ロッテOBの清水直行は、藤原恭大の打順に「違うんじゃないか」。一番の課題である打線、投打の軸として期待の選手も語った
清水直行が語る吉井理人新監督と今後のロッテ 後編
(前編:ロッテ新監督の吉井理人は柔と剛のバランスがいい「設計者」>>)
昨年のリーグ2位から一転、今年はリーグ5位に甘んじたロッテ。ロッテOBの清水直行氏は、チームが低迷した要因と来季へ向けた課題、投打のキーマンなどをどう考えているのか。
「はっきりしているのは、投打の軸となる選手がいないこと。先発ローテーションは、計算できるピッチャーが3枚はほしいですし、打線もシーズンを通じて中軸を任せられるバッターが2、3人いるべきです」
清水氏が奮起を期待するロッテ野手陣のひとりである藤原恭大
中でも、清水氏は一番の課題に打線を挙げる。
「チームの特徴として、防御率はいいけど打てないシーズンがあることが多い。今年に関してもチーム防御率(3.39)はまずまずでしたが、得点能力が低いんです。
ゲームの前半にある程度の点を取れればピッチャーは失点を怖がらなくていいので、どんどん攻めのピッチングができて相乗効果があるのですが、打線が頼りなかった。(ブランドン・)レアードと(レオネス・)マーティンが揃って不振だったことが響いて打線に厚みがなく、相手バッテリーからすれば怖さがなかったと思います」
明るい兆しとしては、プロ入り3年目の郄部瑛斗がリーグ2位の148安打を放ち、盗塁王を獲得。また、4年目の山口航輝が前年を上回る102試合に出場し、チームトップの16本塁打をマークしたが、山口に関して清水氏はこう話す。
「山口はチームの中では最も多くのホームランを打ちましたが、12球団で見た時に、山口が『どのあたりの立ち位置の選手なのか』を考えてもらいたいんです。102試合に出て打率.237、16本塁打、57打点という数字では、僕のイメージだとまだ一流の選手ではありません。
基本的には3年続けて成績を残して、初めてレギュラーと言えるのかなと。ホームラン数が何年か続けて今年くらいであれば、打率をもっと上げていかなければいけない。打率はある程度目をつぶって、ホームランを毎年30本以上狙っていくという考え方もありますね。
どっちの方向に向かうかをはっきりさせる必要はないかもしれませんが、『彼の持っているポテンシャルから、将来的にどこまでいくのか』という判断は、チームを編成していく上で必要だと思います。期待値だけで使い続けることと、打撃の数値から客観的に判断して方向性を定めた上で使うことは別の考え方です」藤原恭大に適した打順は?
5年目の安田尚憲は、今年プロ入り初となる100安打以上(102安打)を放ち、OPSもキャリアハイの.740。伸びは緩やかながらも、昨年よりは全般的にいい成績を残した。
「同学年の村上宗隆のように、首脳陣は将来的にホームラン30本、40本を期待しているかもしれませんが、これまでの過程や現状を見るかぎり難しいと思います。シーズン中に本人も話していましたけど、『自分はホームランバッターではなく中距離ヒッターだ』という考えのもと、コンタクト中心の打撃に意識が傾いています。選手をどう育成していくかの判断と、選手自身が考えてトライしている部分が、ちょっとかみ合っていないように見えます」
リーグ連覇と日本一を達成したオリックスは、打つほうでは吉田正尚、投げるほうで山本由伸という投打の軸がしっかりと機能した。清水氏は、今後ロッテで軸になってもらわないといけない選手を挙げた。
「バッターであれば、そろそろ(藤原)恭大にやってもらわないと。これまでの4年間でプロの厳しさはある程度わかったと思います。いろいろな課題が明確になってきているでしょうから、壁をどう乗り越えていくか。あと、恭大の打順はカギになるかもしれませんね」
これまでは脚力も期待されて1番や2番、そうでなければ下位で起用されてきた藤原。時に思い切りのいいスイングで、惚れ惚れするような弾丸ライナーの本塁打を見せることもあった。
