高い所で脚ガクガク、心臓ドキドキ…「高所恐怖症」って何? 精神科医が発症する原因と治療法を解説
飛行機や高層ビルなどの高い場所から景色を見たときに、「下に落ちるのではないか」などと、強い恐怖心に駆られてしまう人がいます。また、高い場所にいるだけで気持ちが落ち着かなくなる人もいるようです。
こうした症状は、「高所恐怖症」といわれていますが、なぜ発症するのでしょうか。治療は可能なのでしょうか。こころと美容のクリニック東京(東京都中央区)の院長で、医師の大和行男さんに聞きました。
「セロトニン」が欠乏している可能性
Q.そもそも、高所恐怖症とはどのような病気なのでしょうか。主な症状も含めて、教えてください。
大和さん「高所恐怖症は、精神科の診断では『不安障害』に該当します。高くて不安定な場所にいれば、人間は誰もが生理的に不安を感じるものですが、高所恐怖症の場合、安全が確保され、多くの人が不安を感じない高さや強度でも過度な不安感を覚えるのが特徴です。
主な症状ですが、不安障害と同様、不安感の高進や動悸(どうき)、恐怖心、過呼吸などの自律神経失調症状となります」
Q.高所恐怖症を発症するメカニズムについて、教えてください。
大和さん「不安障害は、脳内の神経伝達物質である『セロトニン』が欠乏することで起きるとされています。また、人間は、苦手や恐怖を感じる場面で交感神経が過剰に働くため、これも発症に大いに影響すると考えられます」
Q.高所恐怖症を治療することはできるのでしょうか。
大和さん「治療は可能です。高所恐怖症などの特定の恐怖症に関する心理療法として、自分のこれまでの物の考え方や行動パターンを見直し、改善につなげていく『認知行動療法』のほか、不安の原因となっているものに段階的に触れることで、不安を消していく『暴露療法』が挙げられます。
例えば、不安階層表を作成し、不安に感じる行為やその度合いなどを把握した上で、不安の度合いが低い行為から実践し、慣れさせる方法があります。また、イメージ映像や写真などを使い、高い場所に徐々に慣れさせる方法もあります」
Q.高所恐怖症を放置した場合、日常生活に大きな支障が出る可能性はありますか。それとも、治療をしなくてもさほど影響はないのでしょうか。
大和さん「高所恐怖症そのものは、『高い場所に行かない』などで回避できるため、日常生活に大きな影響はないと思われます。ただし、結婚や就職などをきっかけに高層マンションのような高い場所に住まなければならなくなった場合や、高層ビルで働く必要が生じた場合は、先述の心理療法が必要となるケースがあります。
高所恐怖症などの不安障害は、信頼できる家族や友人と一緒にいると軽減される場合があるため、状況によって治療法は自然と変わってきます。高所恐怖症により仕事や私生活に何らかの影響がある場合は、精神科の受診を検討してください」