"グランプリ"GI有馬記念(中山・芝2500m)が12月24日に行なわれる。

 当代の最強馬イクイノックスは、GIジャパンC(11月26日/東京・芝2400m)の圧勝を最後に現役引退、種牡馬入りとなった。そのため、この大一番への参戦はなくなってしまったが、GI馬8頭を含めてトップレベルの馬が集結。年末の"祭典"に相応しい豪華メンバーが顔をそろえた。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は6勝、2着1回、3着1回とかなり信頼度は高い。とはいえ、2015年にはゴールドシップが1番人気に推されながら8着と惨敗を喫し、2019年にも1番人気のアーモンドアイが9着と馬群に沈むなど、思わぬ番狂わせもしばしば起こっている。さらに、人気薄の激走も時に見られ、"冬のボーナスの倍増"が期待できる一戦でもある。

 さて、今年はどうか。

 人気を集めそうなのは、休み明けの前走ジャパンCを3着と好走したスターズオンアース(牝4歳)、今年の3歳クラシックで活躍したソールオリエンス(牡3歳)とタスティエーラ(牡3歳)、レジェンド武豊騎手を背に復活を期すドウデュース(牡4歳)、そしてこのレースでの引退を発表しているタイトルホルダー(牡5歳)あたり。それ以外にもGIで勝ち負けを演じてきた実力馬が何頭もおり、激戦ムードにある。

 そういう意味では、人気の盲点となる実力馬、力がありながら低評価の馬をきちんと見極め、それらが一発かませば、オイシイ配当をゲットできる可能性は大いにある。

 そうした状況にあって、デイリー馬三郎の木村拓人記者はこう語る。

「(有馬記念は)人気を集めそうな馬にしても、穴馬候補にしても、枠順が相当なウエイトを占めるレースであることは間違いありません。

 イクイノックスクラスであれば、大外を引いてもそこまでマイナスになるとは思いませんが、力が接近しているメンバー同士の戦いなら、実績がちょっと上でも外枠は不利になります。要するに、多少人気が低くても激走が期待できそうな馬が内枠に入ったら積極的に狙いたいですし、想定の段階では穴馬として注目していても外枠に入ったらその時点で消しです。

 今回の有馬記念は、明らかに混戦模様。だからこそ、枠順は重要になります。身も蓋もないですが、極端な話、馬で買うレースじゃなく、枠で買うレースです。

 と、考えていたら、買いたいと思っていたスターズオンアースやスルーセブンシーズ(牝5歳)がそろって外枠に。一方で、あまり内枠向きではないソールオリエンスが1枠1番に入って、一段と難しいレースになりました」

 それでも、木村記者は枠順を問わずに狙うつもりだった馬が1頭いるという。

「ディープボンド(牡6歳)です。同馬については、展開も込みで多少外枠でも買っていいと思っていましたが、3枠6番を引いてくれました。


有馬記念での大駆けが期待されるディープボンド。photo by Sankei Visual

 前走のジャパンC(10着)では、馬の感じはとてもよかったですよね。展開的にもパンサラッサ、タイトルホルダーがいて、タフな流れになって、この馬向きになると思ったんですけど、そもそも流れが速すぎて、追走に手一杯になってしまいました。

 ともあれ、タフさ比べになれば、有利なのは間違いありません。今回はパンサラッサが不在で、前に行くのが若干ピークを過ぎた感のあるタイトルホルダーなので、前回よりも追走はラクになるでしょうから、巻き返しが期待できます。

 また、前走の馬体減は(馬体的には)細く見えませんでしたけど、結果としてそれが響いたのかもしれません。ですので、(馬体重を)少しでも戻してくれば、チャンスはさらに増えるでしょう。

 有馬記念では、一昨年2着と好走歴があります。昨年は8着でしたが、大外枠でもあり、何より極悪馬場でのタフなレースとなったGI凱旋門賞(フランス・芝2400m)帰りだったこともあってか、パドックではあまりよく見えませんでした。

 年齢的にすごく落ちついたという感じもないですし、勝つまでは難しいとしても(馬券圏内の)一角に食い込むシーンは想像ができます。テン乗りになるトム・マーカンド騎手も腕っぷしが強いので、同馬には合うと思います」

 枠順決定を受けて、木村記者はもう1頭、気になる馬がいると言う。

「ホウオウエミーズ(牝6歳)です。2枠3番を引いたことで、昨年1枠2番を引いて13番人気ながら4着に入ったイズジョーノキセキを彷彿とさせます。そのイズジョーノキセキと直接対決した昨年のGIエリザベス女王杯(阪神・芝2200m)では、同馬に先着。そのことからも、大駆けの可能性を感じます。

 目下の出来もめちゃくちゃいいです。今年に入って、勝ち馬とのタイム差的には大崩れもありませんし、前走のGIII福島記念(11月12日/福島・芝2000m)では早めの仕掛けから押しきり勝ち。2着ダンディズムが後ろから迫ってきた時、これまでだったらかわされそうなところをしっかりと凌ぎました。明らかな地力強化を感じます。

 枠順的にも、距離適性を考えても、道中は前にソールオリエンスを見る形で、インをぴったり回る競馬になると思います。そのソールオリエンスはインを器用に立ち回れる馬ではないですから、勝負どころで外に張っていくと思うんですよね。そうすると、ホウオウエミーズにとってはおあつらえ向きに進路が開くことになります。

 ディープボンド以上に勝ち負けに加わってくるのは難しいと思いますが、3連系の馬券の"ヒモ穴"としては面白い存在になりますよ」

 現役最強馬の引退によって、馬券的な妙味が増したドリームレース。好配当を手にする夢を叶えてくれるのは、ここに挙げた2頭かもしれない。