GPファイナルの3枠を争うNHK杯女子フィギュア。坂本花織が最有力で渡辺倫果、住吉りをんは食い込めるか
今季はロシア勢の国際大会出場停止で、競技としては少し寂しい状況になっている女子フィギュアスケート。そのなかで日本勢とグランプリ(GP)ファイナル進出(上位6選手が出場)を争う勢力になるかと思われていた韓国勢がやや不振。これまでのGPシリーズ4大会で日本選手の優勝者が3人(坂本花織、渡辺倫果、三原舞依)と、ロシア勢不在の世界を牽引する格好になっている。
スケートアメリカを制した坂本花織(中央)
4大会の優勝者4人が、11月18日開幕のNHK杯と同25日開幕のフィンランド大会にふたりずつ出場する予定だ。現時点のポイントランキングでトップに立っているのは、スケートアメリカとイギリス大会でともに2位になって26ポイントを獲得している、昨季の世界ジュニア優勝のイザボー・レヴィト(アメリカ)だ。
レヴィトのGPファイナル進出が有力ななか、フランス大会を216.34点で制したルナ・ヘンドリックス(ベルギー)と、イギリス大会を217.43点で制した三原舞依(シスメックス)は最終戦のフィンランド大会に出場予定だ。
フィンランド大会でライバルになりそうなのはイギリス大会3位のアナスタシア・グバノワ(ジョージア)だが、イギリス大会の得点は193.11点と高くはない。紀平梨花(トヨタ自動車)と河辺愛菜(中京大中京高)もフィンランド大会に出場するがまだ調子が上がっていない状態で、ヘンドリックスと三原のふたりが1位と2位を分け合ってGPファイナル進出を決める可能性は高い。坂本花織が最有力、3枠を争うNHK杯
そうなると、NHK杯は残りの3枠を争う戦いになる。
スケートアメリカを217.61点で制している坂本花織(シスメックス)と、スケートカナダを197.59点で制している渡辺倫果(法政大)の他、フランス大会2位のキム・イェリム(韓国)やスケートカナダ2位のスター・アンドリュース(アメリカ)に加え、スケートアメリカ3位のアンバー・グレン(アメリカ)とフランス大会3位の住吉りをん(オリエンタルバイオ/明治大)が候補になる。
そのなかで最も有力なのは、昨季は北京五輪3位、世界選手権優勝の実績を持っている坂本だ。昨季まではプログラムのブラッシュアップもあってシーズン序盤は得点が伸びないことも多かったが、今季はショートプログラム(SP)、フリーともに新しい振付師に依頼し新曲に挑戦するなか、初戦のスケートアメリカで217.61点と好スタートをきっている。
昨季もNHK杯ではしっかり状態を上げてきていたように、今年も得点を上積みして優勝という形になりそうだ。
それに続くのは、今季がGPシリーズ初参戦となっている渡辺だ。スケートカナダ優勝も得点は197.59点と伸び悩んだが、9月に開催された国際競技会のロンバルディアトロフィーでは213.14点で優勝と底力を持っている。
前戦の得点はスケートアメリカ3位のグレンが197.61点と若干上回っているが、渡辺は初の大舞台優勝で気持ちも乗っているうえ、地元日本開催でコンディションも整えやすいだけに自己ベストに近い得点を出してくる可能性は高い。
ただ、フランス大会2位のキムは194.76点に終わったものの、昨季は四大陸選手権3位で北京五輪9位という実績を持ち、今季はチャレンジャーシリーズのフィンランディアトロフィーで213.97点の自己ベストを出した。拠点は韓国でNHK杯では時差もなく、渡辺と同じような好条件で戦えるだけに怖い存在になる。
それでも渡辺の場合は、坂本が優勝すれば、前戦2位のキムかアンドリュースのいずれかが2位になって26ポイントとしても、3位になったほうは24ポイントになるため、渡辺が4位でもポイントは並び、優勝1回という点で上位に立てる。GPファイナル進出争いとしては余裕を持って戦えるのが大きな利点だ。
男子のGPファイナル進出争いに比べれば大混戦とまでは言えない状況で、坂本に続く渡辺とキムが少し抜け出していきそうな気配だが、それに対して前戦では2位だったアンドリュースや、3位だったグレンと住吉がどうNHK杯の戦いを挑むか。
アンドリュースは3位以上が条件だが、自己最高は191.26点と少し厳しい状況。またグレンと住吉は2位以上にならなければGPファイナル進出の可能性はなくなるが、自己ベスト上位は201.02点のグレン。
ただ、自己ベストはフランスで出した194.34点ながらも4回転トーループにも挑戦している住吉が、6枠目に食い込んで来られるような戦いをするかにも注目したい。