難敵セネガルに2−0勝利。完璧な試合運びで勝点3を手にし、GS突破を手繰り寄せた。写真:佐藤博之

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[U-17W杯 GS第3節]日本 2−0 セネガル/11月17日/Si Jalak Harupat Stadium

“未知との遭遇”を経て、ひと回りもふた回りも逞しくなったチームが最初の関門を突破した。

 11月17日に行なわれたU-17ワールドカップのグループステージ(GS)第3戦・セネガル戦。日本は2−0で勝利を収めた。
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 2勝1敗で勝点6。グループ3位で、各組3位の上位4か国に入ることが確定。3大会連続となるノックアウトステージ進出を決め、スペインが待つラウンド16に勝ち進んだ。

 戦前から森山佳郎監督は、セネガルの身体能力を警戒し、ゲームの進め方に細心の注意を払っていた。アフリカ王者のセネガルには、「本当に17歳?」と疑いたくなるような選手がズラリと揃う“身体能力お化け軍団”。

 今年9月のアフリカ・ネーションズカップ予選でA代表デビューを果たした若干15歳のFWアマラ・ディウフを筆頭に、フル代表経験者が4人もいる。ただ、彼らにも弱点はある。2−1で勝利したGS初戦のアルゼンチン戦では集中力を欠く時間帯があり、ふとしたタイミングで緩む悪癖があった。

 そのため、ポイントはギアを上げるタイミングを見誤らないこと。センターフォワードと両サイドの選手が攻め残って仕掛けてくるカウンターのケア、無理にボールを取りに行って中盤にスペースを与えないなど、守備のタスクを遂行しながら、勝負に出る必要性があった。
 
「このゲームは下手に前に出ると、一発でやられる。前半でやられてしまうと、(試合展開が)難しくなってしまう」

 そうしたいくつかのポイントを抑えて、森山ジャパンはやるべきことをやり切った。特に素晴らしかったのは試合の入り。過去2試合は安定せず、1−3で敗れたアルゼンチン戦(GS第2戦)では、無理に前からボールを取りに行って相手の進撃を止めきれなかった。

 そうした反省を踏まえた日本は、セネガル戦では立ち上がりから狡猾にゲームを進めていく。

「かなり我慢してくれた」と指揮官が評価した通り、バランスを取りながら出力を抑えて戦った。もちろん、相手に剥がされるシーンはあり、“バズーカ砲”のようなミドルシュートを何度も放たれた。

 それでも、懸命に食らいつき、CBの本多康太郎と土屋櫂大などが相手に身体をぶつけて簡単には打たせない。ゴールに向かってきたボールもGK後藤亘が阻止し、前半を無失点で乗り切った。

 理想の展開で後半に向かうと、森山監督は勝負に出る。55分に山本丈偉と高岡伶颯を投入。中島洋太朗とともに山本に配球役を託し、前線は井上愛簾と高岡の2枚で相手の背後を狙う戦い方でゴールを目ざした。

 ギアを入れる布陣にすると、62分に柴田翔太郎の右クロスから高岡がヘッドで先制点をゲット。72分には相手GKにプレスを掛けた高岡が奪い切って、2点目をもぎ取った。

 相手のパワーとスピードに屈し、終盤は押し込まれる時間帯も増えた。だが、要所を締めて無失点。巧みなゲーム運びで勝点3を掴み、GS突破を決めた。

“死の組”と呼ばれたグループの3戦を振り返ると、異なるタイプの相手と戦いながら、自信を深めたことが最大の収穫だった。

 3−5−2の布陣で攻撃的に振る舞うポーランド、肉弾戦の強さとしたたかさを持ち合わせるアルゼンチン、えげつない身体能力が自慢のセネガル。コロナ禍において世界を知る場が少なく、本当の意味で強豪国と真剣勝負する機会は、今大会が初めてだった。

 ポーランド戦やアルゼンチン戦の前半は相手の出力についていけず、探りながらのプレーが続いたのは無理もない。しかし、勇気を持って前に出れば、戦えることを知った。
 
「(アルゼンチンに対し)守備のところでも1対1で負けなかったし、球際でも負けなかった。攻撃も1枚剥がしたり、クロスだったり、普通に良い形があったので」(中島洋太朗)

 森山監督は「アルゼンチンを45分間、押し込めた。自信を持っていい」と話したが、この言葉に嘘偽りはない。相手に自分たちの力を引き出してもらい、高いレベルのステージで戦えた成功体験は財産となる。

 そうした経験があったからこそ、セネガル戦では完璧な試合運びができた。個人で見ても、高岡が3試合連続ゴールを決め、ここまで計4ゴールで得点ランキングのトップタイに立っているのも偶然ではない。半年前までは無名の存在だったが、経験を積んで世界を驚かせているのも、3試合を通じて自信を深められたからだろう。

 20日のラウンド16ではスペインと戦う。GSを2勝1敗で首位突破した相手に対し、日本はどう振る舞うのか。スペインは中3日で、初戦から一度も移動せずに戦う一方で、日本は中2日という過密日程。しかも、前日にしか試合が行なわれるスラカルタに移動できない。

 だが、勇気を持って戦えば強豪国と互角に渡り合える。若き日本代表の可能性は無限大。新たな景色を見るべく、次のステージに足を踏み入れる。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)