「足は速いのですが、勇気がないのか盗塁はなかなか行けないんですよね。そもそも、塁に出られていない。ボール見ていくバッターではなく、そんなに出塁率も高くないですよね(出塁率.272)。恭大を上位打線で使いたくなる気持ちはわかるのですが、僕は『違うんじゃないかな』とずっと思っています。
月間MVPを獲ったり、一時期活躍した2021年も出塁率は.301。これがキャリアにおいてのマックスなんです。そう考えると、4、5、6番ぐらいのほうがあれこれ考えずに思い切って打てるケースが多いですし、恭大にとってはいいんじゃないかと。
僕が期待しているのは、同じ歳の大卒ルーキーが来年からプロの世界に入ってくることによる奮起です。このタイミングで『やらなあかん』と火がついて、飛躍するターニングポイントになる可能性はあると思いますよ」
一方、ピッチャー陣で期待されるのは佐々木朗希。今年は昨年の約2倍となる20試合に登板し、9勝4敗、防御率2.02。クオリティ・スタート率70%の成績を残し、来年以降はよりピッチャー陣の軸としての期待がかかるだろう。
「吉井監督は、『(佐々木は)今年は見習いだったけど、一人前にしていくために来年はローテーションでしっかり投げてもらう』と言っていました。そうなるとピッチングを覚える段階に入らないといけないし、コンディションをしっかりと維持して、ローテーションを飛ばされずに守っていかなければいけません。
僕が先発ローテーションのピッチャーに投げてほしい登板試合数は、表のローテーションであれば24回。少なくとも22回か23回は登板してほしいです。佐々木であれば、そのうちの半分以上は高い確率で勝てると思うので。
あと、タネ(種市篤暉)にも期待しています。(2020年8月に)トミー・ジョン手術を受けて、今年8月に二軍で復帰。ベストな状態にもっていくまではもう少し時間がかかると思いますが、まだ24歳ですし、手術を受けたことをプラスにしていってほしいです。
何年かは棒に振りましたけど、僕はタネのことをずっと"エースになるべきピッチャー"だと思っています。彼は若いのに、自分がどう見られているのか、自分がどうあるべきなのかがわかっています。視野が広くてしっかりと周りが見えている。小さく見えるかもしれませんが、身長は183cm(88kg)あってけっこう体格にも恵まれています。最近のキャッチボールなどを見ると、肘が下がっているのでそこは少々不安ですが......。とにかく来シーズンに向けて調整していってほしいですね」
ロッテは2025年までに「自他共に認める令和の常勝軍団になる」というビジョンを掲げており、今年は優勝を至上命題として挑んだシーズンだったが、結果はリーグ5位。清水氏は今後への期待も込めて、チーム作りの指針について厳しい意見を述べた。
「2025年までに常勝軍団を目指すということですが、球団として具体的にどこを強化して、どんな勝ち方をしていきたいのかが見えません。
例えば、『2025年までに最強の投手王国を作って優勝します』ということだったら、『だから今は、外国人助っ人やFAでピッチャーの補強に投資しているのか』『ドラフトで投手の指名が多かったのはそういう理由か』と、ファンの方々も理解しやすいはず。せっかくビジョンを掲げるのであれば、そこへ向かうための道筋も示すべきだと思います。
リーグ連覇したオリックスは若手がどんどん出てきていますし、外国人助っ人に頼っていません。オリックスは近年のドラフトで、飛びつきたくなるような即戦力の選手がいた年でも、将来有望な高校生を積極的に指名した。その選手たちが現在は主力として活躍しています。何年か前に方針を転換し、実行したことが実を結んでいるんです。選手個々の頑張りも当然必要ですが、球団、編成がどういうチームを作っていくのかを内外に示すことも大きな課題だと思います」