駒大スポーツ新聞×中大スポーツ 記者対談 前編(全2回)

箱根駅伝の第100回大会が2024年1月2〜3日に開催される。いよいよレースが目前に迫るなか、優勝候補と目される駒澤大と中央大の大学スポーツ新聞・陸上担当記者が対談。駒大スポーツ新聞(コマスポ)からは大塩希美さん、中大スポーツ(中スポ)からは遠藤潤さんが登場してくれた。前編では、両チームの戦力、注目選手、警戒している他大学について語り合う。


箱根駅伝を展望した中スポの遠藤潤さん(左)とコマスポの大塩希美さん

大塩希美(以下、大塩) 駒大スポーツで陸上班のチーフをしています、大塩希美と申します。よろしくお願いします。

遠藤潤(以下、遠藤) 中大スポーツの1年、陸上担当の遠藤潤と申します。こちらこそ、よろしくお願いします。

【中大は4年生と新戦力でバランス型】

ーー12月11日にはチームエントリーがあり、各チーム16人が登録されました。順当でしょうか?

大塩 駒大はだいたい順当だと思います。小牧波亜斗選手(3年)は強豪の洛南高(京都)出身ですが、ここまではあまり目立っていなかったので意外でした。前回10区の青柿響選手(4年)や1万m27分台の唐澤拓海選手(4年)がメンバー外だったのが印象的ですが、シーズンを通して見ると仕方なかったと思います。

遠藤 青柿選手はメンバーに入ってくると思っていました。結果を出してきた選手でも、少し調子が悪ければ16人に入れないということは、駒大の層の厚さも圧倒的だなと思いました。エントリーメンバーは他大からしたら脅威ですよ。

大塩 中大は、ずっと結果を残してきた4年生の3本柱に加えて、これまであまり聞いたことがなかった選手や1年生もけっこうメンバー入りしていますね。ラストイヤーの4年と新戦力がどのように融合して、私たちを倒しに来るのか......。

遠藤 はい。4年生の3本柱、吉居大和選手、湯浅仁選手、中野翔太選手をはじめ主力は順当かなと思います。個人的には、今まで未出走の4年が最後の年にエントリー入りして10区を走る印象があったので、4年の大澤健人選手が入ってくると予想していました。

 でも、上尾(シティ)ハーフマラソンでタイムを出せなかったので、藤原正和監督も厳しい判断をしたのでしょうね。1年生は思いきってメンバーに入れたっていう印象がありますが、各学年のバランスがいいように思います。

【駒大の選手層の厚さに「正直やばい」】

ーー11月25日の八王子ロングディスタンスには、両校とも主力が出場し、好記録が続出しました。

大塩 びっくりしました。レースが終わってファンが競技場にたくさん入ってきて選手を囲んでいて、必死に取材をしようとしていたら、「佐藤圭汰(2年)がU20日本記録(27分28秒50)だ」っていう声が聞こえてきました。初めての1万mで27分台というのもすごいのに、27分30秒を切ってU20日本記録ですから。しかも、日本歴代のトップ10にも入っている。

 すごい瞬間に立ち会ったんだな、としみじみ思いました。大八木弘明総監督は27分40秒ぐらいだと思っていたみたいなので、総監督の想像を超える走りでした。しかも、鈴木芽吹選手(4年)と篠原倖太朗選手(4年)も日本人学生歴代トップ5入りですからね。これは来たな、って思いました。

遠藤 正直やばいなって思いましたよ。「1万mのタイム=箱根の成績」ではないのはわかっているのですが、本当に手がつけられない状態になってきた。箱根のメンバーに27分台が3人いること自体がすごいことですが、他大には今まで以上にプレッシャーになると思います。もし3人が往路に起用されたら、王者は連覇に向けてガンガン突き進むのでは......。

 中大は、吉居大和選手と中野選手が八王子に出ていました。中野選手は途中で差し込みがあっても、あのタイム(28分25秒70)でまとめられたのはよかった。大和選手は一応、自己ベスト(28分01秒02)でした。走り終わったあとも余裕があったので27分台も出せたと思います。でも、記録を狙うのだったら駒大の3人についていくレースをしたはずなので、そういう点からも調整の一環で出場したレースだったはず。いいイメージを持って箱根に臨めるのではないでしょうか。

 駒大はハーフマラソンでも強かったですね。たとえば、63分台であれば、他の大学だったら「これで箱根のメンバーに入れる」と喜んでコメントをしているのに、駒大だと「やらかしてしまった」っていうコメントになる。上尾ハーフでは62分台が続出したのに、全然満足していないんですよね。これはちょっと考えられない。

