クマ被害防止のためには電気柵が効果的

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全国でクマが人を襲い、被害が相次いでいる。加えて北海道では、ヒグマによる農作物の損害や鉄道事故が出ており、深刻だ。JR根室線では2023年10月30日に列車がヒグマと衝突し、乗客5人が約7時間車中に閉じ込められる事態となった。

ヒグマによる経済損失は、北海道民にとって頭の痛い問題になっているようだ。近年の状況を、J-CASTニュースBiz編集部が取材した。

「飼料用とうもろこし」に深刻な打撃

北海道環境生活部の調査によると、2021年時点でのヒグマによる農産物被害は2億6000万円(図1)。打撃を受けている作物はデントコーン(飼料用とうもろこし)や砂糖の原料のビート、小麦、果樹ほかだ。

道内で特に損害が大きい地域は十勝地方、釧路地方、根室地方、オホーツク地方、宗谷地方で、被害総額は1億6500万円に上る。

特に深刻化しているのが、デントコーン(飼料用とうもろこし)だ。夏場の成長期には2メートルの高さになるデントコーン畑では、ヒグマが畑にとどまって育った作物を数日かけて食い荒らすという。駆除する猟師にとっても、高く育ったデントコーンに遮られてライフルの弾がヒグマに届かないこともあるのが悩みの種だ。

北海道釧路総合振興局の担当者に取材し、対策を聞いた。

「現状、2メートルほどの電気柵で圃場をおおうことを農家には指導している。しかし、ヒグマが電気柵の下の土を掘ってもぐりこむことがあるので完璧な対策ではない」

と話し、クマが農作物の味を覚えてしまう危険性を指摘した。

JR北海道のクマ衝突は5年間で倍以上に

ヒグマによる経済的損失では、電車への衝突被害もある。JR北海道が取りまとめた2015〜20年のクマ発見と衝突件数のグラフ(図2)を見ると、2015年の24件から、20年には倍以上の56件に増えている。「JR発足以来最多の件数」と、資料で説明している。

JR北海道では、クマと衝突した時の対応方法として、乗務員と客の安全確保のために車両からは降車せず、保線係員に連絡してハンターを手配し、保守用車両でクマの除去に向かうこととしている。そのため、運行再開までに時間がかかり、損害も大きい。

同社の2020年調査によると、ヒグマ発見・衝突事故件数が多い地方は旭川支社管内で、道内最多の年間35件。内訳は旭川と稚内を結ぶ「宗谷線」で19件、旭川〜網走の「石北線」で16件としている。