第100回箱根駅伝では3区に配置された駒澤大の佐藤圭汰 Photo by SportsPressJP/AFLO

 箱根駅伝の区間エントリーが発表され、各校の10区間の顔触れが見えた。
 
 正々堂々とエースを顔出しするところがあれば、"当て馬"を出して、当日変更に含みを持たせているところもある。
 
 当日、どう選手が入れ変わるのか、興味はそこに集約されていく。
 
 この区間エントリーの前、エントリーメンバー16名が発表になった日の「監督トークバトル」には、駒澤大、青学大、中央大、國學院大、順天堂大が参列したが、その際、今回の目標で「総合優勝」を掲げたのは、駒澤大、青学大、中央大の3校だった。
 
ここに創価大が加わってきそうな気配はあるが、トークバトルで総合優勝を掲げた3校が今回の箱根駅伝をどう戦っていこうとしているのか。そして、青学大と中央大は、どう駒澤大を倒そうしているのか。 10区間の配置から読み解いていきたい。

【駒澤大学】
1区 白鳥哲汰(4年)、2区 鈴木芽吹(4年)、3区 佐藤圭汰(2年)、4区 小山翔也(1年)、5区 金子伊吹(4年)、6区 帰山郁大(2年)、7区 赤津勇進(4年)、8区 赤星雄斗(4年)、9区 花尾恭輔(4年)、10区 吉本真啓(3年)

 このオーダーでも十分戦えるだけのポテンシャルはあるが、補欠には安原太陽(4年)、篠原倖太朗(3年)、山川拓馬(2年)、伊藤蒼唯(2年)、庭瀬俊輝(3年)、小牧波亜斗(3年)が控えている。当日変更で4区、5区、6区、10区が変わりそうだが、「適材適所の配置ができれば優勝が近づいてくるんじゃないかなと考えています」と藤田敦史監督が語るように、鈴木、佐藤を隠さず、復路は4年生中心の自信のオーダーになっている。

【中央大学】
1区 溜池一太(2年)、2区 吉居大和(4年)、3区 中野翔大(4年)、4区 伊東夢翔(2年)、5区 山粼草太(1年)、6区 浦田優斗(3年)、7区 本間颯(1年)、8区 阿部陽樹(3年)、9区 山平伶生(3年)、10区 柴田大地(1年)

 湯浅仁(4年)、園木大斗(4年)、白川陽大(2年)、吉居駿恭(2年)、吉中祐太(2年)、佐藤蓮(1年)が補欠に回った。3区までは主力を投入し、ストップザ駒大を地で行く陣容だ。吉居の調子が気になるが、藤原正和監督曰く「復調している」とのことで、最後の箱根にしっかり合わせてくるだろう。

【青学大学】
1区 荒巻朋熙(2年)、2区 平松享祐(1年)、3区 小原響(4年)、4区 佐藤一世(4年)、5区 若林宏樹(3年)、6区 野村昭夢(3年)、7区 皆渡星七(2年)、8区 田中悠登(3年)、9区 倉本玄太(4年)、10区 宇田川瞬矢(2年)

 補欠には、松並昂勢(4年)、山内健登(4年)、太田蒼生(3年)、白石光星(3年)、黒田朝日(2年)、塩出翔太(2年)がいる。原監督がキーマンに挙げていたのは、佐藤一世と黒田だ。「佐藤は4年生になって初めて1年間、トレーニングをきちんと進めてきたので、期待しています。黒田は、箱根は大事なんですけど、箱根の山上りだけで終わってほしくない。彼には世界でも戦ってほしい』と語った。青学大も往路は駒澤大に一歩も引かない編成で勝負し、復路での決着をイメージしているようだ。

 現在、2冠を達成している駒澤大の強さについて、中央大の藤原監督が指摘していたのは、佐藤圭汰の存在だった。
 
「出雲、全日本もそうですけど、佐藤君がいることで非常にチームが安定していたなという印象です。いずれも2区に佐藤君がいたことが、駒澤大学が強さを発揮できた要因だと思っています」

