ANAの巨大機A380「フライングホヌ」には、ベッドのように寝転べる珍しいエコノミークラスシート「ANA カウチシート」が存在します。実際に搭乗したところ、ひと手間加えることで、もっと快適性をアップさせることもできました。

分厚いレッグレストがポイント?

 ANA(全日空)が成田〜ホノルル線に投入している総2階建ての超巨大旅客機エアバスA380は、機体に「フライングホヌ(空飛ぶウミガメ)」という愛称と、機体ごとに異なるウミガメの特別デザインが施されています。この機は、そのユニークな外観もさることながら、国内航空会社では珍しいシートを導入しています。ベッドのように寝転べるエコノミークラスシート「ANA COUCHii(ANA カウチシート)」です。今回、実際にそれを体験することができました。


ANAのA380「フライングホヌ」(松 稔生撮影)。

 ANAカウチは、「フライングホヌ」の1階最後方の区画に位置します。席配置は通常のエコノミークラスと同じ横3-4-3列で、一見したところ、通常のエコノミーとほぼ同じような感じです。

 一方で席につくと、シートの下にレッグレストが設置されているのがわかります。このレッグレストは、一般的なエコノミークラスのものよりも分厚く、堅牢な作りで、素材もシート本体と同じようなものが採用されています。これを座面と同じ高さまであげることで、そのブロックの席がまるごとベッドのようになるのです。

 席にはカウチシートのセッティング方法が記載されたカードが設置されているほか、機内モニターでもガイドを見ることができます。また、寝転んだとき用の特別なシートベルトも用意され、巡航に入ると、CA(客室乗務員)よりこの区画に座る乗客に配られ、降下前に回収されます。また通常のエコノミークラスの各席に置かれている寝具セットのほかに、カウチシートでは席に敷くためのマットやシーツ、枕なども用意されています。

 セッティングは自分が座っているブロックのレッグレストと肘掛けすべてあげ、マット類を敷いたのち、お腹の前にくるように特別シートベルトをセットすれば完成です。ちなみにこの操作は、座席横のボタンを押して行います。

ANA「カウチシート」で爆睡力をあげるひと工夫

 今回は窓側の3席ブロックに搭乗。身長が高めの男性の場合、斜めの角度で横になる、もしくは少し脚をかがめる必要がありそうですが、それでも通常のエコノミークラスと比較すると快適さは段違いです。また、窓側の席の座面は、壁のギリギリまで隙間なく伸びているようで、壁と座席の隙間に頭を置いたことによる、凸凹感がないようになっています。

 ただその一方でフルフラットのビジネスクラスと比較すると、眠りにくい要素もあります。その要因は席間にある「肘掛け」です。旅客機の巡航は”水平飛行”と呼ばれていますが、実は機首を1.5度から3度ほど上向けた状態でフライトしています。カウチシートの肘掛けは上げた状態でも背もたれから少し出っ張っており、寝方や飛行角度によっては、上半身がそこに押し付けられてしまうのです。


ANAのA380「フライングホヌ」の座席(松 稔生撮影)。

 しかし、これはセッティングなどで十分に解決可能な問題です。たとえば、通常の寝具セットのクッションをひとつ取り出し、肘掛けの出っ張った部分に置いた状態で横になります。このクッションは、カウチシートの枕よりもだいぶ小ぶりなものですので、置いたことでスペースが狭くなる感じはあまりありません。

 こうして、ただでさえ特別なエコノミークラスであるカウチシートにちょっとした工夫を加えると、快適度はいっそう増大。成田→ホノルルの7時間弱のフライトの場合、逆に「寝たりない」と思ってしまい、特別なシートベルト回収のため巡回するCAの方に、「あと5分だけ返却をまってほしい……」とお願いしたくなるほどの快適なフライトでした。

 ANAのカウチシートの金額は、ローシーズンであれば1人で4席利用した場合が9万8000円、3席利用した場合が6万2000円です。当然、人数が多ければそのぶん価格は下がるため、ペアで使ったり、家族で使って子どもを寝かせたりといった用途でも利用できます。ちなみに、ANAのカウチシート導入機は「フライングホヌ」の1機種のみとなっています。