「お酒を飲むと普段なら魅力を感じない人でも魅力的に見える」と感じる現象はビール・ゴーグル効果と呼ばれ、アルコールが相手の魅力を過大評価させると考えている人もいるはず。ところが、新たにアメリカの研究チームが行った研究ではビール・ゴーグル効果は確認されず、「お酒を飲むと相手が魅力的に見えるのではなく、魅力的な人に近づく勇気が出る」ということが示されました。

Beer Goggles or Liquid Courage? Alcohol, Attractiveness Perceptions, and Partner Selection Among Men: Journal of Studies on Alcohol and Drugs: Vol 84, No 4

https://doi.org/10.15288/jsad.22-00355



‘Beer goggles’ study finds alcohol does not make people seem better looking | Alcohol | The Guardian

https://www.theguardian.com/society/2023/aug/30/beer-goggles-study-finds-alcohol-does-not-make-people-seem-better-looking

No evidence that "beer goggles" are real, but "liquid courage" is definitely a thing • Earth.com

https://www.earth.com/news/no-evidence-that-beer-goggles-are-real-but-liquid-courage-is-definitely-a-thing/

ビール・ゴーグル効果という言葉は1980年代に北米の大学生が作ったといわれており、この効果を身をもって実感したという人もいるかもしれません。しかし、記事作成時点ではアルコールの摂取と身体的魅力の評価に関する体系的な研究は行われておらず、「アルコールを摂取した状態で他人の写真を見て、その魅力を評価する」という実験の結果はまちまちだとのこと。

そこでスタンフォード大学医学部の博士研究員であるモリー・ボードリング氏らは、単に被験者に写真を見せてその人の魅力を評価してもらうだけでなく、「その人と実際に会う可能性がある」と思わせることでより現実のシチュエーションに近づけた実験を行いました。



今回の実験で、ボードリング氏らは18組の「定期的に一緒にお酒を飲んでいる20代の男性同士の友人ペア」を研究室に2回招待し、訪問ごとに「酔うのに十分なアルコール飲料」または「酔わないノンアルコール飲料」を飲んでもらいました。プライベートで一緒にお酒を飲んでいる友人同士を被験者に選んだのは、現実の飲食店やクラブで起きるような社会的相互作用を模倣するためだったとのこと。

そして研究チームは、酔っている状態またはしらふの状態の被験者に合計16人の写真を見せて、外見に基づいて16人の魅力をランキング付けしてもらいました。さらに被験者には、これらの人物は将来の研究セッションで会う可能性がある相手だと説明し、「将来の研究セッションで相互作用したい相手」を4人選ばせました。

実験の結果、アルコールに酔った状態が他人の魅力についての認識を変化させることは確認できませんでした。一方、「魅力ランキング」で上位4人に入った相手を「相互作用したい相手」に選ぶ傾向が、アルコールを摂取した状態ではしらふの状態より1.71倍も高くなることが判明。つまり、「お酒を飲んでも魅力の評価自体は変わらないものの、魅力的だと感じた相手と接触する勇気が出る」という傾向が明らかになったというわけです。



今回の研究結果は、お酒を飲むことが魅力的な相手と接触する勇気をもたらす一方で、アルコールの摂取が有害な性的行動に関与する可能性も示唆しています。ボードリング氏は、「アルコールを摂取するのであれば、どうすれば安全かつ自分の目標に沿った形で摂取できるのかを考える価値があります。飲酒すると社会的な動機や意図が変化することを認識するのは、人々にとって有益かもしれません。その影響は短期的には魅力的に思えても、長期的には有害になるかもしれません」と述べました。