同年生対決に勝ちたかった勝利を喜ぶ沖縄尚学ナイン

<第151回九州地区高校野球大会:沖縄尚学3−2明豊>◇26日◇準々決勝◇コザしんきんスタジアム

 「同じ年の川崎監督に、今度こそ絶対勝ちたかった。選手より僕の方が勝ちたかったんじゃないですかね」。沖縄尚学・比嘉公也監督は、3年前に対戦し悔しい負けを喫した明豊・川崎絢平監督に、連敗するものかと闘志を燃やしていた。第81回全国高校野球選手権大会では、沖縄尚学(比嘉公也)と智辯和歌山(川崎絢平)が対戦することはなかったが、20年の時を経た2019年秋の九州地区高校野球大会で初対戦。9回に大逆転し勝利した明豊・川崎絢平監督。あれから3年後のこの日、今度はサヨナラ勝ちで沖縄尚学・比嘉公也監督が勝ちをつかんだ。「今度こそセンバツ出場したいと思います」。沖縄県高校野球秋季大会決勝戦後に発した約束を、ほぼ手中に収めるベスト4進出に、沖縄県の高校野球関係者やマスコミ、観客は歓喜の渦に包まれていた。

先制する沖縄尚学、1発で振り出しに戻す明豊代打同点2ランを放った明豊・石田

 先制したのは沖縄尚学。2回裏、玉那覇 世生外野手(2年)がヒットで出塁し犠打で二塁へ。打順の定位置は8番だが、この日7番に入った東恩納 蒼投手(2年)が初球をたたく適時二塁打を放った。さらに沖縄尚学は4回裏、1死から玉那覇が中前安打で出塁。盗塁を成功させると打席には再び東恩納。またもや右翼へ痛烈に引っ張る。明豊二塁手の高橋 佑弥内野手(2年)も懸命にクラブを差し出したが、打球はその僅か下を抜けて二走が生還。上位打線をほぼ抑えていた明豊投手陣であったが、打者としてはおそらくノーマークだった東恩納1人にしてやられた。

 沖縄尚学ペースだったゲームを一振りで戻したのは明豊の5回表。1死から8番・西川 昇太内野手(2年)が中前安打を放つと、川崎絢平監督が動く。代打に石田 智能捕手(1年)を送ると、2球目の変化球を見事に捉える。打球は右翼芝生席で跳ねる同点2ランホームラン。明豊ベンチとスタンドが、息を吹き返したように喜んだ。

両校投手が踏ん張り野手陣もノーエラー、観ている者を惹きつけてやまない至高のゲームサヨナラ打を放ち一塁へ向かう沖縄尚学・佐野

 6回から8回までは沖縄尚学・東恩納と、明豊・中山 敬斗投手(2年)両右腕の力投で共に安打は1本ずつ。7回裏の沖縄尚学は安打と犠打、そして相手の暴投で1死三塁。今大会好調の知花 慎之助外野手(2年)を申告敬遠した明豊バッテリー。2番・宮平 良磨内野手(2年)と勝負したが粘る宮平は9球目のボール球を見極め四球で歩き満塁としたが、中山が3番・仲田 侑仁内野手(2年)を遊飛に斬る。

 ピンチの後にチャンスあり。明豊も8回表、2つの四球を選び2死一、三塁としたが、5番・西村 元希外野手(2年)の強い打球を一塁手の仲田がしっかりキャッチしてゼロに封じる。ピンチになるほど両投手のタフな精神力と、両校の野手陣の堅守が試合を引き締める。観る者は片時もグラウンドから目を離せないこれぞ至高のゲーム。だが、沖縄のファンはここ数年、大分県勢の強さを嫌というほど見せつけられている。

2021年秋 明豊 14-4 前原2019年秋 明豊 7-6 沖縄尚学2016年秋 大分商 7-2 興南

 2019年の春こそ、準優勝した興南が7-5で大分を下しているが、センバツの懸かる秋の九州では3連敗中。比嘉公也監督も、「振りは鋭いし、粘り強い。終盤も気を抜けないし、エラーをしない。それが明豊さんと、選手たちに言い続けて」きた。仮に8回表に我慢できず、得点を与えていたなら、またもや黒星を喫していたのかも知れない。それほど明豊のかける圧力は凄かったが、東恩納を中心に沖縄尚学は粘り負けしなかった。そんなシーソーゲームを終わらせたのは、主将の一振りだった。

 9回裏、なんとこの日3安打目となった東恩納が左前に運ぶ。二塁へ進めて打席には主将・佐野 春斗内野手(2年)。「次が知花だし、僕がアウトになっても大丈夫という気持ちで思い切り振りました」。バットをたててセンター向きに振ればOKと、比嘉公也監督から指示を受けた佐野の打球は、全身守備の左翼手を襲うサヨナラタイムリー。沖縄尚学と比嘉公也監督にとって実に9年ぶりの九州ベスト4進出となったのだった。

(取材=當山 雅通)