「正直、収穫はなかったんじゃないの、何にも」 代わり映えのない日本に久保竜彦が入れた愛の鞭
ドラゴン久保のアジアカップ・日本―イラン戦分析第3回
サッカーのアジアカップ・カタール大会は3日、準々決勝で世界ランク17位の日本代表は同21位イランに1-2で敗れ、8強敗退となった。同点で迎えた後半アディショナルタイムにPKで決勝点を献上。アジア王者奪還はならなかった。2022年のワールドカップ(W杯)カタール大会で独自の解説がひそかに話題となった元日本代表FW久保竜彦が今大会も東京・中目黒のTHE ANSWER編集部に来訪し、試合を分析した。全3回の第3回。優勝を期待した大会は8強に終わり、全5試合を総括したドラゴン。「正直、収穫はなかったんじゃないの」の愛の鞭を入れ、8強以上を目指す次回26年W杯に向けて森保ジャパンにエールを送った。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
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日本はちょっと疲れもあったんやろね。遠藤もそうやし。あれだけこられると、やっぱミスはないけど、ちょっと遅れたりとかっていうのもあったもんね。優位に立ってる時間が、後半なんか特に全然なかったから。遠藤はめっちゃきつかったと思うよ。遠藤とか、ボランチは。
優勝を期待しとったけど、これで日本もアジアカップは終わりか。
これだけ楽しみに見れるっていうのは森保さんが監督やけん。(コーチに)下田さん、名波さんもおるし。でも、変わっていかなあかんけどね。どうやって育てるのかとか。育てるのか、また(新たなメンバーを)選んでいくのか。
だんだん良くなったていった選手は、上田がちょっとあったけど、あとは代わり映えせんよね。
毎熊がちょっと慣れてきたくらいで。鈴木が良くなっていったかって言ったらまだまだ。(森保監督も)悔しいと思うよね。収穫はなかったんじゃない、何にも。それはもうしょうがない。大会まで好調だったけど、監督は絶対変わらずにやる人やし、妥協はせんかったと思う。
ただ、もう選手たちはチームに帰ってやるだけ。何もできんかったってみんな思ってるはずだからね、上田にしても。毎熊はこのままでいいのかみたいに思っとるやろうし、日本(Jリーグ)でやっとってね。ひょっとしたら、そういうのが大会の収穫なのかもしれんよね。
今も記憶に残る現役時代の「ひどい負け」
俺も現役時代にひどい負けがあったよ。
一番は広島の時にジュビロにボール触れんで負けた時かな。ドゥンガ、スキラッチおって。高原、中山さん、藤田さん、すごい時よ。びっくりした。日本代表でフランスとやった時なんかも絶望したけど。怪獣とやっとるみたいやったもんね。
はーって思ったよね。(気持ちが)下がりすぎてね、何もできんじゃけえ。でも、それが(その後のキャリアに)生きたのかはわからんね。次のW杯はどうやるんやろ。遠藤の年齢(次回大会は33歳)もあるし、どうなるのか。難しいね。でもそういうもんやね、サッカーは。
ドキドキしたけどね、今日は悪い意味でドキドキした。しょうがない。伊東がいないのも痛かったよね。
上田はどんなFWになるかなっちゅうのは楽しみやし。2列目はたくさんおるし、毎熊も楽しみよね。今日はキツそうやったけど、ずっと続けて出るもんね。ただ、毎熊はやっぱ伸びそうな気がするよね。何か勘がいいよね。そんな感じがする。
今大会、楽しかったよ。サッカーはみんなで観るとね。
決勝、優勝して朝まで飲みたかったけどね。悔しいこともないとね、つまらんから。いいことばかりじゃなくてね。でも(観戦しながら)酒、飲みすぎやったな。もうすぐ、W杯のアジア予選があるんやろ。楽しみよ、また日本を応援するよ。
■久保 竜彦 / Tatsuhiko Kubo
1976年6月18日生まれ。福岡・筑前町。筑陽学園高を経て、1995年に広島加入。森保監督(当時選手)とは7シーズンプレーした。2003年に横浜F・マリノスに移籍し、リーグ連覇に貢献。1998年に日本代表デビュー。ジーコジャパンとなった2003年以降は日本人離れした身体能力と強烈な左足でエースとして活躍したが、腰や膝など度重なる怪我により、2006年のW杯ドイツ大会は落選。以降、横浜FC、広島などを渡り歩き、2014年に引退。J1はリーグ戦通算276試合94得点。日本代表は国際Aマッチ通算32試合11得点。引退後は山口・光市に移り住み、コーヒー焙煎や塩作りなど、異色のセカンドキャリアを歩む。今月、初孫が誕生予定。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)