この記事をまとめると

■外国人観光客を中心に白タク行為が目立つようになってきた

■最近は専用アプリによるオンライン決済が横行しており警察も手を焼いている

■白タク行為への対策のひとつとしてライドシェアの解禁も検討されている

友達同士であっても日本での白タク行為は禁止されている

 報道によれば、成田空港から出発・到着する海外から訪日する人たちに対して、いわゆる白タク行為が最近目立つようになってきているという。

 白タク行為について、すでに十分な知識がある人もいると思うが、改めて解説すると乗用車をタクシーのように使い、お客から代金をもらうことを指す。こうした代金を伴う旅客運送は、タクシーやバスなど国から営業行為を認められた車両とドライバーのみが行うことができる。

 そのため、ナンバープレートが白色である乗用車でこうした行為を行うと、道路運送法における有償旅客運送にかかわる違反となる。

 白タク行為は、高度成長期やバブル期など、タクシーの供給が需要に追いつかない場合に横行したという歴史がある。

 それが2010年代以降に、海外からの訪日客が増えたことで、成田など国際線が離発着する国内空港で目立つようになったが、コロナ禍でやや下火になったはずだ。それが、新型コロナウイルスの影響が一時期に比べると収まる傾向となったことで、再び白タク行為が増加していることが考えられる。

 報道によれば、千葉県警は2023年1月に都内在住の男を道路運送法違反の容疑で逮捕している。だが、最近増えているのは白タクに対する料金を現金の授受ではなく、専用の配車アプリを通じたオンライン決済で行うケース。こうした事例で白タク行為を特定することは、現状では警察にとってハードルが高いという。

 そうはいっても、国は近年、交通を含めた様々な領域でDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に推進しているのだから、警察庁においても白タク対応の違法な配車アプリの実態調査を進めて、デジタル化された白タク行為の摘発に本気で取り組む姿勢を見せてほしいところだ。

ライドシェア解禁の前に違法行為の撲滅が必須だ

 一方で、これも報道によれば、成田空港での白タク行為への対策のひとつとして、いわゆるライドシェアの導入を検討するべきという声が、千葉県の幹部にあるとしている。ここでいうライドシェアとは、二種免許を取得していないドライバーが乗用車を使ってタクシーのような営業行為を可能にするビジネスモデルを指す。

 そう聞くと、ライドシェアは白タク行為を容認するようなことだと捉える人もいるかもしいれない。

 そうしたなか、大物政治家らからの「日本版ライドシェア」の解禁に向けた発言が増えている。岸田首相も第212回臨時国会の所信表明演説のなかで、日本におけるライドシェアのあり方について検討するとの発言がある。確かに、日本では公共交通機関の抜本的改革が必要な状況にあり、さまざまな改善策を議論するべき時期であると、国土交通省も提言している。

 現在でも白ナンバー車を一般の人が運転して有償で旅客運送を行うことは一部で認められている。たとえば、地域交通が極めて不便である地域、または福祉目的として、自家用車を使う有償での運送は、地域の交通事業者らが協議によって合意形成できたことを前提に、国に申請してそれが受理された場合に限り、実施することができる制度が存在するのだ。これを、自家用有償旅客運送という。

 とはいえ、成田空港で自家用有償旅客運送に関する考え方を一部変更して適用することが、白タク行為を撲滅させる良き方向なのかは、個人的には疑問がある。

 成田空港における白タク行為については、まずは警察が配車アプリのデータ解析を含めた実態調査をさらに進め、違法行為の裏付けを明確にすることで違法行為を徹底的に検挙することが先決だ。その上で、タクシーやその他の交通手段をどのように棲み分けるのか、または連携することが成田空港の利用者によって有益なのかを、じっくりと議論するべきである。