ドッグスポーツダンス・大沢真衣香&ぽぽ インタビュー後編(全2回)

 ドッグトレーナーとして家庭犬の問題行動の改善やカウンセリングを行なっている大沢真衣香さん。白いふわふわの毛並みが愛くるしい愛犬・ぽぽ(日本スピッツ・オス・5才)を迎えてからは、人と犬とが音楽に合わせて踊る「ドッグスポーツダンス」に取り組んでいて、SNSでダンスやトリック(技)の動画を公開し、反響を呼んでいる。

 ドッグスポーツダンスを学ぶために、世界チャンピオンが住む群馬県前橋市への移住を決断。赤城山の麓の自然豊かな町で、ぽぽとの生活を楽しんでいる。12月24日に前橋市で開催される大会へ向けて練習に励む大沢さんに、ドッグスポーツダンスの魅力について聞いた。



ドッグスポーツダンスの魅力を発信している大沢真衣香さんと日本スピッツのぽぽ

【世界チャンピオンを追いかけて群馬へ】

ーードッグスポーツダンスを知ったきっかけは?

大沢真衣香さん(以下同) 東京動物専門学校で動物全般の行動学や動物看護を学んだのち、3〜4年ほど東京でドッグトレーナーとして働いていました。犬と関わる仕事をするなかで、犬に芸を教えるのがすごく好きでYouTubeで動画をよく見ていた時に、ドッグスポーツダンスという競技があることを知りました。いつか「犬を飼ったらやりたいな」と思っていました。

ーーぽぽちゃんとの出会いは?

 働いていた店舗に併設しているペットショップで出会いました。ひと目惚れです(笑)。他の日本スピッツもいたんですけど、ぽぽだけやけにかわいく見えて、タイプだったんです。毎日見に行っては「まだいるな、まだいるな」って。子どもの頃は一軒家じゃなかったので犬が飼えなくて、ずっと飼いたいと思っていました。ひとり暮らしを始めて、自分に自信がついたなというタイミングでぽぽを迎えました。それからぽぽとダンスの練習を始めました。


日本スピッツのぽぽ。ふだんはマイペース 写真/大沢さん提供


写真/大沢さん提供

ーー群馬県に移住したきっかけは?

 ずっと憧れているドックスポーツダンスの世界チャンピオンのルツカ(平井 プレボバ)さんが群馬にいることを知ってからです。私がドッグスポーツダンスのことを知ったのもルツカさんの動画がきっかけ。それからずっとルツカさんの動画を見ながら練習をしていました。2021年に横浜で開かれたイベントで始めてお話をして、その後も何回か大会でお会いしていたのですが、やっぱりもっと学びたい、直接学びたいなと思い、引っ越す決断しました。群馬には縁もゆかりもなくて、それまで一回も行ったことすらなかったんですけどね。


大沢さんのドッグスポーツダンスの師匠であるルツカ 平井 プレボバさん 写真/ルツカさん提供

 広い一戸建ての民家をすごく安い家賃で借りることができて、2022年1月に移住しました。東京にいる時から同棲をしていた、同じくドッグトレーナーの松岡(宰相さん)も「私がどうしても引っ越したい!」と言ったら賛成してくれて。現在はふたりで犬のしつけ教室「ぽぽハウス」を経営しています。

【体型管理も抜かりない、まさに"アスリートドッグ"】

ーー群馬に移住してよかったことは?

 犬にとっても私にとっても最高の環境ですね。自然がいっぱいですし、ぽぽもすごく生き生きしています。東京は散歩をするにも道が狭いですし、何か(文句を)言われてしまうこともありました。マンション住まいだったのでダンスの練習もなかなかできなくて。当時は小さい8畳ぐらいの部屋で練習していたので、いざ大会に出るとすごく広い会場の真んなかでちょこんと踊って終わっちゃったり(笑)。今は広い庭で思いっきり走らせています。


自然豊かな地でのびのびと散歩を楽しでいるという

ーーぽぽとは毎日どのような練習をしているのですか?