 國學院大の前田康弘監督も同意見だ。
 
「ここまでの駅伝を見ていると佐藤君が(ゲーム)チェンジャーなんです。そこで着火して逃げるというのが、駒澤大のひとつの形になっています」

 ふたりの言葉にあるように佐藤は出雲と全日本で2区を駆け、ともに区間賞で一気にリードを広げ、ほぼゲームを決める役割を果たしていた。今回の箱根も2区の鈴木とのセットで後続との差を広げる、あるいは差を詰めてひっくり返す重要な役割を担っている。
 
 藤原監督は、走力と精神的な安心感をチームに与える佐藤の影響力の大きさを指摘していたが、これまでどおりの働きを考えると3区を含む3区間がひとつの勝負ポイントともいえる。
 
 実際、駒澤大を始め、各チームとも主力をずらりと並べてきた。

駒澤大 1区 白鳥、2区 鈴木、3区 佐藤
青学大 1区 荒巻、2区 平松、3区 小原 ※2区は黒田、3区は太田の可能性大
中央大 1区 溜池、2区 吉居、3区 中野

 こうして見ると、チームの意地とプライドをぶつけ合うガチンコ対決で、3チームともいかにこの3区間に力を入れているのかが見て取れる。特に青学大と中央大は、ここで駒澤大に先行されるわけにはいかないという姿勢が表われているかなり重厚なオーダーだ。
 
 ただ、この3チームが面白いのは、この3区間に重きを置きつつも、実は復路にも相当に厚い編成を敷いているということだ。

 藤田監督は、復路についてこう言及していた。
 
「往路が混戦になったとしても4年生がしっかりしているので、その4年生を復路でしっかり回すことができる布陣を組めるんじゃないかなと思っています」

 その言葉どおり、7区赤津、8区赤星、9区花尾という顔触れは、このまま往路でも行ける実力派揃いだ。力のある4年生をずらりと並べ、隙の無い駅伝が可能になっている。

 駒澤大の復路を見た他校は、相当な衝撃を受けたはずだ。
 
 このえげつない復路に対抗し、中央大と青学大も復路に重量級のオーダーを敷いている。
 
 藤原監督は、「総合優勝を成し遂げるためには復路をどうマネジメントするのかというのを大事にしていきたい」と語っていた。その狙いどおりの区間配置で、その象徴が8区の阿部の配置だろう。前回の箱根は5区3位で、戦略上重要な山の区間を担っていた。阿部の状態が万全ではないのかという読みも働くが、阿部が普通に走れるのであれば、彼を8区に置いたところに「復路でも駒澤大を逃がさない」という強い意志が読み取れる。
 
 原監督は、「往路で先頭に立ってレースをしたいですが、我々が圧倒的に逃げるという展開は可能性としては高くないので、復路を含めた10区間でマネジメントしていきたい」と語るように、往路は主力を投入しつつ、復路が強い青学大のスタイルを活かしていくオーダーになっている。箱根駅伝を連覇していた時も8区キラーの下田裕太が非常に効いていて、ここがゲームを決めるポイントになっていた。今回はその役割を田中が担うことになるが、ここから駒澤大と勝負になれば、青学大にとっては願ってもいない面白い展開になるだろう。
 
「うちは、これまでの駅伝で相手の背中を見ていない。後手に回った時、選手が少し変わってしまうということがあるかもしれない。そういう意味で駒澤大にいかに背中を見せるかをポイントとしてやってくると思うので、みなさん往路から仕掛けてくるんじゃないかなと思いますが、うちは負けません」

 そう語る藤田監督の表情には、余裕がある。
 
 3区の佐藤で先頭を行ければ、完璧なレースを展開できるだろうし、他校に先を行かれたとしても復路の4年生主体の強力なメンバーでひっくり返せる。そのための4年生主体の復路オーダーだ。どちらの展開に転んでも優勝を奪いにいく。チームを安定的に運営し、箱根制覇の準備を用意周到に行なう手腕、その深謀によって他大学を恐れさせる藤田監督の存在感はかなり大きい。
 
 駒澤大の2年連続3冠への執念を他大学は凌駕できるだろうか。