DeNAドラ1・度会隆輝の最大の武器は上昇気流を生み出す元気「見ている人たちを幸せに」
横浜DeNAベイスターズドラフト1位
度会隆輝インタビュー(後編)
前編:なぜ度会隆輝は3年前に語った目標を実現できたのかはこちら>>
横浜DeNAベイスターズからドラフト1位で入団する度会隆輝。活躍が期待されているルーキーへのインタビュー後編では、自らのストロングポイントや目標を聞いた。
ファンフェスティバルで堂々のマイクパフォーマンスを披露した度会隆輝 photo by Sankei Visual
度会の心強い援軍になってくれるのが、横浜高時代の同級生であり、来季プロ4年目となる松本隆之介だ。入団してから故障による手術などもあり、一時は育成契約になったが、今年の春に再び支配下登録された期待の投手である。身長188センチの大型左腕であり、この秋の宮崎フェニックスリーグでは好投を見せ、ブレイクが待たれている。
「松本とは常に連絡をとっていて、時間がある時は食事に行ったりして、プロ野球のことやベイスターズのことを聞いていました。ドラフトで指名された時も『めちゃくちゃうれしい!』ってLINEをくれて、すごく喜んでくれたんです。僕が言うのもなんですけど松本はポテンシャルの化け物ですし、高校を卒業した時よりもはるかに身体が大きくなっていました。仲のいい松本と一緒に野球ができるのは、モチベーションにもなりますし、ふたりでチームを優勝に導けるような活躍ができたら、お互い一番幸せだと思います」
ファンフェスやドリームマッチしかり、また松本の存在など、1月の新人合同自主トレが始まる前から、DeNAにすっかり馴染んでいる様子の度会を見ると、来るべくしてDeNAにやって来た選手だと思わずにはいられない。
そういえば10月1日のDeNAとENEOSの練習試合、度会はDeNAからの要望で、シートノックと実戦で、本職の外野ではなくサードの守備についている。DeNAは将来的に度会の内野での起用を視野に入れているようだが、本人としては内野に対しどのような見解を持っているのだろうか。
「外野手としては肩も強くなりましたし、この数年で成長した実感はありますが、サードのポジションも好きなんですよ。高校時代に守っていましたし、自信があるといっては言い過ぎですけど、普通かなとは思っています。ただ僕としては、行けと言われたところで、全力でプレーするだけです」
とくにアピールしたい部分は何かの問いに、度会は「やっぱり打撃ですね」と、きっぱりと言った。
「ミート力と、そのなかで長打を打てるのが自分のセールスポイントだと思っています。また走力もついてきているので、あとはそこをいかにして生かすことができるか。あっ、でも一番は"元気"なのかなって。自分が活躍して、元気を出すのが一番いいのでしょうが、仮に自分が打てなくても、先陣きって声を出してチームをいい空気にできたらと思っているんです。そうすれば、絶対いい試合になるっていうのは社会人でも経験していることなので」
DeNAには、プレーにおいてはもちろん、積極的な声出しでチームを鼓舞するキャプテンに就任した牧秀悟やベテランの大田泰示がいるが、ここに度会が加わると、ベンチはきっとさらに盛り上がるはずだ。
「すごい先輩たちが多いんで、今から本当に楽しみにしています」
ただでさえ明るいチームカラーのDeNAであるが、度会の加入で新たな風が吹き込み、さらなる上昇気流を生み出すのかもしれない。
【見ている人を幸せにしたい】あと、聞くまでもないと思ったが、アスリートとして大事な資質であるメンタル面ではどうなのだろうか。「強いですよね」と尋ねると度会は頷いた。
「はい、強い方だと思います。ただ逆に強すぎるがゆえに、張り切りすぎてしまうところもあるんで、そこだけは気をつけないと」
度会は苦笑したが、そこはしっかりと自己分析できているようだ。
憧れて、恋焦がれて、夢にまで見たプロ野球の世界。頭は低く、目は高く。理想を追い求め、それを実現する旅がいよいよ始まろうとしている。
「プロ野球って、僕の経験上、見ていただいている方々を幸せにできるスポーツだと思うんです。幸せになってもらうには、打つことはもちろん守備、走塁、そして声出しなどいろいろあると思うので、すべてで見ている人たちを幸せにしたいと考えています。また高校時代も社会人時代も感じていましたが、ファンの方々の温かい応援や声援というものが、どれほど選手たちの力になって、そして幸せな気持ちにさせてくれるか身をもって知っています。だから"幸せ"をファンの方々と僕たちで共有できるように、全力でプレーして行きたいと思います。頑張ります!」
幸せの伝道師とでもいうべきか。ルーキーに過度の期待は禁物だという意見もあるが、まだ何も始まってはいない今、度会のこの様子を目の当たりにしてしまうと、期待ばかりが膨らんでしまう。いずれにせよ最初の答えはシーズン開幕には出ることになるが、辛酸を舐めた経験のある利発な度会であれば、結果を示すことができなければ生き残れないことは重々承知しているはずだ。
澄み切った青空のような人間である度会が、果たしてドラ1のプレッシャーのなか、どのようにしてこの世界でサバイブしていくのか、注目の2024年シーズンになりそうだ。
度会隆輝(わたらい・りゅうき)/2002年10月4日、千葉県生まれ。兄の影響で野球を始め、小学校時代は船橋ボーイズ、東京北砂リトルでプレーし、6年時にヤクルトジュニアとしてNPBジュニアトーナメントに出場した。中学時代は佐倉シニアに所属、3年時にジャイアンツカップ優勝。侍ジャパンU−15代表でプレーし、アジアチャレンジマッチ2017でMVP受賞。横浜高では1年夏と2年春に甲子園出場。高校通算24本塁打。ENEOSでは入社1年目から日本選手権、都市対抗に出場。22年の都市対抗では打率.429、4本塁打、11打点で9年ぶり12度目の優勝に貢献し、橋戸賞、打撃賞、若獅子賞を受賞。23年のドラフトでDeNAから1位指名を受け入団した