放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00〜15:50)。9月24日(日)の放送は、「みんなの立石物語」プロジェクト発起人の塔嶌麦太(とうじま・むぎた)さんをゲストに迎えて、お届けしました。


(左から)小山薫堂、塔嶌麦太さん、宇賀なつみ



◆再開発で消えゆく街並みを、心に刻むために…

今年9月に入って取り壊しが開始された東京都葛飾区の下町・立石の北口再開発事業。その街並みやお店、人の歴史をみんなの心のなかに残すために立ち上げられた「みんなの立石物語」プロジェクト。

その発起人である塔嶌さんは、立石について「飲み屋さんがすごく有名なんですけど、決して“千ベロ”だけの街っていうわけではないんですね。昔から葛飾区の中心地として栄えてきた街なので、戦後間もなくとか、それよりももっと前からやっていらっしゃるようなお店もたくさんあります。

『呑んべ横丁』という古いスナックが軒を連ねている長屋みたいな辺りも、もともとは日用品を売るお店が中心にあったりしていました。今でも仲見世商店街には、有名な飲み屋さんもたくさんあるんですけど、地元の人が使うような安くておいしいお惣菜屋さんがいっぱい並んでいます」と紹介します。

塔嶌さんによると、8月末までに北口の再開発エリア内にあるお店や住んでいる方は立ち退きとなり、そこには「2つビルが建って、1つはタワーマンション、1つは13階建ての区役所になります。葛飾区役所は今も立石にあるんですけど、駅前に移転してくるということです」と説明。

再開発によって、惜しまれつつも姿を消すこととなった“千ベロ”の聖地として知られる立石の「呑んべ横丁」。小山が「呑んべ横丁は同じような形でビル内であるとか、どこかに残ったりはするんですか?」と尋ねると、塔嶌さんは「現段階ではそうはならないと思います。今後、どういう計画になっていくのかは分からないですね。お店の移転先が決まらなければ店をたたむ方もいて、ご高齢の店主だとなおさらで、再開発をきっかけにお店を閉めてしまう方も多いですね」と答えます。

今年、立石の焼肉屋を訪れ、もくもくの煙を浴びながら食事を楽しんだという宇賀は「いろいろと事情はあるんでしょうけど、あの風景がなくなっちゃうって、すごくもったいないですよね……。昔ながらのお店というか、“東京都内にこういうところがまだ残っているんだ!?”ってビックリするような場所じゃないですか。“もったいないな”と思っちゃうんですけどね」と本音を吐露。

小山から、「みんなの立石物語」プロジェクトの具体的な内容について問われると、塔嶌さんは「記録されないような歴史、その人がいなくなったら、あるいはそのお店がなくなったら、もう誰も分からなくなってしまうような、街に暮らしてきた人たちが見てきたものや、その背景のストーリーっていうものを、誰かが書き残さないとな、という思いで、街に関わる人たちで作って、実際に街の方にそれを読んでもらうことを一番の目的として、やり始めました」と経緯を語ります。

書店「POTATO CHIP BOOKS」をはじめとした立石の商店や葛飾区内の協力書店、オンラインショップなどで、9月29日(金)より順次販売開始予定の冊子「みんなの立石物語1」を手にした宇賀は、「ちょっと見せていただいたんですけど、最初に『鳥房(とりふさ)』の親父さんが出てきますね。お写真もあって、絵もあって」と関心を寄せます。


9月29日(金)から販売予定の冊子「みんなの立石物語1」



塔嶌さんいわく、冊子「みんなの立石物語1」では、4軒のお店のインタビュー、92歳のおじいちゃんに話を聞いたコラム、そのほか、立石に縁のある方に募ったエピソードなど、立石にまつわる内容が盛りだくさん。小山は「店主の方のお話をそのまま聞いているような気になってきますよね。『創業は分かんねえんだよなあ、戦争前からだね』とか」と印象を語ります。

小山の感想を受け、塔嶌さんは「お店の方の語り口も含めて、人間性やそこから伝わるものがあるので、普通だったらインタビューっぽくきれいにまとめちゃうんですけど、そのときの会話をできる限り、ありのまま文字起こしをして載せているような形です」とその意図を説明。

「それこそ、駅前にドトール(ドトールコーヒーショップ)があったんですけど、そこの店長さんにもインタビューをさせてもらったんです。ドトール立石は38年の歴史があるんですけど、高校時代にバイトで入って32年、そこで働いていた方です。ドトール自体もその人の色に完全になっていて、個人店の店長みたいなんですよね。若干、感極まりながら話してくれて『この店は僕そのもの』と」とそのときの様子を振り返ります。

さらに「朝はおばあちゃんの溜まり場になっているし、お客さんの顔と名前をちゃんと覚えていて、『あの人は、“トーストよくよく焼き”だから』みたいなものもあったりする」と話すと、「チェーン店なのに個人喫茶店みたい(笑)」と小山はビックリ。

そうした地域に根差したお店が数多く存在している立石。塔嶌さんは「(取材やインタビューで)それぞれ聞いていくと、毎回考えさせられるものがありますね」としみじみと語ります。

その言葉に、小山は「こういうものって歴史に残らないじゃないですか。100年後、200年後ぐらいにこれを読んだらめちゃくちゃ面白いでしょうね。全国でこういうのをやったら面白そう」と話すと、宇賀も「貴重な資料になりますよね」と大きくうなずいていました。

<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY’S POST
放送日時:毎週日曜 15:00〜15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/post/