JRバス各社では2階建てバスを多く運行していますが、その世代交代がいよいよ大詰めを迎えています。従来の国産2階建てバス車両を今も一線で運用しつつ、置き換えを進めているジェイアール東海バスに話を聞きました。

エアロキング愛爆発のJR東海バスもいよいよ

 ジェイアール東海バスが2022年11月上旬の3日間、名古屋市内で一般向けに新型2階建てバスの無料試乗会を行いました。


ジェイアール東海バスの新型2階建てバス(画像:ジェイアール東海バス)。

 この新型は、スカニア(スウェーデン)のシャシーとエンジンで、バンホール(ベルギー)がボディを手がけた「InterCity DD」と呼ばれるモデルで「アストロメガ」の愛称でも知られます。

 この2階建てバスが導入される一方で、数を減らしているのが、三菱ふそうの国産2階建てバス「エアロキング」です。

 エアロキングは高速バスとして多く導入されてきましたが、2010(平成22)年に生産が終了。一時は日本から新車の2階建てバスの選択肢がなくなりました。このため各社は、エアロキングをそのまま運行するか、ハイデッカー車など2階建てではないモデルに置き換えるといった対応をとりました。

 しかし2016(平成28)年からアストロメガの輸入が始まり、2018年以降、高速バスとしても各社が次々に導入しています。

 ジェイアール東海バスは2019年からアストロメガ(J-InterCity DD)を運行し、2022年10月現在で6台を保有しています。一方でエアロキングも4台残っており、うち3台を、名古屋〜東京間の東名ハイウェイバスや夜行「ドリームなごや号」で運行しています。

 他のJRバス各社でもエアロキングは大量導入され、高速バスとして走ってきましたが、いまでは「表立って運行しているのは当社だけ」という状況とのこと。とりわけエアロキングに愛着を持ち、エアロキングにまつわる数々の一般向け企画やイベントを行ってきたジェイアール東海バスでも、世代交代がいよいよ佳境を迎えているようです。

 エアロキング、そしてアストロメガで何がどう違うのか、同社に話を聞きました。

どっちもイイんです!!

――エアロキングはいつごろから、どのような路線に導入していたのでしょうか。

 1990年頃から大量導入していたようです。昼行の東名ハイウェイバス、夜行の「ドリームなごや号」のほか、「京阪神ドリーム静岡号」「広島ドリーム名古屋号」などで運行してきました。

――メリットはどのような点だったのでしょうか。

 やはり、2階建バスならではの迫力や眺めでしょう。当社の場合、2階は3列シート(1階は4列)としていることもあり、ダブルデッカーとハイデッカーで定員もそこまで変わりません。サービスレベルだけでなく、(その眺望や存在感から)高速バス自体の魅力を高め、「JRバス=2階建てバス」のイメージを定着させられた点が大きいと思います。

――アストロメガはどう違うのでしょうか。

 一目で「外国のバス」とわかるようなデザインで、迫力がありながらもメッキパーツで各所が装飾され、スタイリッシュな印象になりました。先日の無料試乗会では、お客様からも「内装外装ともにおしゃれ」という声を多く頂いたほか、車内の静粛性や、固めのサスペンションが印象に残ったと思います。

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 ジェイアール東海バスで残る4両のエアロキングのうち、1両は「プレミアム・シート」搭載車のうちの1両で2005(平成17)年式、残り3両はいずれも最終製造年の2010年式で、どれも近いうちに引退する予定だそうです。V8エンジンを搭載した現役のエアロキングに乗れる機会もいよいよ少なくなってきました。

 一方で、アストロメガは輸入車ではあるものの、エアロキングと「それほど大きくは変わらない」といいます。


数を減らしているエアロキング(画像:ジェイアール東海バス)。

「私が小さい頃はまさにエアロキング=JRバスであり、バスの王様というイメージを持っていました。製造終了は大変寂しく思いましたが、再び2階建てバスの魅力が再燃してきたと思います」

 このようにジェイアール東海バスの担当者は話してくれました。加えてJRバス以外の、これまで2階建てバスがなかった事業者でも導入されているため、「バス業界の新たな魅力・PRポイントになっていけば嬉しい」ということです。