2024年就航“ヤマトの貨物機”なぜ「違う機種しか持っていない会社で運航」に変更? JAL異例の方針転換のワケ
当初は導入機の姉妹モデルをもつジェットスター・ジャパンが運航予定でした。
当初は姉妹機をもつ「ジェットスター・ジャパン」が運航予定も一転
JAL(日本航空)とヤマトホールディングスがタッグを組み、「ヤマト運輸」の宅配荷物などを運ぶべく、“クロネコヤマトの貨物機”を2024年に就航させます。2022年1月に発表されたこの取り組みにおける現状のアップデートについて、2社が11月22日に報道陣へむけ説明しています。
ヤマトホールディングスが導入する貨物専用機のイメージ(画像:JAL)。
運航路線は東京(成田/羽田)〜北九州、新千歳、那覇線と、北九州〜那覇線の4つです。現状では東京路線において、昼間便は成田、夜間便は羽田発着とします。東京〜那覇線を9便、東京〜新千歳線を10便とするほか、東京→沖縄→北九州をそれぞれ片道運航する「三角運航」を取り入れ、1日あたり21便を運航する計画です。
使用する貨物機は、国内航空会社では初導入となる「エアバスA321ceoP2F」。グループ会社のLCC(格安航空会社)のジェットスター・ジャパンのほか、中国・春秋航空をはじめ、世界の多くの航空会社が導入する「エアバスA320」シリーズの姉妹機で、A320より胴体延長が図られた「A321」をベースとします。A321ceoP2Fは、中古のA321旅客機を貨物専用機に改修したもので、1機あたりの最大搭載重量は28t(10t車約5〜6台分)といいます。
現状ではヤマトの貨物機”は3機導入予定となり、2機をすでに受領済み。今後は、エアバス社とシンガポールのST Engineeringが共同で設立した専門会社EFW社(ドイツ)のもと、2023年3月より順次改修作業が開始される予定です。
そして一方で、今回大きく変更されたのが、“ヤマトの貨物機”の運航会社。
当初計画はジェットスター・ジャパンが運航を担う予定だったのが、今回、JALの連結子会社で、中国路線の国際線をメインに担当するLCC「スプリング・ジャパン」による運航に変更されたのです。このスプリング・ジャパンは先述した春秋航空の関連航空会社で、メーカーの異なるボーイング737-800を6機保有しています。
通常、航空会社のパイロットは、複数のモデルのライセンスを持っていたとしても、同時期に複数のモデルをまたいで運航できません。姉妹機「A320」を主力機とするジェットスター・ジャパンであれば、”ヤマトの貨物機”の運航でも現状のパイロットリソースの多くを活用できる一方で、スプリング・ジャパン運航の場合、パイロットは737からA321へ、全く異なるモデルへ移行するプロセスが必要となるわけです。なぜ、このような“方向転換”が行われたのでしょうか。
スプリング・ジャパン運航に変更された理由
運航会社がスプリング・ジャパンへ変更された背景を、JALの担当者は「新型コロナウイルス感染拡大による中国の『ゼロコロナ対策』などの厳格な検疫体制が敷かれ、中国からのインバウンドのお客様が伸び悩んでいる現状を見るに、今後新たな疫病が出た際などに、スプリング・ジャパンが旅客便事業一本足では立ち行かなくなる可能性もあります。そこで、新たな事業の柱を持つことが重要であると判断しました」と話します。
スプリング・ジャパンの飛行機(乗りものニュース編集部撮影)。
JALによると、スプリング・ジャパンのパイロットには、ボーイング737のほか、A320シリーズを運航できるライセンスを持っている人もいるそう。こういったパイロットを“ヤマトの貨物機”運航便のため、今後移行手続きを進めていく方針です。
このほか、同社では、”ヤマトの貨物機”運航のため、「ざっくりと必要とされるパイロット全体の3分の2くらい」を新たに採用予定。「とくに春秋航空やジェットスター・ジャパンのリソースにフォーカスするというわけではなく、広くパイロットの公募をかけていく予定です」と担当者は話します。