 トレーニングは毎日しているわけではなく、丸一日まったり過ごす休日もあれば、ボール遊びで体力をつける日、ダンスの練習の日など、その日によってメニューを変えています。ダンスの練習は1回15分ぐらいで、何回かに分けながらトータル1時間ほど行なっています。いろいろなトリックや動きの練習をして、最終的には1曲通してやってみるという感じです。今では、100個以上のトリックができるんですよ。

 ごはんにも気を遣っていて、たくさん運動する時は脂質やたんぱく質が多いものをあげています。また、水でふやかすとふくらんでしまうフードは運動して胃捻転になってしまうのが怖いので、なるべくふくらまないフードを使っています。毎日体を触って、太ってきたと思ったらごはんを減らしたり、逆にやせてきたら増やしたり。体型の管理もしっかりやっている、本当にアスリートドックなんです(笑)。


大沢さんの合図で多彩なトリックを繰り出すぽぽ

ーーInstagramにはぽぽちゃんのトリックの動画がたくさんアップされています。現在フォロワーは4.2万人もいますが、何か反響はありますか?

 日本スピッツを飼っている方からフォローされることが多くてすごくうれしいですね。この間、出場するドッグスポーツダンスのイベントの告知をしたら、いろんな県から日本スピッツが集まってくださって。会場で踊っていたら見えている景色が全部「白い!」みたいな感じでした(笑)。


大会でも上位成績を残している 写真/大沢さん提供

【海外で開催される大会の出場が目標】

ーー今、出場に向けて練習している大会はありますか?

 12月24日に前橋市で開催される「第5回スポットライトカップ&クリスマスカップ(Spot Light Cup & Christmas Cup)」に出場します。クリスマスカップはクリスマスソングと衣装で参加し、スポットライトカップは「ゾルバダンス」という曲を披露する予定です。大会に向けて構成はつくれたので、今は完璧にブラッシュアップさせている段階です。今回の大会には、しつけ教室に通ってくれている、一緒にダンスの練習をしてきた飼い主さんたち3組も初出場されます。


インタビュー中も仲良しの雰囲気がにじみ出るふたり

ーー試合に出る時はぽぽちゃんもいつもより気合いが入るんですか?

 ふだんのぽぽはけっこうマイペースなんですが、大会に出るとスイッチがオンになる感じがしますね。「今日はしっかり練習するぞ」っていう時も、もっと元気いっぱいになったり。ちなみに今日はちょっとオフでした(笑)。


取材日には紫のリボンをつけて出迎えてくれた


前脚を大沢さんの両足に乗せて一緒に歩くという驚きの技

ーードッグスポーツダンスを通して大沢さん自身の変化はありましたか?

 トレーナーとして経験を積んだということもあると思うんですけど、人とコミュニケーションをとることが増えて、話すことに自信がつきましたね。以前は家にいることのほうが全然多かったんですが、心も体もアクティブになりました。大会に出るにあたっては緊張感も乗り越えないといけないので、メンタルも強くなったと思います。

ーー最後に、今後の目標を教えてください。

 もっといろいろな曲で大会に出てみたいというのもありますし、もっとトリックを増やしたいというのもあります。今目指しているのが、もし韓国で大会が開かれたらそこに出ること。日本以外の(国の)大会に出ることを目指して練習していきたいです。


ぽぽとともに海外の大会出場も目指す大沢さん

終わり

前編<かわいい愛犬と社交ダンス!? アジアで広まる「ドッグスポーツダンス」の魅力を人気ペアが語る「しつけの延長にある感じです」>を読む


【プロフィール】
大沢真衣香 おおさわ・まいか 
1997年、千葉県生まれ。東京動物専門学校を卒業後、東京都内のドッグトレーナーとして働いたのち、2021年に群馬県前橋市へ移住。犬のしつけ専門「ぽぽハウス」を経営している。日本スピッツの愛犬・ぽぽと「ドッグスポーツダンス」に取り組んでいる。SNSでドッグスポーツダンスの楽しさを発信中。

ぽぽ 
日本スピッツの5才のオス。ペットショップで飼い主の大沢真衣香と出会う。大沢とともに「ドッグスポーツダンス」に挑戦しているアスリートドッグ。習得したトリック(技)は100個以上にもなる。ふだんはマイペースで、ぬいぐるみと遊ぶのが大好き。