この記事をまとめると

■1970年の東京モーターショーでマツダが発表したコンセプトカーが「RX500」だ

■迫力あるスタイリングに対して全長4460mmと意外にコンパクトなボディとなっている

■250馬力以上を発生する10A型ロータリーエンジンをミッドシップに搭載する

いまなお記憶に残るマツダのミッドシップロータリー

 東京モーターショーあらため「ジャパンモビリティショー」の開幕が迫っています。自動車業界のお祭りといえるモーターショーが、日本の製造業全体のお祭りに進化するというわけですが、やはりショーの華といえばコンセプトカーでしょう。

 そして、この時期になると決まって思い出されるのが過去の名コンセプトカー。なかでも1970年の東京モーターショーでお披露目されたマツダ「RX500」は、インパクト抜群のコンセプトカーとしてファンの多い1台となっています。

 あらためて概要を整理すると、RX500のパワートレインは10A型ロータリーエンジンで、搭載位置はミッドシップ。ボディサイズは全長4330mm×全幅1720mm×全高1065mm、ホイールベースは2450mmとなっています。

 現在のクルマでいうと、MAZDA3ファストバックの全長が4460mmですから、その迫力あるスタイリングに対して、意外にコンパクトなボディとなっていることがわかります。もちろん、1960年代の設計としては大きいボディであり、また2シーターのミッドシップスポーツカーなのですから現代の5ドアハッチバックと比べて小さいボディなのは当たり前です。

 ちなみに、2022年モデルのマツダ・ロードスターのボディサイズは、全長3915mm×全幅1735mm×全高1235mm、ホイールベースは2310mmとなっています。21世紀のライトウェイトスポーツカーであるロードスターより全長とホイールベースが長いというのは、RX500の目指した姿を想像するヒントになるかもしれません。

 というのは、RX500は国産スーパーカーを目指したコンセプトカーと思われがちなのですが、時系列でいうとスーパーカーブームよりずっと前に誕生しているからです。

ル・マン参戦を意識させるレース用ロータリーというプロフィール

 1970年代半ばに日本中を席巻したスーパーカーブームの主役といえば、ランボルギーニ・カウンタックですが、カウンタックの誕生は1974年です。マツダRX500はスーパーカーブームの影響を受けたわけではないことは明らかといえます。むしろ時代背景としては、1960年代にフォードがル・マン24時間耐久レースで勝利するために生み出した「GT40」の影響が垣間見えるというのが筆者の勝手な印象です。

 非常にコンパクトなロータリーエンジンをミッドシップに積んでいながら、巨大なエンジンカウルとなっているのは空力を追求した結果という話も伝わっています。ボディ後端でスパッと切った「コーダトロンカ」的なフォルムは過去のル・マンで活躍した名車からの影響も感じ取れます。

 さらにいえば、RX500にはレース用に250馬力以上を発生するようファクトリーチューンされた10A型ロータリーエンジンが搭載されていたことが明らかとなっています。コンセプトカーとして市販を考慮するならば量産ロータリーエンジンを搭載すべきともいえますが、レース用エンジンが載っていたということは、GT40のようなル・マン参戦をどこかに意識していたのかもしれません。

 ちなみに、1970年のル・マンにはマツダのレース用ロータリーエンジンを供給されたプライベートチームがシェブロンB16マツダで参戦しています。そのノーズにはデカデカと「POWER BY MAZDA ROTARY-JAPAN」という文字とロータリーのアイコンが飾られていました。

 シェブロンB16のノーズに見える文字の書体は、RX500のテールに書かれた「Powerd By ROTARY」と同じように見える点も、RX500とル・マンの関連性を感じずにはいられません。