「メイクを選ぶたのしみ」が増えることは、小さくて大きな喜びだ。|前田エマの、日々のモノ選び。#3

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30代という年齢は、“モノを選ぶ眼”が育ち養われてくる年齢ではないだろうか?流行りものやブランドものではなく、自分が心地いいモノを選びたい。生産の背景を知り好きになるモノだったり、多少値が張っても人生をかけて大切にしたいと思えるモノだったり…。そういった視点でモノを選ぶ前田エマさんが、ご自身の私物とともに「モノの選び方」について綴る連載です。第3回目は、草場妙子さんと一緒にリップメイクについて考えました。

メイクに苦手意識があったのは、“正解”や“流行”に合わせなくてはならないと勘違いしていたからだ。

幼い頃から雑誌を読むのが大好きだった私は、その中で繰り返される「今、流行りの〇〇メイク」「もう間違えない!基本のメイク」「愛されモテメイク」などの文字を見るたびに、違和感のようなものを感じていた。

流行りなんてどうでもいいから、自分が好きなものを身につけたい。他人から気に入られるよりも、自分のご機嫌をとりたい。そう考える私にとって、自分とは遠い世界のもののように思えた。

大学を卒業してすぐにモデル事務所に入ったので、社会人の礼儀としての「とりあえずのメイク」をしなくて済んだのは良かったが、20代後半になると「すっぴん」というよりも、「メイクをする時間がなかっただけの、だらしのない人」に見えることも増えていった。いくらおしゃれをしても顔だけ置いてけぼりで、服と顔が似合っていないと感じることもあった。

そんなときに出会ったのが、ヘアメイクアップアーティストの草場妙子さんの著書『TODAY’S MAKE-UP』だった。この一冊が、大袈裟でなく私の人生を変えた。

本の最初には、まずこんなことが書いてあった。・メイクもファッションの一部。服とコーディネートする。・まずは3本のリップを用意し、服に合わせて変えてみること。

これなら私にもできそうだと思えた。

本の中では最初の3本として・ブラウン・赤・ベージュが推されていた。

実際にやってみると、服の雰囲気をリップで変化させることができたり、その日の気分に寄り添った自分の顔を作れた。3つの選択肢があるだけで、服を着るたのしさが何倍にも増えた。

草場妙子さんとエマさんが持ち寄った3本のリップでメイク

今回は草場さんと私がそれぞれ、服に合わせて3本のリップを持ち寄った。テクスチャーや色味の違いで、だいぶ質感や雰囲気が異なる。その楽しさを感じてもらえたらうれしい。

ブラウンのリップ

黒い服には真っ赤なリップを合わせても、迫力があり素敵だろう。しかし、草場さんも私もブラウン一択だった。肌馴染みが良い色なので、服の邪魔をしない。それでいてお洒落な雰囲気を感じさせてくれるので、実はとても便利な色だ。

私が選んだのは〈ライキー〉のスムースフィットリップスティック 02 オールモイスト。オレンジ系のこっくりとした色で、少しマットな質感。元気な印象も感じられ、今の気分に合っている。

〈ライキー〉 スムースフィットリップスティック 02 オールモイスト/2,079円(私物)

草場さんが選ばれたのは〈ボビイブラウン〉のクラッシュド オイル インフューズド グロス07。グロスなので、光沢のあるツヤっとした質感。複雑な色味も合間って大人っぽさを感じる。ちょっとした特別感が演出できる。

〈ボビイブラウン〉 クラッシュド オイル インフューズド グロス07/5,280円(私物)

赤のリップ

赤リップはデニムやTシャツなど、カジュアルなスタイルに合わせるのが好きだ。草場さんも「女っぽさというよりもパンツが似合う感じの格好いい印象で」と、本の中で書かれている。赤リップが無条件に持っている“色っぽさ”を、セクシーな方向に使うのではなく、エレガントさを付け足して服とのバランスをとっていくような感覚。

私のチョイスは韓国で買った〈NEARBEY〉のRECHARGING LIP BALM ROSY。色付きのリップクリームで薄づきなので、塗り重ねるほどにはっきりとした赤になる。気楽に使えるので、今回のようなラフな格好の時の気分と相性がいいのではと思った。

〈NEARBEY〉 RECHARGING LIP BALM ROSY(私物)

一方、草場さんは深みのあるはっきりとした赤を選ばれた。〈ボビイブラウン〉のクラッシュドリップ カラー クランベリー06。塗った瞬間に顔がはっきりとし、唇に視線が集まる。このリップは付け心地の軽いソフトマットタイプで唇をべったりと被う感じがなく、赤をカジュアルダウンさせるのにぴったりの質感。

前田エマの、日々のモノ選び。#3〈ボビイブラウン〉 クラッシュドリップ カラー クランベリー06/5,280円(私物)

ピンクのリップとイエローのリップ

最後の一本は、服に似合うと思うものをそれぞれ選んだ。草場さんの本ではベージュが推されていたのだが、私にとってベージュリップは大人っぽいイメージが強く、まだ手が出せない。なので今回は“主張しすぎないピンク”を選んでみた。〈資生堂〉のリップライナーインクデュオ Mauve/03はペンシルタイプなので、リップラインが細かく描ける。ペンの反対側には透明なプライマーが付いていて、唇を綺麗に魅せることに特化した一本だ。

〈資生堂〉 リップライナーインクデュオ Mauve/03/2,860円

草場さんは、なんと黄色いリップを選ばれた!〈セルヴォーク〉のアラウズリップス02だ。塗ると唇の色と混ざり合い、黄色が変に浮いたりせず、悪目立ちしない。唇の上に色の層ができて、光のあたる位置によって色味が変わる。とにかく驚きにあふれた一本で、たのしい。

〈セルヴォーク〉 アラウズリップス02/2,970円(私物)

どちらも派手な色ではないが、しっかりと存在感を放つので、少し個性的な服にも合うような気がする。草場さんの選ばれた黄色のリップは、意外なことにナチュラルな雰囲気。今回の撮影でいちばん気に入った。

日々の中で、こんなふうに「メイクを選ぶたのしみ」が増えたこと。それは小さくて大きな喜びだ。

前田エマ

1992年神奈川県生まれ。東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーの留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティなど幅広く活動。アート、映画、本にまつわるエッセイを雑誌やWEBで寄稿している。2022年、初の小説集『動物になる日』(ミシマ社)を上梓。Instagram

草場妙子 ヘアメイクアップアーティスト

くさば・たえこ/熊本県出身。雑誌や広告、CMなどでモデルや女優のヘアメイクを手がける。著書に『TODAY'S MAKE-UP 今日のメイクは?』(アノニマ・スタジオ刊)。コスメブランドOSAJI とのコラボレーションアイテム「kokyu」シリーズが好評発売中。日々の探求で出会ったおすすめコスメアイテムを紹介しているインスタグラム(@kusabataeko)も人気。2024年2月からプライベートメイクアップサロン「WEEKEND MAKEUP ROOM 」をオープン。HP

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