冷たい物を食べ過ぎると、どうなる?

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 暑い日は、温かい物よりも冷たい物を好んで食べる人が多いと思います。ただ、暑いからとつい冷たい物を食べ続けてしまい、おなかの調子が悪くなった経験はないでしょうか。

 暑い時に冷たい物を食べ続けると、体にどのような影響があるのでしょうか。「暑い時に熱い物を食べると、体温が下がる」といわれていますが、本当なのでしょうか。対処法について、医療法人社団三橋医院理事長で、循環器内科専門医の藤井崇博さんに聞きました。

食欲不振などの原因に

Q.暑い時に冷たい物を食べるメリットについて、教えてください。

藤井さん「冷たい食べ物や飲み物には、暑くなった体を冷やす効果があります。また、多くの人は冷たい物を摂取すると、心身共にリフレッシュできると思います。

少し古い論文ですが、暑い環境下で運動前および運動中に冷たい飲み物を摂取すると、運動中の体への熱の蓄積が軽減され、持久力が向上するという報告があります」

Q.では、夏に冷たい物を食べる日が続いた場合、体にどのような影響を与えるのでしょうか。具体的な症状も含めて、教えてください。

藤井さん「冷たい飲食物を過剰に摂取すると、胃腸を冷やしてしまいます。それにより、胃腸の働きが低下するため、『食欲不振』『胃もたれ』『下痢』『便秘』といった、夏バテの症状や消化器系の症状を引き起こす可能性があります。

また、冷たくて甘い清涼飲料水やアイスクリームなどには砂糖が多く含まれています。冷たくておいしいからといって多く食べてしまうと、摂取カロリーが高くなるため、注意が必要です」

Q.冷たい物を食べ続けたことでおなかの調子が悪くなったなど、体調不良に陥った場合、どうすればよいのでしょうか。

藤井さん「基本的には、安静にすることで症状が改善するケースがほとんどだと思います。ただ、吐き気や胃の不快感、下痢といった消化器系の症状が続く場合や、発熱などの新たな症状が出た場合は、早めに医療機関を受診するのをお勧めします」

Q.「暑い時に熱い物を食べると、体温が下がる」といわれていますが、本当なのでしょうか。

藤井さん「本当です。汗は蒸発する際に体の熱を奪います。そのため、暑い時に熱い物を食べると発汗が促され、結果的に体温を効率的に下げることができます。また、温かい食べ物は内臓を温めるため、それにより汗の蒸発量を増やしてくれます。

ただ、汗の蒸発による冷却効果を得るには、『湿度が低い』『風通しが良い』『薄着』といった条件がそろう必要があります。このような環境下では汗が熱を放散させるので、汗を蒸発させることで体温を下げることができます。

一方、体が脱水状態の時や湿度が高い時は、汗が出にくい傾向にあります。また、風通しの悪い場所で温かい物を食べた場合、汗をかく速度が、汗が蒸発する速度を上回り逆効果となるため、注意が必要です」

Q.暑い時にお勧めの食べ物、食べ過ぎない方がよい食べ物について、それぞれ教えてください。

藤井さん「夏バテ気味の人にお勧めなのは、体を温める食べ物です。例えば、体を温める野菜や香辛料として、ショウガやネギ、カボチャ、レンコン、カリフラワー、ニンジン、カブ、コショウなどがあります。同様に、サケやカツオ、サバ、ラム肉、牛肉などのほか、みそや黒砂糖といった調味料にも体を温める効果があるといわれています。

そのまま食べるより、スープや煮込み料理などに調理してから食べると、より内臓を温められるため、胃腸の冷えが改善し、夏バテ解消の効果が期待できます。また、片栗粉などで温かい料理や飲み物にとろみを付けるのも、胃腸を温めるのに有効です。

一方、体を冷やす野菜や果物には、トマトやキュウリ、ナス、ゴーヤ、レタス、バナナ、パイナップル、マンゴー、オレンジなどがあります。これらの物を大量に食べると胃腸の動きが衰えるほか、食欲低下など夏バテの症状を引き起こすので、食べ過ぎには注意してください。摂取する際は、温める性質の食材や香辛料などを組み合わせるのが良いかと思います」

【参考文献】
Jason K W Lee et al.Cold drink ingestion improves exercise endurance capacity in the heat.Med Sci Sports Exerc.2008 Sep;40(9):1637-44.