熊本中央ボーイズの元プロ監督 越境入学には「3年間やり抜く覚悟」を問う

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 競技人口減少の影響もあり、野球強豪校が県をまたいで選手をスカウトに行くことが増えたと聞く。選手にとって選択肢が増えることは良いことであるが、その一方で越境入学にはリスクを伴うのもまた事実だ。親元を離れ高みを目指すか、それとも地元に残って甲子園を目指すか。進路選択は、いつの時代も難しいテーマの一つだ。

 設立11年目にして、6度(春2回、夏3回、ジャイアンツカップ1回)の全国大会出場を経験した熊本中央ボーイズ・大津一洋監督は、西武や南海でプレーした経験を持つ元プロ野球選手だ。1期生から毎年県外へ選手を送り出し、ソフトバンク育成・桑原 秀侍投手(神村学園出身)、巨人育成・吉村 優聖歩(明徳義塾出身)といったプロ野球選手も輩出しているが、選手の進路選択にはどんな考えのもとでアドバイスを行っているのだろうか。

越境入学には「3年間やり抜く覚悟」を問う熊本中央ボーイズ・大津 一洋監督

 熊本中央ボーイズでは、選手と保護者が話し合った上で最終的に進路を決めるといい、指導者から「この高校にどうだ」と勧めることはないという。選手の性格や過去の例を踏まえて、慎重にアドバイスをしていくスタンスだ。

「最終的には親御さんと選手が決めることが大前提ですが、もちろん指導者としても高校で頑張ってもらいたい思いはあります。ここ行きなさいとはっきりと言うことはないですが、果たしてこの子があの学校に進学して活躍できるのかなと、いつも考えます。 県外に進学することも、ご両親と話し合って決めたことであればもちろん止めません。ですが、辞めて帰ってくることを心配して、慎重に助言はしてあげています」

 助言の内容は、チームの状況や選手層の厚さ、レギュラーになるために必要なことなどだ。大きな夢を思い描く選手には、しっかりと現実も伝え、3年間やりぬく覚悟を問うのだ。

「はっきりと止めることはないですが、チームは今こんな状況で、毎年こんな選手が入ってくるよ。相当頑張らないとレギュラーは取れないよと、そこはしっかりと伝えます。それでも3年間やり通す強い気持ちがあるのかと。それでも『ある』というのであれば、覚悟を決めて頑張ってこいと背中を押しますね。

 現在では関東に出る選手も出るようになりましたが、帰ってきた選手は一人もいません。選手と親御様が決めたことにただ『わかった』というのではなく、覚悟を問うのはとても大事なことだと思っています」

 それでも中には、覚悟を問うまでもなく、強豪校進学に背中を押す選手もいる。体力的、技術的に優れていることはもちろんだが、強烈なキャプテンシーや劣勢にも屈さない「心の強さ」も持つ選手は、大きな期待を込めて送り出す。

「チームを引っ張っていける選手、キャプテンじゃなくても試合を引っ張っていける選手は、県外に出てもやっていけるかなと感じます。例えば、横浜高校に進学した津田 啓史くん(三菱重工East)はその一人です。関東や関西からもすごい選手がくると思うけど、『よし、頑張ってこい』という感じで。心配よりも、やってくれるだろうという期待の方が大きかったです」

 津田 啓史内野手は、横浜高のレギュラーとして活躍し、社会人野球3年目の今年はドラフト候補にも名前が挙がる。

 技術だけでなく、心の成長を見極めることも、これから指導者に求められることになるだろう。

(記事=栗崎 祐太朗)