「開かずの踏切」は大都市特有の問題ではなく、地方都市でも見られます。香川県高松市のことでん本町踏切もそのひとつで、紆余曲折を経て12年ぶりに、解消へ向けた計画が再始動しようとしています。

マイカー通勤が多い地方都市

 運行本数が多い東京や大阪などの鉄道では特に、朝夕のラッシュ時に「開かずの踏切」が発生します。これは大都市特有の問題と思われがちですが、実は地方都市でも街の中心部には「開かずの踏切」が存在します。
 
 大都市の場合、その影響の大きさから「開かずの踏切」は都市問題として表面化しやすく、解消に向け立体交差化の予算がつきやすい特徴があります。他方、地方都市は影響が限定的であるため、大都市と比較すると予算がつきづらい傾向が。とはいえ地方都市は自動車通勤する人が多いので、「開かずの踏切」の数が大都市と比べて少なくても深刻度は高いといえるでしょう。


高松築港〜瓦町間にある本町踏切を通過中のことでん(2022年9月、小川裕夫撮影)。

 約42万の人口を擁する香川県高松市には、JR四国のほか私鉄の高松琴平電気鉄道(ことでん)が3路線を有しています。ことでんがターミナル駅とする瓦町駅は、朝夕のラッシュ時間帯に多くの電車が発着。なかでもJR高松駅の近くに位置し、JRとの乗り換え需要がある高松築港駅と瓦町駅とを結ぶ区間は、頻繁に電車が行き交います。この途中にある本町踏切が、朝夕には「開かずの踏切」と化します。

 瓦町駅から高松築港駅へと向かう電車の本数は2022年現在、平日なら午前7時台が9本、8時台が13本です。高松築港駅から瓦町駅へと向かう電車も同数あります。

 また、本町踏切はことでんの線路が五差路を貫く形状であり、信号交差点も隣接しているため、渋滞や事故が発生しやすい踏切です。傍らで行き交う電車や自動車を眺めていると、高松港が近いためか大型トラックやトレーラーの通行が多いことに気づきます。同踏切はコンテナターミナルへの通り道にあり、さらに朝夕は大型車に混じってマイカー通勤のクルマが走っています。

線路がダメなら道路を上げれば…

 行政も本町踏切の問題から目を逸らしていたわけではありません。1998(平成10)年、香川県は市内中心部の踏切28か所を除去する琴電連続立体交差事業に着手。同事業は、高松築港〜瓦町間の線路を高架化するというものでした。

 しかし、事業費が約340億円という大型事業だったこともあり、スムーズに計画が進みません。線路は高架化される予定だったので、琴電(当時)は同事業に合わせて高松築港駅をJR高松駅の近くに移転させることも計画。両社の乗り換えの便が向上することも期待されていました。


本町踏切。「開かずの踏切」解消には漕ぎつけられなくとも、隣接交差点の信号機を調整するなどして対策は講じられている(画像:香川県)。

 ただ遅々として高架化は進みません。さらに2001(平成13)年に琴電が破綻。これにより事業は暗礁に乗り上げ2010(平成22)年に計画が中止、2022年3月には正式に廃止されました。

 しかし行政も踏切の問題を放置するわけにはいきません。香川県・高松市・ことでんの3者は協議を行い、とりわけ本町踏切は渋滞が慢性化しており事故の危険性も高いことから、こちらの対応策から検討が始められています。

 現段階では線路ではなく道路を高架化することで踏切の除却を目指すようです。県が1994(平成6)年に策定した「高松環状道路」という高架道路の一部を本町踏切まで延長。高松空港などとも直結させようというものです。2022年10月には県知事が国土交通大臣へ、調査委員会開催の要望書を提出しました。

 具体的な話はこれから詰めることになりますが、膠着状態に陥っていた「開かずの踏切解消策」が再び動き出したといえそうです。