男の子を育てる際に気になりがちなのが、“散らかしっぱなし”に、“ぼんやり癖”。何度言っても改善されないものですが、「散らかしもぼんやりも男の子の脳を育てるうえでは必要な行為」と語るのは、脳科学者の黒川伊保子さんです。そんな黒川さんに、脳科学的視点からみた息子を育てるコツを教えてもらいました。

男の子は“散らかしっぱなし”でなぜ平気なの?

脳には、同時にできないことが山ほどあります。でも、同時にできないなら、「とっさに、どちらを使うか」を決めておかないと身に危険が及ぶこともあります。

【画像】息子が“ぱなし男”に見える理由

「遠くを見る」と「近くを見る」は、二者択一です。男たちは、「遠くを見る」能力で、荒野を駆け、森を開拓し、闘って家族を守り、子孫を残してきました。数学や物理学の新発見を重ね、橋を架け、ビルを建て、宇宙にも飛び立つ。しかし「近くが手薄」なので、優秀な男性脳ほど、家のなかでは役立たずな感じが漂ってしまうのです。

脳が子育てモードで「一生で最も気が利く状態」になっている母脳としては、気になってしょうがありません。ですが、「近くを注視して、先へ先へ気が利く」脳の使い方を強制すると、無邪気に「遠く」が見られなくなります。

あちらを立てれば、こちらが立たず。これが、脳の正体=感性領域の特性です。欠点をゼロにしようとすると、長所が弱体化します。息子の脳に、男性脳らしさを根づかせたいなら、弱点も呑み込むしかありません。

息子の「ぼんやり」と「ぱなし」を許しましょう。

“ぼんやり”は能力を高めるために必要な時間

子どもの小脳を育てる上で重要なのが、なんと「ぼんやり」なのです。「外遊び」や「内遊び」で刺激を受けた脳は、その入力(経験値)を咀嚼してセンスに変える必要があります。内なる世界観を構築して、発見や発想の能力を高めるためです。

脳内を整理する間、外界からいったん脳を遮断する。それが、眠りの正体です。眠りは、体を休めると同時に、脳の進化の時間でもあります。センスを作り出し、記憶を定着させるのです。受験生の母が邁進すべきは、いかに勉強させるかではなく、「短い持ち時間で、いかに効率よく寝かせるか」です。

そして、起きている間にも、脳が必要性を感じたら、「外界から脳を遮断し、脳を進化させる」モードに入ることがあります。それが、はたから見たら、「ぼんやり」に見えます。

小脳の成長が著しい8歳までの男の子は、この時間が頻繁に訪れます。脳が、眠りを待てないのです。のちに理系やアートの領域で才覚を表す女の子にもこの傾向が出ることがあります。ぼんやりは、脳が必要な時間です。そっとしておきましょう。