくるけど、1日1個ずつやってきたことができるようになると、「歳をとっても続ければできるじゃん!」って思えてうれしくなるの。

 

――著書にある「がんばればなんでもできる」と思っていたけど、歳をとるほどに弱さや限界を発見する。「ままならぬこと」があるからこそ「今日できること」が一層ありがたく感じられる、そんな一田さんの言葉も印象的でした。

一田:若いときは心や体がカチコチになっていても気力や体力で乗り切れたし、熱が出ようが、がんばれたのだけど、今は体の声を無視するととんでもない見返りがあるから、自分でも工夫しなくちゃしょうがなくなってきてますよね。若い頃はずーっとエンジンをふかし続けてきたけど、それをずっとやっていると疲れてくるしね。

見た目のジェンダーレス化を救うのは、かわいいブラウス

――年齢を重ねると、自分のなかの女子度が減ってくるような…。一田さんがハマっている、フリルやギャザーがついた、かわいいブラウスにときめきます。

一田:シンプルでコンサバな服を着ると、地味に見えることが増えたんです。若いときは鎖骨にもハリあるから襟ぐりが開いたカットソーもおしゃれに着こなせたんですけど、それがどんどん似合わなくなってきて。この歳で着ると、まるで部屋着やパジャマ!

これまではボタンダウンのようなメンズライクな服が好きだったんですが、そういうのを着るとおじさんになるんですよ。見た目もジェンダーレス化してくるんでしょうね。だからフリルやギャザーがたっぷり入った、ちょっと甘めのブラウスをよく着ています。アイロンをかけて生地をパリッとさせると、気持ちまで違いますよ。

 

――おじさんはおばさんに、おばさんはおじさんに見えてくるような…。確かに、見た目のジェンダーレス化は進みそうですね。ただ、今の自分を客観視することって、歳をとってくるとなかなか難しい。似合わない服が増えてくることに気づかないし、更新もできない部分も出てきます。

一田:なかなか指摘してくれる人もいないですしね。私は、取材を受けるなど、自分を客観視する機会で気づくことが多いので、インスタにアップしなくてもいいから自分の姿を写真や動画で撮影するのはいい方法かな、と思います。お気に入りのセーターがすごく太って見えるんだな、など頭の中に描いていた自分と違うことに気づくきっかけになるかもしれませんね。

おいしいパンを添えたランチセット、仕事を忘れて夢中になれるテニス、真っ白な甘いブラウス…お気に入りに囲まれたささやかな暮らしが、一田さんの心を健やかにしているのかもしれません。