レア・ビューティ(Rare Beauty)は、最初の製品を発売して今日のようなリキッドチークで押しも押されもせぬブランドとなる前、Zoomチャットを開催していた。パンデミックの最中、同ブランドはソーシャルリスニングデータに基づいて、エンゲージメントの高いコミュニティメンバーを参加者として招待した。そのグループの面々は、ひとつの共通の熱い関心のもとに、自分たちがほとんど知らないブランドの周りに集まってきた。それはレア・ビューティの創業者で、インスタグラムでもっともフォローされている女性、セレーナ・ゴメス氏である。

Zoomからスタートしたブランドコミュニティ



Zoomに参加した多くのメンバーはZ世代だった。レアの消費者マーケティング・バイスプレジデントのアシュリー・マーフィー氏は「もっとも孤独な世代のひとつ」と指摘する。その「レアチャット(Rare Chats)」では、「Netflixで一気見しているものから、リアリティ番組『90-day Fiancé』で起きたこと、メンタルヘルスのスティグマを取り除く方法にいたるまで」ありとあらゆることが話し合われたという。毎回Zoomが終わるたびに、ブランドはインスタグラムのグループDMに参加者を追加していった。マーフィー氏によれば、最終的にグループには50人以上が集まった。「DMは手に負えなくなり、管理するのが大変になった」。やがてブランドは、メンバーをグループチャットプラットフォームのジェニーバ(Geneva)に移行させ、そこで全米から集まった500人が連絡を取り合うようになった。「このスペースを安全で、歓迎されるプライベートな場にしたかった」とマーフィー氏は言う。そして今、そのコミュニティはさらに別の場所に移行している。それがTYBだ。この「遊んで稼ぐ」デジタルプラットフォームは、アウトドアボイシズ(Outdoor Voices)の創業者タイラー・ヘイニー氏によって昨年ローンチされた。レア・ビューティの640万人のインスタグラムを新しいコミュニティに招待する前に、同ブランドはジェニーバのグループに早期アクセスを与えている。

TYBでは、ユーザーは自分が参加しているすべてのコミュニティのウォレットを持っている。このウォレットには、たとえば、TikTokでブランドをタグ付けしたり、ブランドのチャットで挨拶したりすると獲得できるグッズやコインが保管される。ユーザーはコインを割引に変えることができる。現在、約50のブランドがTYBプラットフォームでコミュニティを主催している。トピカルズ(Topicals)が最初に参加し、デュー(Dieux)、ストラティアスキン(Stratia Skin)、ブレッドビューティサプライ(Bread Beauty Supply)、ループス(Loops)、セレモニア(Ceremonia)などが後に続いた。

ソーシャルネットワークにはない特典を提供



ヘイニー氏は、創業者として最初のベンチャー企業のアウトドアボイシズでコミュニティの重要性に気づいたという。アウトドアボイシズは多くの人が参加するコミュニティウォークやランで有名になった。アウトドアボイシズのアンバサダーは「新しい人々にブランドを紹介するもっとも貴重な手段」だとヘイニー氏は述べている。「(その)コミュニティを通じてブランドを知った人は、有料で獲得した人よりも4倍の価値があった」。この認識がTYBの基礎となっている。

レアに関しては、長年にわたってブランドのジェニーバグループに参加してきた488人がTYBに参加し、特典を利用し始めた。ブランドのコミュニティに長年参加してきたことへの報酬として、参加者には特別なデジタルコレクティブルが贈られた。それには「あなたはレア(You are rare)」と書かれ、ゴメス氏のサインが刻印されている。新メンバーが参加した際にもらえる最初のコレクティブルは、レアの「R」のロゴが入ったデジタルネックレスだ。また、レアのTYBコミュニティのメンバーは、入会時にrarebeauty.comで5ドル(約740円)の割引を受けることができる。

ヘイニー氏によると、TYBは有料でプラットフォームを利用するブランドに対してソーシャルネットワークにはない特典を提供している。それには直接のつながりだけでなく、コミュニティメンバーの購買履歴やブランドとのエンゲージメントに関するデータが含まれる。エンゲージメントのデータは、投稿されたレビューやソーシャルシェアから参加したIRLイベントや完了したオンラインチャレンジにいたるまで、多岐にわたる。

ヘイニー氏いわく、他のプラットフォームと比較してTYBのブランドは、平均して8倍のエンゲージメントを獲得している。さらにTYBメンバーからの購買頻度は非メンバーにくらべて2.2倍高く、生涯収益は23%高いという。

9月18日にジ・アウトセット(The Outset)がTYBでサービスを開始して以来、注文頻度が26%増加したとヘイニー氏は述べた。平均すると各ブランドで28%増加している。ジ・アウトセットはこのプラットフォーム上で「スキンサイダー(Skinsiders)」という約5000人のメンバーからなる活発なコミュニティを形成している。

「すでにオーディエンスがいるクリエイターやセレブブランドなどをターゲットにしている」とヘイニー氏は言う。

デジタルで規模を拡大する必要性



レアはIRLイベントへの参加意欲をさらに高めるなど、さまざまな形でTYBを利用する予定だ。「ある種のコレクティブルは、LAで開催されるリアルなイベントに参加しないと手に入らない。(ほかのアイテムは)バーチャルなレアチャットに参加しないと手に入らない」とマーフィー氏は語った。「もっともエキサイティングなことのひとつは、オムニチャネル体験をもたらすために、デジタルとリアルの両方でTYB(の要素)を実装できることだ」。

マーフィー氏によれば、TYBに参加する際、レアは「(既存の顧客と顧客の関係を)強化し続け、コミュニティとのつながりをさらに深め、最終的にブランドとの親和性をもたらすにはどうすればよいか?」という問いの答えを求めていた。「私たちは現在36カ国で販売している。だからこそデジタルで規模を拡大しなくてはならないのだ」。

[原文:Rare Beauty looks to Ty Haney’s TYB platform to scale its community]

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)