そっくり! 国鉄「113系&115系」 分かりづらくなった見た目 そもそも何が違う?
国鉄の近郊形113系と115系は、東日本から西日本にわたる広域で採用され、一部はJR西日本で現役です。見た目がそっくりな両者ですが、違いはどこにあるのでしょうか。かつて走った路線の特徴は、ひとつ大きなヒントかもしれません。
見た目は同じ? 113系と115系
国鉄の近郊形電車と言えば、113系や115系といった車両が主力として活躍していました。首都圏をはじめ、関西・中国地方の地域輸送を席巻していたのです。初期車の登場からは60年近くが経ちますが、2022年には115系を使用した急行「鷲羽」が姫路〜宇野間でリバイバル運行を行ったほか、京都鉄道博物館では湘南色の115系が特別展示され、「ひろしまCity」や急行「鷲羽」のヘッドマークを取り付けました。
2022年現在、京都地区と福知山地区では113系が、岡山地区では113系と115系が、下関地区では115系がいまだ使用されています。見た目は全く同じと言って過言ではない両者ですが、違いはどこにあるのでしょうか。
JR西日本の115系電車(左)と113系電車(柴田東吾撮影)。
岡山地区の113系と115系では前面表示器に違いがあり、113系は字幕式である一方、115系はLED式です。
なお下関地区の115系は字幕式ですが、白色の表示のままで実質使用していません。ちなみに福知山地区では長らく113系と115系が混在していましたが、2022年に115系が使用されなくなったことで、113系に統一されています。
かつてはより簡単に判別できた
見分けることが難しい113系と115系ですが、かつては前面の塗り分けの違いで簡単に判別できました。両者の車体塗装には「湘南色」と呼ばれる緑とオレンジを組み合わせたものや、横須賀色(スカ色)と呼ばれる青とクリームの組み合わせなどがありました。113系と115系は前面下部の塗り分けが違い、113系は斜めでしたが115系は直線でした。
しかしJR西日本に引き継がれた車両では、リニューアルに際して車体塗装を変更したほか、地域ごとに独自の色を採用したこともあって、113系と115系の判別が難しくなっていったのです。
113系と115系の構造的な違いとは?
113系と115系、外観以外の違いは何でしょうか。形式が異なるため、当然ながら構造的・機能的な違いがあります。
113系が平坦な路線で使用する前提で造られた一方、115系は勾配の続く山岳路線を想定しました。このほか115系は当初、寒冷地での使用にも備えられ、耐寒・耐雪仕様にもなっています。
そして決定的な違いはブレーキで、両者とも発電ブレーキを併用した空気ブレーキを採用していますが、115系はさらに抑速ブレーキを追加しています。この機能により下り坂を一定の速度で走行でき、空気ブレーキ故障を防止するほか、運転士の負担軽減にも寄与します。
中央東線で使用されていた横須賀色の115系。113系とは前面の塗り分けに違いがある(2011年1月、柴田東吾撮影)。
抑速ブレーキは運転台のマスコン(左手側のハンドル)にて設定する仕組みで、113系と115系ではマスコンにも違いが見られます。ただ両者とも増備過程で仕様変更があり、寒冷地用の113系や暖地用の115系も造られたので、やはり決定的な違いはブレーキ関係といえるでしょう。
ゆえに走行路線が異なっていた
そもそも仕様が異なるということで、かつては路線によって113系と115系の使い分けが行われていました。
JR東日本では、湘南色の車両は113系が東海道線で、115系が東北本線や高崎線などで使用されていました。また横須賀色は、113系が横須賀線や総武快速線、総武本線(千葉以東)、外房線、内房線といった千葉地区で、115系が中央東線などで使用されていました。
JR西日本では湘南色の車両ばかりが引き継がれ、先述の通り京阪神地区と福知山地区で113系が、岡山・広島・下関地区で115系がそれぞれ使用されていました。しかし老朽車両の置き換えや冷房化、半自動ドアスイッチの統一など増備や転用の過程で、同じ地域に113系と115系が混在する結果となって現在に至るのです。