「追加費用を払ってでも欲しい」 ラグジュアリー の調達スペシャリストを利用する人々が増加中:Luxury Briefing

キャメロン・ディアス氏は、追加費用を払ってでも入手困難なラグジュアリーファッションを手に入れたいと思っているが、同じように考えている人々はほかにもいる。
「このサンダルがどうしてもほしかったんだけど、どこにも売ってなかった」と、ディアス氏はポッドキャスト『リップスティック・オン・ザ・リム(Lipstick on the Rim)』の12月19日のエピソードで語っている。「そうしたら女友達が『あなたのためにサンダルを見つけられる人を知ってる』って。仲介手数料がかかることや、そういうビジネスだということも全然知らなかったんだけど、『じゃあお願いする』となった」。
その番組の共同司会者であるエメシャ・ゴームリー氏は、その人物こそ、LAを拠点とする調達スペシャリストのガブ・ウォーラー氏だと推測した。「世界中のショップ関係者」を知っているというウォーラー氏の評判が高まっているというのがその根拠だったが、ゴームリー氏が正しかった可能性は高い。
顧客にとって「価格よりも欲望が勝る」
元ファッションスタイリストのウォーラー氏は、オーストラリアからLAを訪れ、米国ではラグジュアリー商品が比較的入手しやすいことを実感した後、2018年に自身の名を冠したファッション調達ビジネスを立ち上げた。現在、ガブ・ウォーラー(Gab Waller)の従業員数は、ウォーラー氏を含めて15名、グローバルクライアント数は6000人である。平均注文額は2000ドル(約29万円)だが、これまでに2万5000ドル(約364万円)のスキャパレリ(Schiaparelli)のクチュールコートや4万ドル(約583万円)のルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のヴィンテージのジュエリーケースなど、高額の商品を調達したこともある。ウォーラー氏の手数料は、1点につき一律220ドル(約3万2000円)だ。
同社の顧客にとって「価格よりも欲望が勝る」のだとウォーラー氏は言う。一貫して前年比で「大きな成長」を遂げているウォーラー氏のビジネスには、インフレやブランドの最近の値上げはまったく影響していないという。
ラグジュアリー市場の状況を反映する調達ビジネス
ガブ・ウォーラーは、インスタグラムの黎明期から台頭してきたラグジュアリー調達ビジネスや小売サービスという、拡大する業態に属する一社である。利便性、スピード、ワンランク上のカスタマーサービスを売りにしている、主にソーシャルメディアをベースにしたビジネスは、Google検索でうまくいかなかった場合の代替案となることが多い。そのサービスやプロセスは、インフルエンサーの影響力の大きさや、進化する独占性の状態など、ラグジュアリー市場の状況を反映している。このビジネスの存在自体が、ラグジュアリーに対する継続的な需要と、第一次産業が顧客のいる場所で顧客に対応できていない点の両方を物語っている。
2012年に創業したエリートUSA(EliteUSA)は、100人近くのグローバル従業員を抱え、新しいスタイルを独占的に調達している。またラグジュアリー小売業者も特典として調達サービスを始めている。ファーフェッチ(Farfetch)は2022年後半、年間に最低1万2000ドル(約175万円)以上を消費する同社のプライベートクライアント(Private Client)の顧客全員にファーフェッチ・コンシェルジュ(Farfetch Concierge)を開始した。
ビジネスは主にインスタグラムのDM経由
消費力の低いZ世代がラグジュアリーカテゴリーを受け入れるようになるにつれて、調達ビジネスは中古スタイルを含む方向に焦点を拡大したり、再販に特化したビジネスを立ち上げたりしている。たとえば、ウォーラー氏のビジネスの2割は、何シーズンか前のスタイルが占めている。そして2020年、オーストラリアを拠点とする法学部の学生アラナ・クズ氏が、ルイ・ヴィトンのヴェルニポシェット(Vernis Pochette)を紹介したインスタグラムの投稿をきっかけに、ヴィンテージのハンドバッグに特化したル・リミテ(Le Limité)を立ち上げている。
クズ氏によると、2021年、スウェーデン在住のインフルエンサー、マチルダ・ジャーフ氏(インスタグラムのフォロワー数310万人)にルイ・ヴィトンのバッグ、クロワッサン(Croissant)をプレゼントしたことで、ル・リミテの「すべてが変わった」という。ジャーフ氏がそのバッグを紹介するルックをタグ付けして投稿した後、ル・リミテにはこのスタイルの注文が100件入った。
クズ氏が独占的に運営しているル・リミテは、世界的なヴィンテージキュレーターやサプライヤーを活用し、通常24時間以内にリクエストされたバッグを見つける。調達手数料は160豪ドル(約約1万5500円)で、主にZ世代の買い物客に販売している。クズ氏は売上高については明らかにしなかったが、同社の収益は「レアなヴィンテージアイテムの需要の高まりを反映している」と述べた。クズ氏は近々、初めて人材を雇用して同社の主要な顧客コミュニケーションチャネルであるインスタグラムのDMの管理をサポートしてもらう予定だ。
同様に、ガブ・ウォーラーのビジネスの9割は、13万7000人のフォロワーがいるインスタグラムのDMを通じて行われている。残りの1割はeメール経由だ。ウォーラー氏はクライアントに対して、探している商品のスクリーンショットを送るよう求めているが、最近ではTikTokからの写真を目にする機会が増えているという。2022年1月、同社はブランド認知のためにTikTokのアカウントを立ち上げ、その後、このプラットフォームに特化したコンテンツに注力するために2名を採用した。