大塩 そうなんです。上尾ハーフは、コマスポの校了日で私は行けなかったので、先輩に行ってもらったんですけど、グループLINEで共有されてきた藤田敦史監督のコメントも、勝ちきれなかったことに対して刺々しいものでした。

 庭瀬俊輝選手(3年)は転倒して血を流しながら走って8位入賞しました。そのひとつ前の7位には白鳥哲汰選手(4年)が入りましたが、「監督をニューヨークに連れていけませんでした」(※上尾ハーフで日本人1位、2位がニューヨークシティハーフマラソンに派遣される)と話していました。選手たちもやっぱり頂点を狙っていたんですよね。

 それでも、白鳥選手、庭瀬選手、安原太陽選手(4年)、花尾恭輔選手(4年)に続き、1年の小山翔也選手も初ハーフでぎりぎり62分台。全日本1区の赤津勇進選手(4年)が差し込み(脇腹の痛み)などがあって67分かかりましたけど、ここでちゃんと記録を残した選手たちが箱根のメンバーに入ってきました。唐澤選手が66分かかった一方で、花尾選手が復活したのも印象的でした。

【青学大の爆発力に厳重警戒】

ーー16人のチームエントリーを見て、他の大学で気になる点はありますか?

大塩 青山学院大ですね。主将の志貴勇斗選手(4年)、主力の鶴川正也選手(3年)が外れましたが、志貴選手は今季駅伝に出ていませんし、鶴川選手はケガをしているという情報を見かけたので、ふたりに関しては予想できました。でも、1年の鳥井健太選手は入っていなくて驚きました。出雲ではちょっとしくじりましたけど(5区10位)、世田谷246ハーフで優勝したので、箱根は走るのかなと思っていました。故障しちゃったのでしょうか。

遠藤 僕も、青学大の鳥井選手が一番驚きました。たしかに故障があったなら仕方ないですけど、選手層が厚いとはいえ、1回失敗しただけですし、1年で勢いのある選手なので、何があったんだろうと思いました。

大塩 青学大は、もちろん他の駅伝も強いですけど、箱根に合わせてくる力がすごい。前哨戦の出雲や全日本、各ハーフマラソンのレースで結果を残せていなくても、箱根にはバシッと10人がそろって優勝してしまう。そんな爆発力があります。もしかしたら今回はチーム的に納得いっていないところがあるのかな......。とはいえ、絶対に優勝争いにからんでくると思います。

遠藤 そうですね。青学大も駒大と同じように層が厚い。11月のMARCH対抗戦では自己ベスト率が圧倒的に高かった。あの日は寒くて、体が動かない選手も多かったのですが、そんななかでも、どんどん自己ベストを出していました。原晋監督もおっしゃっていましたが、4年前にも出雲5位、全日本2位ときて、箱根で優勝しています。箱根が近くにつれてどんどん調子が上がっているんだと思います。

大塩 駒大は三冠と連覇がかかっています。2年前は青学大に連覇を阻止されました。駒大の4連覇はだいぶ昔のことになってしまったので、今度こそ連覇をしたい。何連勝もするような、ずっと強い時代が来るように、中大、青学大に勝ちにいかないと!

遠藤 中大も負けません!

後編<箱根駅伝の駒澤大と中央大の区間オーダー&総合順位上位5校を両大学の学生記者が予想 2区は鈴木芽吹vs吉居大和となるか>を読む

【プロフィール】
大塩希美 おおしお・のぞみ 
駒澤大学GMS学部2年、駒大スポーツ新聞・陸上班チーフ。2003年、長野県生まれ。高校時代に陸上部マネージャーを経験。地元・長野の同じ地区では山川拓馬選手が活躍していた。佐藤圭汰選手の進学を知って、駒大を受験。「箱根駅伝の優勝時にコマスポの存在を知って、駒大に合格したら入部すると決めていました」。趣味は旅行と食べ歩き。

遠藤 潤 えんどう・じゅん 
中央大学法学部1年、中大スポーツ・陸上担当記者。2003年、埼玉県生まれ。中学・高校で陸上部に所属。高校時代は競歩で活躍したが、全国大会には届かなかった。「自分の力では全国で戦えませんでしたが、大学でも陸上に携わりたいと思い入部しました。選手が輝いている姿を伝えて感動や驚きを与えられたら」。趣味は、野球観戦、乃木坂46のライブ。