京都の山間部を走る「嵐山-高雄パークウェイ」は、有料道路でありながら、コース全体が穴場のレジャー施設のようになっています。逆にいえば、京都で数少ない自家用車ウェルカムな観光地、どのようなところなのでしょうか。

嵐山と高雄を結ぶドライブウェイ

インバウンドの波も復活し始め、賑わいが戻ってきた京都市街。賑わいどころか混雑が始まりつつあるなか、市街周辺で喧噪から離れてレジャーを楽しめる場所のひとつが「嵐山-高雄パークウェイ」です。


京都市北西部の観光用有料道路「嵐山-高雄パークウェイ」(鶴原早恵子撮影)。

 嵐山-高雄パークウェイは京都市街の北西部に整備された、全長10.7kmの有料道路。嵯峨嵐山と高雄を結び、山間部を走るワインディングロードです。自動車とバスが通行可能で、平日は125cc以上の二輪車も通行できます。

 同様の観光向け有料道路は全国各地にありますが、このパークウェイの特徴は、ただ走りや景色が楽しめるだけではなく、沿道にさまざまなレジャースポットが点在していることです。

 展望台は小倉山・保津峡・愛宕前・菖蒲ヶ丘と、4ヶ所に配置。特に保津峡展望台は「嵯峨野観光鉄道」のトロッコ列車を見下ろせるポイントで、鉄道ファンにも人気となっています。

 さらに「観空台遊園地」のほか、バーベキューエリアやボート遊びの施設もあり、まさに「有料道路で1日過ごせる」スポットと言えるでしょう。

 さて、この「遊園地」ですが、絶叫マシンや観覧車、テーマパークのある大規模集客施設とはまるっきり異なり、「遊園地」の黎明期の雰囲気を残す、アットホームで牧歌的な公園となっています。開業は1965(昭和40)年で半世紀以上の歴史をもち、サイクルモノレールやコイン式遊具、バッテリーカー、ラジコン用サーキットなど、往時の雰囲気が残る「昭和レトロな懐かしさ」を求める人にも楽しいかもしれません。

 一方でおしゃれなカフェや、ワイヤーロープを滑走するアトラクション「ジップライン」も近年新設され、単なる“古臭い場所”となっていないのも事実。

 さらに、100台以上を収容できる駐車場があることから、クラシックカーオーナーなど自動車ファンのオフ会に利用されることもしばしば。関西の自動車ファンにとっては「聖地」のひとつでもある場所です。また、先述の「ラジコン用サーキット」は、西日本最大級。「パークウエイサーキットライセンス」(6ヶ月で5,000円)を購入すると、有効期間中は何回でも無料で走行し放題です。

「パンク状態」京都で「穴場スポット」であり続ける理由

 現地を訪れたのは10月の晴れた日曜日。レジャーシーズンでしたが、クルマの姿はそれほど多くなく、足漕ぎボートも待機中が目立ちました。バーベキューコーナーや、遊園地のサイクルモノレールやトランポリンなどの遊具には親子連れが目立ちますが、ここが「京都市内」であることを考えると、観光地の異様な喧噪とはまるで別世界の光景でした。

 ここがこのように穴場的な観光スポットとなっている理由のひとつは、「公共交通機関での観光客が多い」という、京都ならではのレジャー事情にあります。かつては、期間限定でコース内を走る京都バスの定期路線も存在しました。しかし現在は春分の日に1本だけ、それも嵐山-高雄パークウエイから阪急嵐山駅への片道運行を行うのみです。クルマで来る観光客がそもそも少ない京都において、バスもないとなると、集客には不利でしょう。


パークウェイ内にある「1年に1便しか来ない」西山高雄バス停(鶴原早恵子撮影)。

 公共交通機関で来れるようになれば、観光地として人気もさらに高まるのではないかーー。そう考えて京都バスに事情を尋ねると、「可能であれば運行をしたい」とは考えているそうです。しかし、運転手の確保が難しいことから当面は定期運行を復活させる予定はないとのこと。

 とはいえ、道路と周辺施設を運営管理する「西山ドライブウェイ株式会社」によると、利用客が最も増えるのは紅葉の最盛期である11月。2021年は1か月で約13500台の車の利用があったそうです。全国区とは言えずとも、クルマ好き・ドライブ好きの人たちにとっては知名度は十二分にありそうです。