ブランドとの関係性
ウォーラー氏によると、最近韓国で採用した社員1名を含む10人で構成されるグローバル調達チームは、通常24時間から48時間でアイテムを見つけるという。ブランドから直接仕入れることがもっとも多いが、「5つの重要な情報源」にも大きく頼っている。クライアントがよく探しているのは「逃がしたアイテム」や最近完売したスタイルだ。そしてそれらはたいてい、ブランドに返品できないマルチブランドのブティックの倉庫で見つけることができる。ガブ・ウォーラーにとって最大かつもっとも急成長している市場は米国で、オーストラリア、中東、ニュージーランド、ヨーロッパ、英国がそれに続く。
創業12年のエリートUSAもまたインスタグラムで誕生した企業だが、現在はWhatsAppに顧客を誘導している。同社は差別化のカギはブランドとの関係にあるという。販売責任者であるディアナ・エルゼイン氏は、「いくつかの」ブランドを除いて、ブランドから直接仕入れていると語った。同社のチームが出席するラグジュアリーファッションのショーやショールームのアポイントへのアクセスもコンテンツを通じて顧客に提供している。
「エルメス(Hermès)がどこかと提携することはないだろう」とエルゼイン氏は言う。「この種のビジネスソリューションを単に採用しない、あるいは決して参画することはないメゾンがいくつかある」。それに関してウォーラー氏も、エルメスのバーキン(Birkin)とケリー(Kelly)バッグは新しいスタイルが入手困難で、中古のスタイルが極端な高値になっていることから、調達を行わない唯一のスタイルだと述べている。
いまはインフルエンサーに翻弄されている時代
エリートUSAは以前から積極的であることを自負しており、顧客の要望をただ待つのではなく、「次に流行る」と判断したスタイルを勧めることが多い。しかし、最近ではその能力の効果も薄れてきている。
「私たちはいま、インフルエンサーに翻弄されている」とエルゼイン氏は言う。「インフルエンサーが何を取り上げようとするのか、ブランドがインフルエンサーに何を与えて宣伝しようとしているのか、まったく見当がつかない」 。
この5年間、同社はラグジュアリーブランドが戦略を転換するのに合わせて、その波に乗ってきた。ラグジュアリー製品の需要が急増するにつれ、ブランドは大量生産を開始するか、生産を停止して独占性によって品位を維持するかという、ふたつの路線のいずれかを選択するようになったという。そのため、エリートUSAはいまでは大衆と競争するようになり、以前は障壁にならなかったウェイティングリストにも対応するようになった。エリートUSAが現在力を入れているのは、顧客に可能な限りベストプライスを提供することである。米国からパリに移住している最中のエルゼイン氏は、ユーロの強さを指摘した。
エル・アブドゥル氏が創業し所有するエリートUSAの注文納期は約1週間。その料金(配送料、手数料、パーソナルショッピング料)はさまざまである。
エリートUSAの買い物客の大半はミレニアル世代で、ヨーロッパ、中東、米国、アジアの女性が多いが、過去2年間でZ世代の買い物客が増えている。エリートUSAはインスタグラムとSnapchat(スナップチャット)に広告を出し、インフルエンサーとのパートナーシップに投資している。
調達専門家による業界の今後の予想
この記事にコメントを寄せたすべての調達専門家は、クチコミのマーケティングと好意的なカスタマーレビューの重要性に基づき、高度にパーソナライズされたサービスを提供することに重点を置いていると述べた。そして全員が、脅威と機会に注力しながら業界の変化を注視していると示唆している。
エルゼイン氏の予想では、シャネル(Chanel)のようなブランドが5桁の価格で買い物客を遠ざけているため、プラダ(Prada)、ミュウミュウ(Miu Miu)、ディオール(Dior)、アライア(Alaia)などのブランドの人気は今後も上昇し続ける。そして、より多くのチャネルで顧客にサービスを提供することが不可欠になるという。エリートUSAはまもなく、委託販売されるラグジュアリーアイテムを集めたショッパブルなウェブサイトをローンチする予定だ。ライブストリーミングショッピングのコンセプトも検討している。
一方、ウォーラー氏は、調達ツールとしてのAIに大きな可能性を見出しており、混雑したマルチブランドのeコマースサイトにおけるビジュアル検索ツールの有用性を指摘している。
再販を専門とする企業にとって、ブランドがアーカイブスタイルを再導入する脅威は考慮に値するが、クズ氏は心配はしていないと述べた。たとえばルイ・ヴィトンは1月初めに、ル・リミテの売れ筋である2002年のクロワッサン・スタイルの復刻版を含むLVリミックス・コレクション(LV Remix Collection)を発表した。「単にヴィンテージ(バージョン)の需要が増えたのは、特にZ世代市場向けに手頃な価格になったからだ」とクズ氏は述べた。
そして最後に全員が皆一様に、自分たちのような調達専門家の数が増えていることにも関心を寄せていると語っている。
[原文:Luxury Briefing: ‘Desire outweighs price’ as more shoppers tap luxury sourcers]
JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)
