Amazonが運営する自費出版サービス「Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)」にて、生成AIを利用して大量に書籍を出版している一部のAI作家への対策として、1日に出版可能な書籍数の上限を設定すると公式からのアナウンスが行われました。

Update on KDP Title Creation Limits

https://www.kdpcommunity.com/s/article/Update-on-KDP-Title-Creation-Limits?language=ja

Amazon restricts authors from self-publishing more than three books a day after AI concerns | Books | The Guardian

https://www.theguardian.com/books/2023/sep/20/amazon-restricts-authors-from-self-publishing-more-than-three-books-a-day-after-ai-concerns

新たにAmazonは、KDPで1日に出版可能な書籍数の上限を「3冊」に制限すると発表しました。この上限を超えると出版作業中に以下の文言が表示され、これ以上の作業を進めることができなくなります。



KDPを利用してAIで生成した本を販売する行為は低コストで行えるため、質が低い場合が多いだけでなく、「AIが書いた本を他人名義で販売する」など他人の作家名を勝手に名乗って販売する「なりすまし」行為が行われるなどの問題がありました。

こうした問題を受けてAmazonは生成AIの急速な進化による読書・執筆・出版への影響を積極的に監視・対策しており、2023年9月7日に「AIが生成したコンテンツはその旨を明示する必要がある」というガイドラインを導入したばかり。ガイドライン導入の経緯は下記の記事を読むとよく分かります。

Amazonが「AI生成テキスト」「AI生成画像」「AI翻訳テキスト」を出版する著者に対してAIの使用申告を求める - GIGAZINE



KDP上で「AIが生成した」とみなされるのは下記のコンテンツです。

・AIベースのツールによって作成されたテキスト、画像、翻訳

たとえ後から大幅に編集したとしても、最初にAIベースのツールで作成されていた場合は「AIによる生成物」とみなされます。

一方、AIベースのツールを利用しても下記の場合は生成ではなく「AIによる支援」とみなされ、特にAIを利用した事を明示する必要はありません。

・コンテンツ自体を人間が作成後、AIベースのツールで調整した場合

最初にコンテンツを人間が作成していれば、後からAIベースのツールで調整・編集・エラーチェックなどを行ってもAIによる生成物とはみなされません。

・AIベースのツールを利用してアイデアを生成した場合

AIベースのツールを使用してブレインストーミングを行うなどの手法でアイデアを生み出した場合でも、コンテンツ自体を人間が作成していればAIによる生成物とはみなされません。

生成AIの性能は日々向上していますが、Amazonによると「出版数の急増は見られていない」とのこと。今回の「1日3冊」規制は今後の悪用を防ぐためと述べられています。なお、1日3冊規制の影響を受けるパブリッシャーはごく少数なうえ、例外扱いを受けたい場合は申し出て個別審査を受ける事が可能で、まさにAI出版を狙い撃ちした規制となっています。