加齢で増える…?

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 一見、シミやほくろによく似ているけど、少しずつ盛り上がってきているようにも感じる…。顔や体にそうした「いぼ」を見つけたら、それは「老人性いぼ」と呼ばれるものかもしれません。老人性いぼは加齢とともに増えるのが特徴ですが、なぜこのようないぼができてしまうのでしょうか。肌クリニック大宮(さいたま市)院長で皮膚科医の相馬孝光さんに聞きました。

「紫外線」と「皮膚の老化」が関係?

Q.「老人性いぼ」とは何ですか。

相馬さん「老人性いぼの医学的な正式名称は『脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)』です。代表的な臨床像としては、直径1〜2センチ大くらいまでで、表面が角化性(ザラザラ)や乳頭状・顆粒状(ブツブツ)を呈する、褐色や黒色の盛り上がった病変であることが多いです。

ただし、実際の臨床の場面では、老人性いぼの見た目や症状は同一疾患とは思えないほど多岐にわたります。また、好発部位は顔面・頭部・体幹であることが多いです。

一般的に、老人性いぼは中年以降に出現し始めます。原因については完全には解明されていませんが、主に『紫外線の影響』と『皮膚の老化』という説が有力です」

Q.特に老人性いぼができやすい人の特徴はありますか。

相馬さん「臨床の現場にいると、老人性いぼのできやすい人と、あまりできない人がいるというのは実感しますが、現在のところ、その明らかな差については医学的に完全には明らかになっていません。ただし先述の通り、『紫外線を浴びる機会が多い』点がリスクファクターであることは定説となっています。加えて、遺伝子(体質)が発症の個人差に関係していることも考えられます」

Q.老人性いぼには、シミやほくろとよく似ているものも多いようですが、見分け方のポイントはありますか。

相馬さん「老人性いぼは、典型例以外にもかなりさまざまな症例がみられます。そのため肉眼的には、典型例以外ではシミやほくろ、悪性腫瘍との鑑別が難しいことも多いです。

皮膚科医は、『ダーモスコピー検査』という診察手段によって診断を行います。これは、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を用いて、肉眼では分からない病変の特徴を判別する検査です。老人性いぼに対しても、この検査によって特徴的な所見を判別することで診断が可能です」

Q.老人性いぼを見つけた場合、どうすればいいですか。放置しても問題ないのでしょうか。

相馬さん「老人性いぼ自体は病気ではないので、『見た目が気になる』『洋服やくしに引っ掛かるので邪魔だ』などの理由がなければ、そのまま放置しても構いません。

ただし、老人性いぼが短期間で急速に全身に多発してくる『レーザー・トレラー徴候』がみられる場合は、内臓悪性腫瘍による症状の場合もあるので注意が必要です」

Q.老人性いぼを除去したいと思ったとき、皮膚科ではどのような方法・施術を行うのですか。

相馬さん「保険適用内であれば、『液体窒素凍結療法』により治療していきます。ただし、『必ずしも取れるとは限らないこと』や『治療後に色素沈着が生じやすいこと』などについて了承の上で治療を受けていただくことをお勧めします。

自費診療であれば、炭酸ガスレーザーを用いて治療するのが一般的です。炭酸ガスレーザーと老人性いぼは相性がよく、熟練した術者が行えば、1度の治療で比較的きれいに取り去ることができます。

なお、老人性いぼの出現を予防する方法については、残念ながら明確な根拠が示されたものはありませんが、なるべく紫外線を回避した方がよいと思います」